「E.T.」について。 | …

i am so disappointed.

スティーヴン・スピルバーグ監督による映画「E.T.」がアメリカで公開されたのは、1982年6月11日だということである。日本では約半年後の12月4日に公開されている。当時、高校生だった私はこの映画を観ていなかった。というか、私が住んでいた旭川には映画館がたくさんあったにもかかわらず、高校時代には観に行った記憶がほとんどない。プリンスの「パープル・レイン」を観に行ったのも、高校を卒業して街を離れる少し前だったような気がする。お金はほとんどレコードか本に費やしていたのだろう。

 

妹とよく遊んでいた近所の子供が観に行ったらしく、自転車に乗りながら「E.T.」みたいだと言ってはしゃいでいた。日本でも大ヒットして、1997年に「もののけ姫」に抜かれるまでは、配給収入の歴代1位だったのだという。アメリカで公開され、情報だけが伝わっていた頃には、キャラクターがそれほど可愛くないなどと言われていたような気がする。10年ぐらい前にモンスターエンジンの西森洋一が「映画」というタイトルのフリップネタをテレビで披露した際に、「E.T.」のことを「動くからあげ」と表現していて、当時、AKB48のメンバーであった渡辺麻友もブログでこのフレーズを連呼するほど気に入っていたようだ。日本ではバンダイが商品化権を取得し、グッズなどを販売していたようだが、あまり売れずに約3億円の損失を計上したらしい。

 

1990年代に幡ヶ谷の文華堂でビデオを借りては観まくっていた頃に、「E.T.」も観たような気もするのだが、記憶が定かではない。1980年代の子供をメインのターゲットにしたと思われるファンタジー系の映画でメジャーなものを後に観たりしていたのだが、やはり子供の頃に観るべき作品ではないかというような感想を持ち、「E.T.」もそのようなジャンルになんとなくカテゴライズしていたのだが、本当に観たことがあったかについては、いまや疑問符がついている。その理由についてはおそらく後ほど書くことになるのだが、幡ヶ谷に住んでいた頃の家には確か「E.T.」のビデオカセットがしばらくあった。それは妻がアメリカで暮らしていた頃に現地で買ったもので、もちろん日本語字幕などは付いていないはずである。それも引っ越す時に他のビデオカセットと一緒に捨ててしまった。

 

妻がアメリカに渡ったのは1983年らしいのだが、「E.T.」の人気はすさまじく、ずっと劇場公開されていたため、ビデオカセットが発売されるのはかなり遅かったらしい。調べてみたところ、公開から6年後の1988年に発売されたようだが、それでもかなり売れて、アメリカでは歴代のビデオソフト売上の記録を大きく更新したようである。

 

これだけの大ヒット作品であるため、「E.T.」をカゴに乗せた子供の自転車が空を飛んだり、指先と指先を合わせて「トモダチ」と言うところなどは、イメージとして認知してはいた。先日、1本の映画作品というよりは1980年代を象徴するポップ・カルチャーの1つでもあった「E.T.」をやはりちゃんと観ておこうと思い立ち、この期に及んでやっと視聴したのであった。この時点では1990年に幡ヶ谷の文華堂で借りて観たことがあるもののと信じ込んでいたのだが、いまとなってはもしかすると観ていなかったのではないかという気がしてきている。

 

なぜなら、それほど期待をせずに観たところ、これがとても良かったからである。このことを人に伝えると、いままで一度も観たことがなかったのかと驚かれる。こういうのはじつはひじょうに多く、スタジオジブリのアニメーション映画を1本も観たことがなかったりする。宮崎駿の脚本による作品としては、子供の頃に「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」を旭川の映画館で観たが、その少し後に生まれた妹の名前をこの映画の登場人物であったミミ子にしたいと弟と一緒になって主張したのだが、耳を引っ張られたりしていじめられるからダメという理由で却下された。

 

確かに子供をメインのターゲットとした映画ではあるのだが、これはなんだかとても良かった。全体的にリアルタイムで知っているはずの当時の空気感が感じられる点も大きいのではないかと思うのだが、世界観がしっかりしているし、原初的な感情に強く訴えてくるところがひじょうにある。主人公の兄であるマイケルが、「スペースインベーダー」だとか反核のスローガンである「ノー・ニュークス」のTシャツを着ているのも味わい深い。また、一般的には「E.T.」に出演していた子役としてまず認知されたであろうドリュー・バリモアの演技を、私は大人の女優としてまずはちゃんと観たので、子役時代はこんな感じだったのか、という風に観ることができたのでよかった。

 

あと、音楽がすごく良い。ジョン・ウィリアムスのオーケストラのやつだが、いろいろなアーティストの楽曲の寄せ集め的なものではなく、ちゃんといかにも映画音楽という感じで、それが作品をしっかりと盛り上げているのも良かった。子供たちがマウンテンバイクのようなもので追いかけてくる大人たちから逃げるシーンは、この映画の見せ場の1つだと思うのだが、まるでアクション映画のカーチェイスシーンのようなスリルが感じられる。いまさらではあるが、超一流のプロによる妥協のない上質なエンターテインメントである。

 

今回、調べて分かったことだが、「E.T.」はスティーヴン・スピルバーグが子供だった頃に、両親が離婚し、寂しさを紛らわすためにつくった空想上の友達がモチーフになっているということである。子供をメインのターゲットとした映画であるにもかかわらず、主人公の父親は愛人とメキシコに行っているというシチュエーションが用いられていることにも驚いた。この作品が大人の感情のとても深いところにもリーチしてくる理由とは、ここにも原因があるのかもしれない。

 

カゴに「E.T.」を乗せた主人公の自転車が空を飛び、影が月と重なるシーンは静止画像で何度も観たことがあり、まさにこれかと感激したし、じつはオープニングのロゴの時点でそれに近いことを感じたりもしていた。自分がまだ生まれていなかった時代のポップ・カルチャー的な作品を観て、当時のことに思いを巡らせるのも楽しいものだが、今回は自分がリアルタイムで体験していた現象の中心となっていた作品そのものを、いまさらはじめて観ることによる感慨という、なかなかおもしろい体験であった。

 

 

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