ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンが主演した学園ミュージカル映画「グリース」がアメリカで公開されたのは、1978年6月16日だったようである。日本ではその約半年後、12月9日に公開されたようだ。確かに個人的にも小学校を卒業する少し前だったような気がする。当時、ジョン・トラボルタといえば「サタデー・ナイト・フィーバー」が大ヒットして人気が爆発していたわけだが、こちらのアメリカでの公開日は1977年12月14日で、日本では1978年の7月22日に公開されたようである。つまり、「サタデー・ナイト・フィーバー」はアメリカでは冬、日本では夏に公開されたことになり、「グリース」はその逆ということである。
「サタデー・ナイト・フィーバー」の主題歌「恋のナイト・フィーバー」は確かに日本では1978年の夏にヒットして、オリコン週間シングルランキングでも最高4位のヒットを記録した。8月にはビリー・ジョエル「ストレンジャー」、アラベスク「ハロー・ミスター・モンキー」と共に、日本のシングルランキングの10位以内に洋楽が3曲もランクインしている週があった。「サタデー・ナイト・フィーバー」といえばやはりビー・ジーズによる音楽がひじょうに印象的だったのだが、ビー・ジーズのバリー・ギブは「グリース」のサウンドトラックにもまた関わっていたのであった。
1978年の全米年間アルバム・チャートでは、1位が「サタデー・ナイト・フィーバー」、2位が「グリース」のそれぞれサウンドトラックがランクインしている。ちなみに3位以下はフリートウッド・マック「噂」、ビリー・ジョエル「ストレンジャー」、スティーリー・ダン「彩(エイジャ)」となっている。1年52週のうち、「サタデー・ナイト・フィーバー」が24週、「グリース」が12週、2作合わせて36週もの間、アルバム・チャートの1位を記録していたようだ。これ以外にこの年に全米アルバム・チャートで1位を記録した作品は、フリートウッド・マック「噂」、ジェリー・ラファティ「シティ・トゥ・シティ」、ローリング・ストーンズ「女たち」、ボストン「ドント・ルック・バック(新惑星着陸)」、リンダ・ロンシュタット「ミス・アメリカ」、ドナ・サマー「ベスト・オブ・ドナ・サマー~ライブ・アンド・モア」、ビリー・ジョエル「ニューヨーク52番街」である。
「サタデー・ナイト・フィーバー」は「ディスコでフィーバー」という概念を日本で定着させるほどの大ヒットとなったが、「グリース」もまた予告編のCMなどがよくテレビで流れていて、かなり人気になっていたような気がする。オリビア・ニュートン・ジョンは1975年に日本でも「カントリー・ロード」や「ジョリーン」がヒットし、清純派のカントリー・ポップ歌手というような認識がされていたと思われる。当時、小学生であった私は「サタデー・ナイト・フィーバー」も「グリース」も映画館で観てはいなく、後にビデオをレンタルして観て、それからDVDも購入した。
「サタデー・ナイト・フィーバー」は流行文化を取り入れた軽めの作品かと思いきや、じつはわりと真面目な青春映画だったことに驚かされた。「グリース」は想像どおりの学園ミュージカル映画だったのだが、オリビア・ニュートン・ジョンが演じるサンディーがちゃんとオーストラリア出身という設定になっていて、やはり清純派的なキャラクターなのだが、最後にはアダルトにイメージチェンジして、これが後に全米シングル・チャートで10週連続1位を記録する「フィジカル」でのセクシー路線にも繋がるのだなという感想を持ったりもした。
1980年ぐらいに原宿の歩行者天国でディスコソングやテクノポップをかけて奇抜なファッションで踊る竹の子族なる若者たちが話題となったが、その少し後に50年代のアメリカをモチーフにしたローラー族というのも流行したようである。この頃、私は旭川の中学生だったので、原宿の様子などはメディアを通してしか知りようがなかったのだが、原宿のブティック、クリームソーダやそこから派生したロカビリーバンド、ブラック・キャッツ、シャネルズ「ランナウェイ」やヴィーナス「キッスは目にして!」のブームなど、フィフティーズ的な文化のリバイバルは確実にあったような気がする。
これらの文化を当時、享受していたのは学校のクラスにおいても、当時はツッパリなどと呼ばれがちであった悪そうな少年少女たちだった印象が強い。一方、大滝詠一の「ロング・バケイション」を聴いていたのは、これとはまた違った、大人しくて真面目そうな人たちが多かったような気がする。しかし、このアルバムもまたオールディーズ音楽をベースにしているという点ではどこか共通したところがあり、なんとなく時代がそのような気分だったのかもしれない。
この少し前に公開され、かなりヒットした「グリース」がこれらにどの程度の影響を及ぼしたのか定かではないのだが、この映画を観ると、当時の中学校のクラスでは同じ文化圏には属していなかった彼らの価値観を答え合わせするかのような快感がある。
「グリース」はミュージカルを原作とした映画だということだが、やはり音楽が素晴らしい。ヒットしたジョン・トラボルタ&オリビア・ニュートン・ジョンの「愛のデュエット」「想い出のサマー・ナイツ」、フランキー・ヴァリ「グリース」が有名だが、他の楽曲もひじょうに優れているし、シャ・ナ・ナによる「ブルー・ムーン」「ハウンド・ドッグ」などのカヴァーもとても楽しい。
1978年に公開されたこの映画の設定は、その20年前にあたる1958年の夏である。ヒットの要因としては、無垢な時代へのノスタルジーもあったのではないかと思える。
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