漫才のコンテスト番組「M-1グランプリ」が今年もテレビ朝日系列のテレビ局で生放送され、今年初めて決勝に進出した霜降り明星が14代目のチャンピオンに輝いて、幕を閉じた。
なんとなく毎日更新しているこのブログのこの日には「M-1グランプリ2018」についての雑感を書くつもりではあったのだが、実は本戦後にGyaOで放送される「世界最速大反省会」だとか、その後の「M-1打ち上げ」なども観て、書きはじめるのは深夜からになる予定であった。この日は敗者復活戦の予選順を決めるやつとか敗者復活戦とかも全部観て、敗者復活戦の投票や決勝戦の三連単順位予想キャンペーンとかにも応募して、思う存分楽しむべく態勢を整えていた。というか、数年前から「M-1グランプリ」の予選動画がGyaOで公開されるようになったので、秋からその何百本もの動画を空き時間や移動時間などを利用して消化していくというなかなか楽しいイベントもあり、ここに至るまでにはかなり気分が盛り上がっているのである。
それだけに結果が好みの感じではなかった時にはアンチクライマックス感というのがややあるのだが、逆にとろサーモンが優勝した「M-1グランプリ2017」などはものすごく盛り上がったわけである。というか、とろサーモンが好きすぎて最終決戦ではもはや冷静な判断ができていなく、好みでいえば完全にとろサーモンなのだが、客観的な完成度ならば和牛だろうと思っていたのだが、一緒に観ていた妻によると、これはとろサーモンではないかというのである。ちなみに、妻はとろサーモンがあまり好きではない。そのような状況であの優勝だったので、クライマックス感がひじょうに感じられたのであった。
「M-1グランプリ2018」のファイナリストについては、かなり私好みの感じになっていて、これは絶対に盛り上がらないはずはないと思っていたのだが、いつもなかなか思い通りにはならず(笑い飯の西田幸治でいうところの「思てたんと違~う!というやつである)、そこがまたおもしろくもある。
それで、そのファイナリストの中で私が入って欲しかったのに入れなかったコンビが1組だけいて、それはプラス・マイナスである。結成15年目で今年がラストイヤーということであったが、ルミネtheよしもとの舞台では爆笑をさらっているコンビである。準決勝戦でもかなりウケていたということだったが、結集進出はならなかった。今年は同じくラストイヤーとされていたギャロップも有力だといわれていたのだが、こちらももう中堅という感じであり、お笑いファンの間ではフレッシュさはそれほど無い。「M-1グランプリ」は当初は結成10年以内を参加資格としていたように、若手スターの発掘という意味合いもあったのだが、2011年の番組復活後はそれが15年までに延長され、全体的に技術は上がったがフレッシュさは薄れたようなところがある。というわけで、プラス・マイナスとギャロップのうち、決勝に進出するならばどちらか1組だろうというような意見も多かったのだが、準決勝戦ではいずれもよくウケていたらしく、その時点の予想では2組共をファイナル進出とするものも少なくなかった。結果的に、ギャロップだけがファイナルに進出した。
しかし、プラス・マイナスはひじょうに劇場の観客にウケるタイプのコンビであり、これは敗者復活戦からの勝ち上がりもあるのではないかと思った。たとえば「M-1グランプリ2015」では、予選でものすごくウケていて、ファイナル進出予想にもかなり入っていたトレンディ・エンジェルがまさかの敗退を喫したが、敗者復活戦で1位になり、その勢いで決勝でも優勝してしまった。
実際に敗者復活戦でもプラス・マイナスはとてもおもしろく、個人的には全組の中でダントツであった。「M-1グランプリ2018」の放送がはじまり、ここ数年そうであるように、敗者復活戦のランキングが下位から発表されていく。ちなみにこの敗者復活戦は視聴者がインターネットから3組を投票し、その結果によって決まったのだが、私が投票したのはプラス・マイナス、マヂカルラブリー、さらば青春の光であった。純粋にこの日のネタのおもしろさと好みで選んだ。最後の2組にプラス・マイナスとミキが残ったが、結果的にはミキが勝ち上がった。ここでプラス・マイナスにとっての「M-1グランプリ」は終わったのだが、劇場の観客を沸かせる力はファイナルに進出したどのコンビにも負けないと思うので、今後、「M-1グランプリ」の決勝には最後のあと一歩で届かなかったが、劇場ではものすごくおもしろいコンビとしてハクがつくのではないか、などと無責任に思ったりはしている。
数年前に妻とルミネtheよしもとで行われた大阪の漫才コンビばかりが集まるライブを観に行ったのだが、その日の舞台でミキが一番おもしろかったということで意見が一致した。その日の動画はYouTubeでも公開されていたのだが、妻の笑い声がしっかり入っていた。しかし、それから数年して慣れてしまったというか、確かにあのテンポと勢いはすごいのだが、以前ほどにはあまり楽しめなくなって、「M-1グランプリ2017」で高得点だったのにもかなり驚いたのであった。あの年の大会はとろサーモンが優勝したことですべて美しい思い出になっているのだが、あの時点ではスーパーマラドーナやかまいたちやジャルジャルよりもミキが高得点ということにまったく納得がいっていなかったことを思い出した。
