蒙古タンメン中本のカップラーメンをアレンジして食べることについて。 | …

i am so disapointed.

蒙古タンメン中本という辛くて美味しいラーメンを提供する店が東京、埼玉、神奈川、千葉に何店舗かある。元となったのはピンキーとキラーズ「恋の季節」やサイモン&ガーファンクル「サウンド・オブ・サイレンス」がヒットしていた1968年9月に上板橋で開店した、中国料理中本という店だという。

 
当時、札幌味噌ラーメンのブームがあり、唐辛子を入れることもあった。札幌よりもさらに北に行けばもっと辛くなるのではという発想からか、蒙古、樺太、北極といった地名の付いたメニューが出来たという説もあるらしく、蒙古ことモンゴルに実際に蒙古タンメンがあるというわけではないようだ。名古屋発祥の台湾ラーメンが台湾に無いのとは少し違うが、似てもいるような気もする。
 
一般的な中華料理も提供する店だったようだが、辛いメニューに人気が集中し、それを特徴とする店になっていたようだ。人気があったが店主の健康上の理由もあり、宇多田ヒカルが「Automatic/Time Will Tell」でデビューした1998年12月に惜しまれながら閉店したという。
 
多くの常連客たちは中本の味の幻影を求め、辛いラーメンを提供する色々な店を食べ歩いたのだが、やはり中本の代わりになる店はない、「君の代わりは居やしない」という気分になっていたという。中でも熱い情熱を持っていたのが20年来の常連だったという白根誠であり、まず自分自身が中本の辛いラーメンをまた食べたいことを最大の理由に先代を説得し、修行の末に蒙古タンメン中本として店を復活させたのだという。それが、2000年のことである。
 
それでも私は蒙古タンメン中本のことなど知らずに、日々を過ごしていた。2002年の途中から上板橋で仕事をしていると、アルバイトの大学生男子が「中本に行ってきた」などと話している。どうやら近くに中本という有名な店があるらしく、ひじょうに特徴的なラーメンを提供しているという。他のアルバイトにも聞いてみると、やみつきでかなりの頻度で食べに行っているという者もいれば、あれは食べものではないという意見もあった。とにかくものすごく辛いらしい。興味はあったのでそのうち行ってみようと思っているうちに、異動になった。異動先は「鬼滅の刃」の鬼殺隊水柱、冨岡義勇の出身地ともいわれている中野区野方であった。
 
それはそうとして、その後で上板橋に用事で行った時に、今回ばかりはと思い立ち、蒙古タンメン中本に行った。駅から少し離れた人気のない場所にもかかわらず、店内は混んでいて、少し待ってからやっと席に着くことができた。蒙古タンメンを注文し食べたのだが、確かにこれはとても辛い。辛いものが好きなつもりでいたのだが、ここまで来ると味が分からない。汗が自然に噴き出てくる感じである。これよりも辛いメニューもたくさんあるらしく、私にはとてもハードルが高い店だと理解して、それでも何とか最後まで食べて帰った。食べ物を残してはいけないと親に言われて育ったがゆえのことであり、最後の方は修行か何かのような気分で、やっとのことで食べ終えた。店にいた大勢の人達は、本当に美味しそうに食べていた。
 
もう二度と行くこともないだろうと思っていたのだが、少し経つと再びあの刺激を求めている自分がいた。当時、蒙古タンメン中本は上板橋の本店しか無かったのだが、たまたま仕事で用事ができた。会社の同僚と食事に行こうということになり、今度いつまた上板橋に来られるかも分からないのに、蒙古タンメン中本に誘ってしまった。今度は初めての時よりも冷静に味わうことができ、美味しさが分かってきたかとも思われたが、やはりものすごく辛かった。初めて来たという同僚は、汗だくになりながら苦悶の表情を浮かべていた。
 
そのうち、蒙古タンメン中本のカップラーメンをセブンイレブンで見かけるようになったり、都心にも店が出来ていたりするようになった。いつ頃からかははっきりと覚えていなく、いつの間にかという感じであった。蒙古タンメンのカップヌードルが初めて発売されたのは2008年11月、AKB48が「大声ダイヤモンド」によって、初めてオリコン週間シングルランキングの3位以内に入った頃である。
 
その間、私は思い出したように食べたくなって、本店ではない蒙古タンメン中本に食べに行ったり、しばらく行かなかったり、時にはカップラーメンを買ったりと、絶妙に微妙な距離を保った関係性であった。
 
今年の1月の終わり、ということはつい数週間前にモーニング娘。’20のメンバー、横山玲奈の少し前のブログを読んでいたところ、コンビニで売っている蒙古タンメンの冷凍食品が絶賛されていた。商品名がはっきりと書かれてはいなかったのだが、セブンイレブンの蒙古タンメン中本辛旨汁なし麻辛麺のことだと思い、買ってみたところ確かに美味しかった。何度か買って食べているうちに、蒙古タンメン中本の店にも久しぶりに行きたくなってきた。
 
