ポムダムールトーキョーのりんご飴について。 | …

i am so disapointed.

「りんご飴って美味しいのか? 哲学的普遍のテーマ 二度と買わない人 プチョヘンズアップ でもずっとある Like a 冷マ」

ヒップホップアイドルユニット、lyrical schoolが2018年にリリースした素晴らしいアルバム「WORLD’S END」に収録された「常夏リターン」からの一節である。スチャダラパーのBOSEとかせきさいだぁによって書かれたリリックは絶妙な夏あるあるを含んだ内容になっていて、このりんご飴のくだりにもやんわりと共感していた。

確かに縁日でりんご飴を買って食べた記憶はあるのだが、それほど美味しいと思っていたかは定かではなく、何度も繰り返し買うようなこともなかったような気がする。

そして先日、モーニン娘。’20の横山玲奈の過去のブログをなんとなく読んでいたところ、お祭りに行ったらやることとして、「フランクフルトを食べて、ヨーヨー釣りやって、わたあめかりんご飴たべます!(謎の宣言)」と書かれていた。

先ほど引用した「常夏リターン」のリリックについても、とあるlyrical schoolファンのブロガーは、曲は最高だがりんご飴は美味しいというようなことを書かれていた。一体、私はりんご飴のことを本当に知っているのだろうか。そのような疑問が、頭をもたげてきた。

そもそも私が最後にりんご飴を食べたのは、おそらくまだ子供の頃である。というか、いわゆる日本的な縁日自体、高校生だった頃に行った、旭川の護国神社祭か上川神社祭が最後だったような気がする。大人になってからは、麻布十番のインターナショナルな雰囲気のやつぐらいしか記憶にない。あれだけ楽しみにしていたお祭りになぜ行かなくなってしまったのかというと、東京の街そのものが地方にいた頃のお祭りのような役割を果たしていたからなのかもしれない。

それにしてもこんな真冬に縁日などやっているとは思えず、りんご飴がどんな味だったかを確かめるすべもない。などと思いながらいろいろ調べていると、どうやら新宿にりんご飴専門店というのがあり、しかもかなりの人気だということが分かった。公式サイトを見ると、「日本初のりんご飴専門店。新宿三丁目から徒歩5分に位置する東京の喧騒を離れた隠れ家。まじで隠れ家。ここだけの話なんだけど、りんご飴は美味しい」と書かれていた。とあるフィールドワークのため、新大久保にいたので、Googleマップを頼りにさっそく行ってみることにした。

タトゥーショップが1階の建物の2階らしく、階段を上るのだが、マンションの一室のドアのようなものと店名などの表記があるだけで、中の様子がまったく分からない。ネットでの情報を見たところ、カフェのようになっていて、基本的には店内で食べるが、一部テイクアウトできるメニューもあるという感じであった。内装にはガーリーな雑貨感覚がうかがえ、男性のみで入店するにはハードルが高そうな気もする。

ここで怖気づき、とぼとぼと階段を下りていくと、おしゃれな女性2人組が下から上がってきて、私とすれ違っていった。

その夜、やはりあきらめ切れずになんとなく検索をしていると、現在、西武百貨店池袋本店の催事場に出店しているという。夕方までに知っていれば行ける時間はあったのだが、すでにもう遅かった。しかも、出店は翌日までだという。その日は八王子で仕事だったので、今回は縁が無かったと思ってあきらめるしかない。

翌日、午前中に自宅で資料を閲覧したりしていると、妻が普段よりも早く昼食を用意した。食べ終わり、仕事に行くまではまだ少し時間があるなと思ったのと同時に、もしかすると池袋に行ってりんご飴を買って、それから八王子に向かっても間に合うのではないかという考えが浮かんできた。計算してみると、それほど余裕があるわけでもないが、不可能でもないという、絶妙に微妙なラインであった。池袋に着いてからりんご飴が買えるまでにどれだけの時間を要すかにかかっている。

とりあえず着替えて電車に乗って、新宿で乗り換え、池袋で降りた。池袋は東武百貨店があるのが西口で、西武百貨店があるのが東口である。催事場は南館のようなところの7階にあるということだったので一旦地上に出て、エレベーターで上った。「チョコレートパラダイス2020」という催しらしく、バレンタインシーズンを視野に入れた企画なのだろう。この催しそのものはバレンタインデーまで行なわれているようなのだが、今回、私が目当てにしているりんご飴専門店の出店がこの日までということであった。

会場は平日の昼間にしてはとても賑わっていたが、催しの性格上もあり、客のほとんどが女性であるように見えた。確かにそれはそうだろうとまたしても怖気づきそうになるのだが、すぐ近くに目当の店のコーナーがあった。しかも、並んでいなくてすぐに買えそうである。私は実店舗ではこの2種類しかテイクアウトができないと事前にリサーチ済みであった、プレーンとシナモンを注文した。この催しでは他の種類もテイクアウトができ、特にショコラと季節限定の白雪ミルクが人気だというところまで、ツイッターアカウントで調査済みだったのだが、初めてでもあったのでこの2種類にした。

ディスプレイやロゴなど、すべてが可愛くておしゃれである。スタッフのサービスも丁寧で温かい。ロゴ入りの袋に入れ、美味しい食べ方が書かれた紙も付けてくれた。それにしても大きくてインパクトがあり、縁日の屋台で見るりんご飴とはかなり違っているように思える。というか、そもそも記憶があやふやである。賞味期限は本日中ということであった。

電車の中で美味しい食べ方について書かれた紙を読むと、「冷蔵庫で1時間ほどかけてしっかり冷やすのがポイント!りんごの芯を避けるように包丁でカットすると食べやすいです」ということであった。りんご飴というと棒に刺さったままの状態で歩きながら食べるイメージしか無いのだが、これの場合は違うようである。しかし、棒も刺さっている。

そして、その紙を裏返すと、青森産のりんごが使われていることや、りんご飴は1908年にアメリカで誕生したといわれていることや、店名がフランス語で「愛のりんご」を意味することなどが書かれている。

事務所に着き、可愛いイラスト等が描かれた袋からりんご飴を取り出し、包装をはがすと甘い香りがただよってくる。シナモンの方はもちろんシナモンの香りがする。皿の上に置き、美味しい食べ方の紙にあったように、包丁でカットした。あわてす過ぎていたので冷蔵庫で1時間ぐらい冷やすことはできなかったのだが、もしそうしていたらもっと美味しかったのだろう。

りんごの表面をコーティングしている飴がわりと硬いため、少し力を入れる必要があるのだが、一旦、包丁が入ってしまえば、あとはスムーズである。噛むとわりと硬めの飴が砕けた後で、りんごのやわらかいジューシー感という、この食感の時点でかなり楽しい。甘い飴とりんごの味とが混じり合う感じも素敵である。紅茶が飲みたくなってきたのだが、そもそもりんご飴を食べるに際して用意などしているはずがない。しかし、これは本当に紅茶に合うに違いない。シナモン味のりんご飴を食べている時に、特にそう思った。アップルティーとかシナモンティーとかがあるのでそれも納得であり、カフェのようなかたちで運営されているのも当然といったところであろう。

あやふやな記憶の中にある縁日の屋台で買って食べたりんご飴と較べると、かなりグレードが上がっている。イメージや食べ方まで含めたトータル的には、仮面ライダー1号とゼロワンぐらい違う。横山玲奈がお祭りで食べたいりんご飴も、こういうのとはおそらく違うのだろうが、これはこれでまた素晴らしいものである。