アリアナ・グランデ「7リングス」について。 | …

i am so disappointed.

昨年の個人的な年間フェイヴァリット・トラック・ベスト50をこのブログで発表したのだが、1位にはアリアナ・グランデの「サンキュー、ネクスト」を選んだ。2017年にマンチェスターのライヴ会場で起こった自爆テロ事件によって死傷者が出るという悲しみを乗り越え、2018年にリリースされたシングル「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」は、力強さとポジティヴィティーを感じさせるものであった。全米シングル・チャートで最高3位を記録したこの曲を収録したアルバム「スウィートナー」もセールス、評価共に好調だったが、11月にアルバム未収録の新曲「サンキュー、ネクスト」を突然にリリースした。しかもこの曲は早くも翌年にリリースされるという、同タイトルのアルバムからの先行シングルだというのだ。

 

「サンキュー、ネクスト」は初めて聴いた時から、気に入り、もしかするとポップ・ミュージック史に残る名曲の1つとなるのではないか、という予感がした。過去の恋人たちについて歌われ、つまり失恋をテーマにしているのだが、センチメンタリズムを感じさせつつも、その姿勢はきわめてポジティヴなのである。すでに別れてしまった恋人たちに対し、感謝の気持ちを歌い、その上で次へ行こうという、そのような内容である。私が予感した通り、この曲は大ヒットし、アメリカやイギリスをはじめ、多くの国のヒット・チャートで1位を記録した。歌詞では実際にアリアナ・グランデと過去に交際した恋人たちの名前が挙げられていたが、その中にはこの曲がリリースされる約2ヶ月前に亡くなったヒップホップ・アーティスト、マック・ミラーの名前もあった。

 

「サンキュー、ネクスト」がアメリカにおいていかにポピュラーなヒット曲となったかを象徴するような写真を、ツイッターのタイムラインで見かけた。ドナルド・トランプ大統領に反対するデモが先日も行われたが、そこで掲げられたプラカードの中に、「サンキュー、ネクスト」をもじった「ファック・ユー、ネクスト」というものがあり、そこにはドナルド・トランプの顔写真が貼られている。くたばれ、次の大統領に代われ、ということであろう。そして、「サンキュー、ネクスト」の歌詞にあった「私は過去の恋人にとても感謝している」というフレーズを引用したプラカードでは、ドナルド・トランプの写真の上に×が書かれていて、バラク・オバマ元大統領の写真がハートで囲まれている。他にも「愛を教えてくれた人」でバラク・オバマ、「忍耐を教えてくれた人」でヒラリー・クリントン、「痛みを教えてくれた人」でドナルド・トランプという三段オチを用いたものや、「ノー...サンキュー、ネクスト・プレジデント」といったストレートなものもある。また、フェミニズムの文脈においては、「スウィートナー」の収録曲でシングル・カットもされた「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」のタイトルや、「サンキュー、ネクスト」の歌詞にある「私は過去の恋人にとても感謝している」の「過去の恋人」にあたる「EX」を「性別」を意味する「SEX」にアレンジしているものなどもある。アリアナ・グランデはマドンナ、エマ・ワトソンなどと同様に、過去に反トランプ・デモに参加した経験がある。

 

「サンキュー、ネクスト」に続き、アリアナ・グランデは次のアルバムからの先行トラックとして「イマジン」を発表し、これも素晴らしかったのだが、さらに「7リングス」をリリース、ミュージック・ビデオも先日、公開された。

 

1月18日には内容の優れたアルバムがいくつもリリースされ、この曲のことも早く取り上げたかったのだが、遅れてしまった。ヒップホップの影響が強く感じられる曲であり、女性同士の友情と富と名声がテーマになっている。ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」からの1曲で、ジョン・コルトレーンによるカバーなどにより、ジャズのスタンダードとしても知られる「マイ・フェイヴァリット・シングス(私のお気に入り)」からの引用も印象的である。ミュージック・ビデオにおいては、オープニングから品川ナンバーの自動車が登場し、タイトルも「7つの指輪」と日本語が表示されたりと、日本のファンとしてはうれしいところである。

 

「サンキュー、ネクスト」のミュージック・ビデオのオープニング・シーンで、実は「7リングス」のイントロがすでに使われていて、本編ではナンバープレートに「7リングス」と表記された自動車が走っていたりと、前振りがあったようである。

 

アリアナ・グランデは実際に友人たちと出かけ、たくさんのシャンペンを飲み、全員に指輪を買ったのだという。スタジオに戻る間にこれを曲にしてはどうかと思い、その日の午後に書き上げたらしい。この曲の作者として、アリアナ・グランデ自身の他に、友人たちの名前もクレジットされている。曲はトラップのビートを取り入れたもので、一部においてややラップ的でもあるアリアナ・グランデのヴォーカルには、また新たな魅力が発見できる。アリアナ・グランデはこの曲のことを、フレンドシップ・アンセムだと説明しているようである。