水曜日に相模原で仕事があったので、帰りに橋本の蒙古タンメン中本に行った。Googleマップを頼りに行ったのだが、駅から10分ぐらい歩いた。遠くにアリオ橋本が見えたのだが、そこでは約2週間前にモーニング娘。’20の野中美希、横山玲奈、北川莉央、岡村ほまれ、山崎愛生が参加したトーク&握手会が開催されていた。
 
蒙古タンメンにスライスしたゆで玉子がトッピングされたものと、半ライスを注文した。半ライスはラーメンを食べ終えた後のスープに入れて食べるためである。蒙古タンメンのスープとご飯が合うことを、セブンイレブンに売っていた辛旨飯というインスタント食品で知った。店でこれをやるのは初めてである。とても美味しかった。
 
金曜日には深夜に仕事が終わった後、セブンイレブンに売っていた辛旨飯のチーズの追撃というのを買って食べ、これもとても美味しかった。土曜日の深夜にも蒙古タンメンの味を欲していたのだがその時間にカロリーを必要以上にとるのは健康上も望ましくはないだろう。それで、蒙古タンメン中本豆腐スープというので我慢をした。
 
日曜日の昼の休憩を前に、またしても蒙古タンメンの味を欲している。これがよく語られもする、蒙古タンメンの中毒性なのだろうか。時間内に行って帰って来られる場所に蒙古タンメンの店はないので、そうなるとセブンイレブンのインスタント食品ということになる。それでも、蒙古タンメンではない物よりはずっとましである。
 
グランジというお笑いトリオの佐藤大が書いた蒙古タンメン中本についての文章が、面白くて大好きである。グランジはコントも面白いのだが、この文章も最高である。蒙古タンメン中本のカップラーメンの美味しい食べ方が書かれていた。せっかくなので、これを可能な限り取り入れてみようと思い立った。簡単にいうと、蒙古タンメン中本のカップラーメンにひきわり納豆と生卵を入れて食べ、残ったスープに炊いたご飯とチーズを入れてリゾットにするというやつである。職場の仕事で調理をする設備が無かったのでリゾット部分は諦めるとして、ひきわり納豆と生卵を入れるだけでもかなり楽しそうである。蒙古タンメン中本のカップラーメンに納豆を入れるというのは、マツコ・デラックスの番組でも取り上げられたらしく、かなりポピュラーらしい。そして、あらゆるアレンジを試みたという佐藤大がこれこそが究極とばかりにたどり着いたのが、ひきわり納豆を使ったこの方法なのだという。
 
休憩時間にセブンイレブンに行った。ひきわり納豆は売っていなかったので、極小粒納豆というのを選んだ。生卵は最小で4個入りだったので、これにした。リゾットはできなくても、ただ入れるだけでも十分に美味しいのではないかと思い、白飯ととろけるスライスチーズというやつ、そしてもちろん蒙古タンメン中本のカップラーメンを買った。
 
メインであるカップラーメンは約200円だが、アレンジに使うものとの合計が800円を超えていて、明かにバランスがおかしいような気もするのだが、納豆は3パック、生卵は4個、スライスチーズは7枚入りである。これ以下の単位では売られていないので仕方ない。
 
カップラーメンにお湯をやや少なめに注ぎ、5分間待つのだが、その間に納豆に付いているタレとからしは入れずに、よくかき混ぜておく。5分経過して、フタに貼られている辛味オイルの小袋を剥がし、切って入れるところまではいつも通りである。このままでとても美味しいのだが、本当に納豆だとかを入れてもいいのだろうか、入れない方が美味しかったらどうしよう、などと一瞬、考えもするのだが、もちろん入れてしまう。どれぐらいが適量なのかよく分からないので、とりあえずパックの半分ぐらいを入れてみた。それから生卵を割って入れる。そして、かき混ぜる。食べる。美味しい。
 
辛さはマイルドになっているが、旨さが俄然、生きてくる。これは良い。後からご飯とチーズを入れるのでスープはあまり飲まずに、残りの納豆も入れてしまう。これは正解、すごく合う。それから、ご飯を入れるのだが、スープが温かいのでご飯は電子レンジで温めなくてもいいかと思ったのだが、実は硬い。コンビニで白飯を買うことが最近はほとんど無いので知らなかった。途中まで入れたところでそれが分かったので、残りは温めた。これははじめから温めればよかった。カップは小さいのでどれぐらいの量のご飯が入るのか分からなかったのだが、全部入ったし、スープもあまり飲んでいなかったのでちゃんと足りた。スライスチーズをちぎって入れて、かき混ぜたりしているうちに段々とろけていく。
 
辛旨飯チーズの追撃のよりリアルになった版で、しかも卵と納豆も入っている。納豆も入れた卵かけご飯と蒙古タンメンとのマリアージュとも言い換えることが出来る。もはや強い辛さはほぼ感じない。ただただ美味しい。軽い実験感覚と感動もある、素晴らしい体験であった。ぜひおすすめしたい。
 
納豆が2パックと卵が3個スライスチーズが6枚余ったので、これは自宅に持って帰る。