全てを見透かされたような言葉に、
ちゃまるの心からもどかしい気持ちが込み上げてくる。
自分で変えようと思っても変えられない、
分からない、誰も教えてくれない、
どうしたら良いのかも分からないまま、
ただ何となく生きてきたことを実感する。
ちゃまる:『う、うるさいぷに!』
ちゃまる:『おっちゃんには分からないぷによ!』
おっちゃん:『あぁ、分からねぇな!』
おっちゃん:『逃げ腰の生き方なんてな!』
ちゃまる:『い、言ったなぷにぃ!!』
ちゃまるは無意識に短剣へ手を当てていた。
しかし、その冷たくも温かい触り心地が、
短剣をくれた母親の記憶を呼び起こし、
ちゃまるの怒りを沈めていく。
それと同時に剣を抜こうとした自分に罪悪感を抱いた。
悔しそうに歯を食いしばり握り拳を作るちゃまる。
ちゃまる:(いつも・・・いつもこの繰り返しぷにっ)
ちゃまる:『でも・・・でも自分が弱いから!』
ちゃまる:『絶対に強くなってやるんぷにぃ!!!』
おっちゃんを睨みつけるように鋭い眼光を放つ。
その一連の仕草、感情の起伏、言動を、
おっちゃんは余すことなく鋭い目つきで見ていた。
互いに交わし合う視線の緊張感を先に解いたのは、
どこか気が抜けたようにため息をついたおっちゃんだった。
おっちゃん:『そうか、お前の覚悟は分かった・・・』
ちゃまる:(・・・覚悟?)
おっちゃん:『なら良く聞くがいい』
ちゃまる:『な、なんだぷにぃ!』
ちゃまるは少し身構えながら耳を傾ける。
おっちゃん:『いいか、ここに来る奴はな』
おっちゃん:『自分の可能性を信じてやって来る奴ばかりだ』
ちゃまる:(な、何の話ぷに!?)
ちゃまる:(・・・でも何でこんなとこに来るんだぷに!)
おっちゃん:『みんな例の噂を信じてやって来る』
ちゃまる:『う、噂って・・・何のことなんだぷに!』
おっちゃん:『伝説の英雄・・・』
おっちゃん:『それになれるという噂だ』
ちゃまる:『で、伝説の英雄に・・・なれる!?』
その噂が例え嘘だとしても、
今のちゃまるなら信じてしまうほど夢のある話だった。
ちゃまる:『そ、それって本当なのかぷに?』
おっちゃん:『がっはっはっはっは!』
おっちゃん:『そんなもん、嘘に決まってるだろ!』
ちゃまる:(だ、だと思った・・・)
呆れたように肩を落とし、
少しでも期待した自分を情けなく思うちゃまる。
おっちゃん:『そうやって噂に惑わされ』
おっちゃん:『淡い期待と浅い覚悟でノービスがやって来る』
おっちゃん:『大半は半ば中途半端な奴らばかりさ』
ちゃまる:(自分は違うぷにぃ。。。)
おっちゃん:『中途半端な奴らがここに来ても中途半端にしかならねぇ』
おっちゃん:『そいつらの行く先がどうなるか知ってるか?』
ちゃまる:『ど、どうなるぷにか?』
おっちゃん:『ならず者さ!』
ちゃまる:『な、ならず者!?』
ちゃまる:『それって悪い奴ってことぷにか!?』
おっちゃん:『一概に悪いとは言えねぇが、世間一般ではそう思われてるだろうな』
おっちゃん:『ここに来た大半は、今やならず者となっている』
おっちゃん:『自分に合った不正規な職を名乗り、あちこちで悪さし捕まっている』
ちゃまる:(っえ!?)
ちゃまる:(ここはならず者になるための場所なのかぷに!?)
おっちゃん:『だからワシがならず者を育てているかのように言う連中までいる』
おっちゃん:『国もワシを警戒してこの街の警備を強化しているのさ』
ちゃまる:『ほ、本当にここに来た人たちなのかぷに?』
おっちゃん:『最初は何かの間違いじゃねぇかと思ったが』
おっちゃん:『手配書を見ればここに来た奴かどうかなんてすぐ分かる』
おっちゃん:『残念なことに、ここに来た大半の奴らが手配書に乗っていた』
ちゃまる:(や、ヤベェとこに来ちゃったのかぷに!?)
おっちゃん:『噂を信じて来るノービスはならず者の芽となる』
おっちゃん:『だからノービスは特に警戒され、見張られている』
おっちゃん:『間違いなくお前も見張られているだろうな』
ふと兵士や宿の女性の顔が浮かぶ。
ちゃまる:(確かに兵士さんは噂のこと聞いていたぷに・・・)
しかし、ちゃまるはそうであったとしても、
助けてもらったことに変わりはなく、
信じられない気持ちで一杯だった。
ちゃまる:『何かの間違いぷによ!』
ちゃまる:『そ、それに・・・僕は違うぷに!』
ちゃまる:『ならず者なんてならないぷに!』
ちゃまる:『だいたいその噂だって知らなかったし』
おっちゃん:『確かにお前を見てれば違うのは明白』
おっちゃん:『だがここに来た時点で弁解はできない』
おっちゃん:『噂を知らぬ者、しかもノービスがわざわざここには来ない』
ちゃまる:『し、知らないぷにぃ!!』
おっちゃん:『それにお前は噂を知ってしまっただろ』
ちゃまる:(うっ・・・!?)
ちゃまる:『もしかして・・・僕もならず者にするために!?』
おっちゃん:『だとしたらどうする!?』
悪魔のような形相のおっちゃんに腰が引けるちゃまる。
ならず者になり自分の手配書が母親、妹、
ゲフェンの街に知れ渡ったらどうしようという危機感に苛まれ、
ただ生唾を飲み込むことしかできなかった。