「夏」と「少女」という世の中で最も素晴らしいもののうちの2つを掛け合わせたタイトルに相応しい楽曲となるとひじょうにハードルが上がってしまうわけだが、聴いてみた結果、これこそをこの夏のサウンドトラックとして心に刻み、来年以降も夏のプレイリストに追加してしまうであろう、最高のサマリー・ポップであった。
ハイムのデビューEP「フォーエヴァー」が話題になったのは2012年で、翌年にリリースされたアルバム「デイズ・アー・ゴーン」は、全英アルバム・チャートで1位、全米アルバム・チャートでも6位のヒットを記録した。インディー・ロック的な感覚を持ったバンドだが、レコーディングされた作品にはよりポップ寄りなサウンドになっていて、それがクロスオーバー・ヒットに繋がったような気がする。2017年にリリースされたアルバム「サムシング・トゥ・テル・ユー」も全英アルバム・チャートで最高2位、全米アルバム・チャートでは最高7位と、順調なセールスを記録していた。
このアルバムの制作中に、メンバーのダニエル・ハイムのパートナーでもあるプロデューサー、アリエル・レヒトシェイドが精巣がんを患っていることが発覚した。「サマー・ガール」のトラックは、ダニエル・ハイムがスマートフォンにインストールしたアプリケーションソフト「ガレージ・バンド」で制作したデモが元になっているということだが、歌詞の内容はこの時の経験によるものだという。
パートナーが病気で苦しみ、不安をかかえている時に、ダニエル・ハイムは彼にとっての希望であり、光であろうと決意した。その思いが「私はあなたのサマー・ガール」というフレーズにつながったのだという。
「サマー・ガール」には、これまでのハイムのレコーディング作品と比べると、よりルーズでフリーな雰囲気が感じられるが、本来のインディー・ロック的なイメージには、こちらの方が相応しいようにも思える。
夏らしいライトでブリージーなポップスとしても最高なのだが、このような背景を知ると、味わいもより深まるというものである。
ルー・リードが1972年にリリースしてヒットした「ワイルド・サイドを歩け」は、1990年にア・トライブ・コールド・クエスト「キャン・アイ・キック・イット?」にサンプリングされたことによって、ポップ・ミュージック史における価値がアップデートされたような印象があるが、「サマー・ガール」もまた、この曲にインスパイアされたようなところがある。
作っているうちに似てきたというのが実際のところだというのだが、それは印象的なサックスのフレーズによるところも大きい。このパートは、ダニエル・ハイムの友人でもあるロスタム・バトマングリによって書かれている。ヴァンパイア・ウィークエンドの創設メンバーとしても知られるロスタム・バトマングリは、最近ではクライロの素晴らしいデビュー・アルバム「イミュニティ」を共同プロデュースしているが、このアルバムには2曲でダニエル・ハイムがゲスト参加している。
アリエル・レヒトシェイドは病気を克服し、自身がインスパイアをあたえて生まれた「サマー・ガール」を、共同プロデュースもしている。
心地よいポップスでありながら、暗闇の中で光を求めるような、人生において必要とされる普遍的なテーマが追求されてもいる。
