建物の中に入っても人影はなく、
少しジメッとした雰囲気だった。
左側には怪しげに続く階段があり、
何故かその先が見てみたい好奇心に駆られる。
ちゃまるは息を殺しながら一歩一歩階段を進んだ。
謎の男の声:『誰だ・・・』
あと数段というところでその先の暗闇から声がした。
ちゃまる:『あ!すみません!』
ちゃまる:『気になって勝手に入ってしまいました』
暗闇の中、紛れもなく何か光る眼が、
こちらをいつでも取って食うかのように鋭く狙っている。
ちゃまる:『・・・ん?』
不意に何かを踏んだちゃまるは、
怪しく湿った固い棒らしき物を拾い上げてみた。
ちゃまる:(こっ!これは骨!?)
ちゃまる:『うわっ!!』
謎の男の声:『なんだ、ただのガキか』
ちゃまる:(やばい!食われるぷに!)
すると暗闇は明かりが灯され、
薄暗かった部屋が徐々に映し出される。
そこには骨付き肉を食べている
歳をとったおっちゃんがいた。
その光景からちゃまるは本能的スピードで、
自分の拾い上げた骨を見る。
ちゃまる:『うわっ!汚ねぇぷに!!』
持っていた骨を投げ捨てて手を壁に擦り付ける。
おっちゃん:『あぶねっ!何しやがる!このガキが!』
ちゃまる:『だっておっちゃんが食い散らかしたやつだろぷに!』
ちゃまる:『手が!手が臭いぷにぃ!!』
おっちゃん:『なんて失礼なクソガキだ』
おっちゃん:『用がねぇならとっとと出て行きやがれ!』
ちゃまる:『言われなくても出ていくぷによ!』
ちゃまる:『来て損したぷに。。』
ちゃまるはそれ以上言わずあっさりと背を向け歩き出す。
おっちゃんはどこか寂しげに、
ただその小さな背中を見送っている。
ちゃまるが階段に足をかけたときだった。
ちゃまる:『待て、ガキィー!』
ちゃまる:『なんだぷにぃ!?』
ちゃまるはめんどくさそうに鼻をつまみながら振り返る。
おっちゃん:『噂の話、知らねぇーのか?』
ちゃまる:『噂?知らんぷに!!臭いから話しかけるなぷに!』
おっちゃん:『ったく、生意気なガキだっ!』
おっちゃん:『本当に何も知らずにここに来たやつはお前が初めてだ』
ちゃまる:『何の話してるんだぷに?』
ちゃまる:『こんな汚いとこ二度と来るかぷによ!』
おっちゃん:『まぁそう言うな』
おっちゃん:『実はワシも久しぶりに普通の会話ができて嬉しいのさ』
ちゃまる:『くさい、きたない、くらい』
ちゃまる:『誰も来ようなんて人いないぷによ!』
ちゃまる:『だいたい何なんだここぷに!』
おっちゃんは少し真面目な顔になり、
ちゃまるをまっすぐ見つめる。
その雰囲気に少し身構えるようにちゃまるは耳を傾ける。
そしておっちゃんは静かに話し出す。
おっちゃん:『ここはな・・・』
おっちゃん:『自分の力を信じる者が来る場所だ』
ちゃまるは胸の奥で何かが疼く感覚を覚える。
その感覚は居ても立っても居られないくらい、
ちゃまるの心を掻き立てた。
もしかしたら自分が求めているモノかもしれないと、
出会ったばかりの怪しげなおっちゃんに
興味を抱いてしまったのだった。