忘れた頃にやってくる(といっても、これが2回目)、その時にリアルタイムで好きなポップソングを10曲挙げてカウントダウンしていくだけのやつである。
10. ハニーメモリー/aiko
悔やんでも悔やみきれないことというのが人生にはあるというのだが、個人的にはその感覚というものが実感をともなったものとしてはまったく分からないため、決定的に大切な何かが欠けているかのような気分に苛まれることがあるのかもしれないが、ないのかもしれない。しかし、aikoの最新シングルであるこの曲などを聴くと、そういうのは確実にあるのだということがなんとなく分かったような気になれるかもしれない。そのような経験がもしもあったならば、この曲の素晴らしさをもっと深く味わえたかもしれず、それはとても残念なことである。
9. WAP/Cardi B feat. Megan Thee Stallion)
旬の女性ラッパー同士による中毒性の高いダンス・ポップは、すでにロングヒットになりそうな兆しを見せている。セックスについて赤裸々に表現された内容が、男性優位的な性差別が社会に温存されなければ都合が悪くなるようなタイプの人達を怒らせたところもひじょうに痛快である。最近では、この曲が来年のグラミー賞の対象にならないということも話題になっていた。
8. Holy/Justin Bieber feat. Chance The Rapper
ジャスティン・ビーバーについてはある時期まではアイドル的な人気を誇るポップ・シンガーぐらいの印象しか持っていなかったのだが、いつの間にか、とても豊かな表現力を身に付けた重要なアーティストになっていた。チャンス・ザ・ラッパーをゲストに迎えたこの曲においては、ゴスペル音楽からの影響も取り入れ、聖なる愛というようなものについて歌っている。深いテーマを真面目に取り上げていながらも、コンテンポラリーなポップ感覚が損なわれていないあたりも素晴らしい。
7. Lovesick Girls/BLACKPINK
最近、リリースされたデビュー・アルバムがアメリカやイギリスでも初登場2位のヒットを記録した、韓国の人気ポップ・グループである。Netflixで配信中のドキュメンタリー作品「BLACKPINK~ライト・アップ・ザ・スカイ~」を観ても分かることだが、長年にわたる過酷なレッスンを経てデビューしたグループだけあって、ボーカル&ダンス・グループとしてのポテンシャルには計り知れないものがある。優れたエレクトリック・ダンス・ポップでアンセミックで、個々のメンバーの特性が生かされたこの曲も最高である。念のため、個人的にはタイ出身のリサ推しである。
6. Before/James Blake
昨年のアルバム「アシューム・フォーム」では、それまでのアブストラクトで匿名的なイメージから一歩踏み出したようなところも感じられたジェイムス・ブレイクだが、先日、リリースされた4曲入りEP「ビフォー」では、また新たな境地を切り拓いている。タイトルトラックになっているこの曲はEPの2曲目に収録され、サウンド的に実験性を感じさせながらも、たまらいほどロマンチックなバラードで、週末までの曜日をカウントダウンするくだりなども印象的である。コロナ禍ならではの自宅待機感に溢れたミュージックビデオが、これもまたとてもユニークなのだ。
5. Care/Beabadoobee
フィリピン生まれ、ロンドン育ちのシンガー・ソングライター、ビーバドゥービーはベッドルーム・ポップ的な感覚を持ちながら、音楽的には90年代のオルタナティヴ・ロックにも影響を受けている。しかし、その解釈はまったく新しく、いわゆるZ世代ならではのものになっている。アルバムの1曲目に収録されたこの曲は、ニルヴァーナ「ハート・シェイプト・ボックス」を思わせる部分などもありながら、人間関係の絶妙に微妙なリアリティーをテーマにしていて、キャッチーなところもたまらなく魅力的である。
4. Let Me Love You Like A Woman/Lana Del Rey
ラナ・デル・レイがつい先日、リリースした新曲である。ノスタルジックで気怠げなシンガー・ソングライター的楽曲という点では、これまでの作品の延長線上にあるが、その主題はより本質的なところに向かっているような印象を受ける。それゆえに、つい何度でも聴いてしまうし、そうすればするほど潜在意識に入ってくるようだ。
3. 射抜け!Midnight/Nao☆(Negicco)
信頼と実績のNegiccoブランドから、またしても素晴らしいコンテンツ、リーダーのNao☆による5曲入りミニアルバム「gift songs」がリリースされた。それぞれの曲が作家もタイプもすべて異なっているのだが、すべてクオリティーが高いし、全体的な統一感もある。1曲目に収録されたこの曲はthe band apartによる、都会的でダンサブルなナイス・チューンで、個人的にはジョー・ジャクソン「夜の街へ(Steppin' Out)」、国分友里恵「スノッブな夜へ」などと共に、週末の夜の街に繰り出す系の都会派ポップスとして、重用していきそうな予感もするのだ。
2. ナイスポーズ/RTUTist
新潟を拠点として活動するアイドルグループ、RYUTistの本当に素晴らしいアルバム「ファルセット」からの1曲。アルバムの中で好きな曲のランキングがその時によって変わるのだが、先日、「NEGi FES 2020 ONLINE」の配信でこの曲に感動し、やはりすごく好きだなと改めて思ったのであった。これは、おそらく高校生活の一瞬の出来事で、記録しなければ忘れてしまいそうなことでもある。しかし、とても価値のある瞬間であり、それをポップミュージックというフォーマットを通じ、最高のソングライティングとボーカルパフォーマンスで記録したというところが本当に素晴らしい(おそらくまったくのフィクションではあるのだろうが、このシチュエーションは多くの人々の青春の思い出に、出来ればあるべきだったし、もしかすると忘れているだけで本当はあったのではないか、と思えるようなものなのではないか)。この曲のミュージックビデオは存在していないのだが、下に貼ったミニライブのYouTube動画においては、13分50秒目あたりからこの曲のライブ映像を観ることができる。この曲の終盤における「ヘイ!ヘイヘイ!ヘイ!」のようなものが、人生をそれでもまだ生きるに足るものにしてくれている。
1. 朝になれ/加納エミリ
音楽的には80年代のR&Bあたりから影響を受けているようで、以前のエレポップ的なサウンドからはかなり変化した印象も受けるのだが、まったく新しい解釈によって再構築されているようで、懐かしさよりも新しいスタンダードを感じてしまうところは、今回も同じである。とはいえ、深みがグッと増して、いまこの時代に漂っている気分のようなものをすくい上げ、それに対しての祈りにも似た思いを象徴しているようにさえ感じられる。そして、クールでドライなようでいて、たまらなくヒューマンタッチな葛藤のようなものも表現してしまう特徴的なボーカルが、この曲には特にハマっているように思える。先日、インターネット配信で視聴したバンドライブでのパフォーマンスも素晴らしかった。