「文章を作るのに最も必要な、そうして現代の口語文に最も欠けている根本の事項のみを主にして、この読本を書いた。」

 「文章とは何か」から始まり、要素や、上達法が書かれている。30年以上昔に書かれた本であるが、現代にも通ずる言語の問題点を指摘しているのは、谷崎の類まれなる文章力があるからこそなのだろう。また、日本語のよさを、短い言葉で表現することができ、なおかつ深みをもつ「含蓄」とし、それを最大限に生かすために、「饒舌を慎め」と論じている。

 しゅん

 ビタミンはA,B,Cなど多くの種類がある。しかし、ビタミンFはない。

「ないから、つくった。炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説が片一方にあるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。」

 Family,Father,Friend,Fight,Fragile,Fortune...<F>で始まるさまざまな言葉を、個々のキーワードとして物語に埋め込んでいったと作者は言う。

 現代社会の中で、何か足りないもの、欠けてしまったものを、包み隠さず表現し、一種の治療薬(きっかけ)によって、人間の心が動かされていく。現代社会に真正面から立ち向かっていく重松清の作風がたまらなく好きである。

しゅん

 豊かな会話、クリエイティブな議論は、どのようにして成り立つのか。話の流れをつかむ「文脈力」や基盤としての身体の重要性を強調しつつ、生き生きとしたコミュニケーションの可能性を考える。コミュニケーション力に内在する要約力、再生力、言い換え力、コメント力、質問力など様々な能力を齊藤孝独特の切り口で論じている。またメモ、マッピング、頷きや相槌、会議運営のコツなど実践的な技にも展開した一冊である。

しゅん

 うまくしゃべれない教師と、傷を抱えた生徒たちの静かで温かな物語である。

 村内先生は、中学の非常勤講師。国語の先生なのに、言葉がつっかえてうまく話せない。でも先生には、授業よりももっと、大事な仕事がある。いじめ加害者になってしまった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、気持ちを伝えられずに抱え込む生徒、家庭を知らずに育った生徒に会うことだ。ひとりぼっちの心にそっと寄り添い、本当に大切なことは何かを教えてくれる。

 「先生は大切なことしかしゃべらない。」

 先生が何度もつっかえながら一生懸命に話す「言葉」は力強く、そして何よりも優しい。「言葉」は人の心を動かすものだ。それゆえ、使い方によって、いいものにも悪いものにもなる。「言葉」を大切にして日々を過ごしていきたい。

しゅん

今を後悔しないために、無駄にしないためになんでもやってみようと思える本だった。
一番思ったことは、考えるより行動にうつす力を身につけたい!行動にうつよう心掛けたい!ということだ。
私は、なんでも考えることが先行してしまい結局不実行で終わってしまうことがある。そこを改善しなくてはと思った。
また『あなたは絶対運がいい』を読んだときもそうだったのように、プラスのイメージをもって生活しようと再び思えた。
本から力をもらった!
なつき
将来を担う子どもたちの社会力を育てるためにボランティア学習に焦点をあて、市民教育を提案する一冊である。
社会力とは①対人関係能力②社会的適応能力である。
これを身につけるために学校教育のなかでボランティア学習を行うことが必要となる。
ボランティア学習は、他分野からなるため興味関心に応じた学習が可能となり、学校・家庭・地域の連携を強めることもできる。また、社会や身の回りの課題について発見し、それをより良くするためにはどうしたらよいか考る。それを行動に移すため、体験活動が可能になり、社会の活性化にもつながる。さらに活動を振り返ることによって、自分自身の気付かなかった一面に自ら気付いたり、友だちに気づかされたりする。
ボランティア学習に焦点をあてることで子どもたちの社会力が養われるだけでなく、社会自体もよりよくなっていくだろう。
なつき
不思議な縁で同棲することになった二人の女性の物語。
主人公のカオリはチエと同棲することになる。カオリは自分のこと以外には興味がない性格で、結婚もせずにひとりの生活を楽しんでいた。しかし、チエと同棲することになって、自分の弱さ、他人のことを想うこと、愛情などに気づくことができるようになる。
カオリが自分の気持ちに正直になっていく様子や直感で行動を起こしていく様子をみていると自分もこうなりたいと思った。
人と関わることで自分を見つめ直し、変えるきっかけになるのだと改めて気づかされた本だった。
なつき

82)辻紀子『峠の樅の木と3台のパイプオルガン‐辻宏 パイプオルガン物語序章‐』いのちのことば社、2010。


 岐阜県にある白川町という小さな山間の町にあったパイプオルガン工房の物語。このお話は、オルガン大工だった辻宏さんの妻、紀子さんによって書かれた実話である。彼は日本から初めてパイプオルガンを海外へ輸出した。素敵な音色を多くの人と共有したいという職人としての思いと、日本、海外問わず人々とのつながりを大切にするところがとても印象的だ。私の故郷も白川町の近くである。四季折々の山、川の美しさが楽しめるあの場所で、オルガンを通して人々を幸せにし、繋げていった辻さんを誇りに思う。

ありさ

 小学生から高校生までの子どもたちが学校、家庭、友達、恋愛などさまざまな悩みを投稿し、それに対し重松氏が答える。生の子どもの意見、悩みは、忘れてしまった自分の小学生、中学生時代の気持ちを思い出させてくれる。彼の子どもを思う優しい語り口調に、思わず私も子どもになった気分だ。また、もし自分が重松氏だったらどう答えるだろうと考えながら読んでみてもおもしろいだろう。

ありさ

80)岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』ダイヤモンド社、2009年。

 発売からわずか6カ月で100万部を突破した昨年のベストセラー第一位である。

 高校野球の女子マネージャーがドラッカーを読んで甲子園を目指す青春小説。野球部のマネージャーの川島みなみは、偶然、ドラッカーの『マネジメント』に出会う。最初は難しくてめげそうになるが、次第に野球部を強くするのに役立つことに気づいていく。9歳から90歳まで幅広い方に支持され、家庭、学校、会社、ひとがあつまる組織のすべてで役に立つ本である。

しゅん