2019年がスタートしてからまだそれほど経ってはいないが、早くもお気に入りのアルバムやシングルが次々とリリースされていて、音楽ファンとしては充実した年になりそうな予感がしている。中でもかなり気が早いような気はするのだが、年間ベスト・アルバムの有力な候補なのではないかというぐらいに気に入っているのが、ジェイムス・ブレイクの「アシューム・フォーム」である。
このイギリス出身のシンガー・ソングライターであり、音楽プロデューサーのことを初めて知ったのは2010年で、かつてテクノの名門として知られていたR&Sレコーズ(2000年に一度倒産し、2006年に復活した)からリリースされたシングルが話題になり、当時はポスト・ダブステップなどと呼ばれるような音楽性であった。その後、アルバムを発表するごとに知名度も上がり、高い評価を得ていったのだが、その過程でカニエ・ウェスト、フランク・オーシャン、ケンドリック・ラマーといった、ヒップホップ界の一流アーティストとコラボレートしたり、ビヨンセのアルバムに参加したりもした。
R&B、ヒップホップからの影響を強く受け、男性アーティストではあるが、脆弱さや繊細な内面を告白することに迷いがなく、ある音楽メディアのライターからは「サッド・ボーイ」などとからかわれることもあった。しかし、この反マッチョイズム的な感覚は現在、そしてこれからの世界をより良くする上での理想像にもマッチしていて、フェミニズムとの親和性も高いように思える。
音楽的にもひじょうに新しいのだが、これまでは特徴としてややアブストラクトなところがあり、それも魅力ではあったのだが、このアルバムにおいては、より輪郭がはっきりしてきたような印象を受ける。アルバムのアートワークにおいても、おそらく初めて本人の顔がはっきりと写っているところにも、それがあらわれているように思える。女優のジャメーラ・ジャミルとの交際のはじまりが、強く影響しているとも考えられる。
話題はアウトキャストでの活動でも知られるアンドレ3000とのコラボレートで、確かにその曲「ホエアズ・ザ・キャッチ?」は、このアルバムのハイライトだとも言えるが、アルバム全体を通じてひじょうに新しく、それでいて正しいと思える。とにかく上品で優しい、作品そのものが哲学のようである。
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