パタリと、男が来なくなり、三ケ月も過ぎただろうか。
相変わらずアタシは、店を切り盛りしながら、…ずっと。
…心の何処かで、あの男が来るのを待っていた。
客を取らない訳にはいかないから、客はとるけど…。
あの男に抱かれてしまった今、もうカラダが言う事を聞きやしない。
お客さんには悪いけど…。
演技、演技、演技。
の、連続だよ…。
『…姐さぁん…。』
アタシの部屋で、アタシの膝にゴロゴロと甘えながら。
リズが、甘ったるい声で言った。
『…姐さん、ほんっとうにあの兄さんが好きなんだねぇ…。』
『…何言ってんだい。』
リズの髪を撫でながら、アタシは笑い飛ばした。
でも、リズは、ふふふと笑いながら、壁に掛けた、カレンダーを指差す。
『…だって姐さん、あの赤いシルシは、兄さんが店に来た日じゃないかぁ。
…で、最後に来た日から、ずーっと、日付がバッテンで消されていってるよ?』
…目敏いコだね。
『…兄さん、遅いね…。』
『…リズ…。』
ああもうなんて可愛いコだろうね!
アタシは、優しくリズの髪を撫でてやる。
『…いいんだよ、リズ。
…どうしたって、報われないんだ…。
とっくに、覚悟は出来てる。
…これだけ時間が空いたんだ…。
もう、来ないのかも知れないよ。
…来たとしても、ケジメを付けに来るか。』
『…姐さぁん…っ!』
『アンタが泣いて、どうするんだい…。』
『…だってリズ、知ってるものぉ。
姐さん、あの兄さんと居る時、本当に幸せそうに笑ってた。
あんなにキレイで可愛い姐さん、見た事無かったよ?
…だから。
アタシ、2人を見てるのが、好きだった…。』
リズの、その言葉は。
ずっと、ガマンしていた、アタシの心の奥に。
染み渡った。
『…あんたってコは…っ!』
ボタボタッと、涙が零れた。
『…姐さぁん…っ!』
釣られて、リズも泣き出す。
待っていては、いけない。
信じても、ダメ。
期待するのは、もっと。
それが、この世界で生きて来た、アタシが学んだ事のハズ。
『…店に出る前に、顔の腫れをどうにかしなゃならないね!』
リズの瞼にキスをして。
あたしは、笑った。
胸の傷は、じわじわとくすぶる様に、痛むだろう。
それも、受けとめる。
『…ありがとうね、リズ。』
…あの男と居る時の自分が、アタシも好きだったよ…。
ただひたすら好きで。
それだけで。
…強くならなけりゃ。
アタシはこの店と、女の子達と、
そして自分を。
守っていかなけりゃならない。
『…さ、お喋りはおしまいだよ、リズ。
今日もアンタ目当ての金づるがゴマンと来るだろうさ。
…たっぷり稼がせて貰おうじゃないか。』
『はぁい、姐さん!』
アタシは、両手で、ぱしん!と頬を叩いた。
でも、今日。
あの男は、店にやって来るんだ。
海賊王、という。
…別の人に、なって…。