「M-1グランプリ2018」は前年に引き続き、笑神籤なるクジで出番順がその場で決まり、このクジを引く役を昨年は司会の上戸彩がやっていたのだが、今年はそのためにアスリート3名が出演していた。1組目の見取り図は、持ちネタの中でもひじょうに人気の高いネタをやっていた。私はお笑い全般というよりは、主に大阪の吉本興業に所属している芸人がやっているようなネタが好きなだけなのではないかと思うことが時々あり、その点でいうと、ここ数年の「M-1グランプリ」は大阪の吉本興業に所属していたり、現在は東京の吉本興業に所属していたが、かつては大阪にいたコンビがひじょうに多く、個人的にはかなり理想的な状態になっている。見取り図もそのうちの1組であり、デビューして間もない頃にガスマスクガールと一緒にDVDを出したりとかなりのエリートコースを歩むはずだったのだが、それほどとんとん拍子には行かず、何年か経った後の今回だったので、ひじょうに喜ばしいことではあった。
そして、2組目に早くもスーパーマラドーナが選ばれる。優勝候補であり、また、ぜひ優勝してほしいと最も思っていたコンビである。出番順が早すぎやしないかと思ったのだが、まあ最終決戦に残るぐらいの得点は入るだろうと思っていた。ネタはお笑いファンの間では「サイコパス」などと呼ばれたものだったのだが、審査員の得点はそれほど伸びなかった。私は松本人志の思想、発言とはひじょうに相反することが多いというか、ほとんどがまったく合わないのだが、「M-1グランプリ」の審査員としての意見にはひじょうに頷くところがあり、いかんともしがたい。サイコが強すぎた、ラストイヤーなのにどうしてこんな暗いネタをやったのかという意見については、まったく同感であった。このコンビの漫才が大好きだからこそそのように思ったのだが、武智はこのネタが一番良いと思って選んだというようなことを言っていたし、そもそも結果はどうあれ悔いなく終わりたいというようなことを言っていたので、これで良かったのだろう。今回がラストイヤーであったスーパーマラドーナにとっての「M-1グランプリ」は今回で終わったのだが、間違いなく将来的に劇場のトリを飾るような漫才をやっていけるコンビだと思うので、今後もずっと好きでいたいと思った。
こうなれば、もう優勝は和牛しかないのではないかと思った。実は決勝の三連単予想ではスーパーマラドーナ、和牛、敗者復活としていたのだが、これはプラス・マイナスが敗者復活戦から上がってきたらという想定であった。敗者復活戦においてミキとプラス・マイナスとはかなりの僅差だったので、知名度を考えるとかなり健闘したのではないかと思う。結果的にミキがファイナルに進出したのだが、今年はそれほど得点は伸びないだろうと、なぜだか確信していたのだった。
その後、かまいたち、ジャルジャル、ギャロップ、ゆにばーすと続き、私も個人的に採点していたのだが、審査員とわりと近いとは思っていた。ジャルジャルは大好きなのだが、実は今回のネタについては予選の動画で観て、おそらく新しくてすごいことをやっているのだが、漫才の大会として観た場合にどうなのか、というような保守的な感想を持っていた。昨年、松本人志が高評価したにもかかわらず最終決勝に残れなかったということがあり、今年はとある事情で、ややジャルジャルに有利に運ぶのではないだろうか、というような気配を感じた。そして、今年は高得点で、この時点で暫定1位となっていた。審査員の入れ替えがあり、昨年、ジャルジャルにそれほど高い得点を入れていなかった渡辺正行、博多大吉が今年はいなく、新たに加わった立川志らくが99点の高得点を入れていた。私は立川志らくの政治的な考え方とはほぼ完全に逆の立場を取るもので、今回の「M-1グランプリ」で楽しめないことがあるとすれば、それは立川志らくが審査員にいることだろう、ぐらいに思っていたのだが、その審査はかなり好ましいものであった。というか、マイルドな同調圧力的な空気からまったく自由であり、そこがかなり良かった。去年も今年も独特のシステムを基本としたジャルジャルにしかできないタイプのネタだったのだが、今回のネタは後藤淳平が困惑しながらゲームに付き合うという体でやっていたことにより、観客が共感しやすかったというところもあったのかもしれない。そして、昨年はジャルジャルのネタをあまり評価していなかった中川礼二が高得点を付け、その頑固さを評価した場面では、思わず軽く感動してしまった。ちなみに、私もファーストステージではジャルジャルに最高得点を付けていた。
次のミキは敗者復活戦では視聴者の票を集めて勝ち上がってきたものの、審査員からは高得点がつくことはないだろうとほぼ確信していて、その思いはネタを観たことによってさらに強まったのだが、今年も高得点で2位に躍り出た。この時点で、私には「M-1グランプリ」の審査員が評価するある価値基準について理解ができない部分が間違いなくあるのだろうと、わりと悲しい気分になったのだが、とにかくこれだけおもしろいネタがたくさん観れる番組もそうはないのだから、純粋にネタ番組として楽しもうと気持ちを切り換えていった。この時点でスーパーマラドーナの最終決戦の可能性が消えたのだが、これはまあ仕方がないにしても、ミキがかまいたちよりも高得点というのがまったく理解できず、しかし、これは私にそれを理解する素養がないことがいけないのであり、それをとても残念に思った。
そして、今回、吉本興業以外の事務所からただ1組だけファイナルに進出したトム・ブラウンである。なぜか最低でも1組は吉本興業の他の事務所からファイナルに進出させなければいけないという空気がなんとなくあって、今年などは全組が吉本興業のコンビでも良いのではないかとも思ったのだが、事務所内に留まったコンテストにしないためにもこれは必要なのだろう。トム・ブラウンのネタは昨年の予選の動画を観た時から強く印象に残っていて、おそらくファイナル進出はないだろうがなんだかクセになるな、とは思っていた。それが準決勝まで進出するに至り、吉本興業に所属していないコンビから1組選ぶとするならば十分に可能性があるのではないかと思いはじめた。そして、内心では静かに応援してもいた。そして、ファイナル進出となったわけだが、その後に調べて北海道出身と知り、さらに応援したいと思った。そして、まったくブレることもなく、あのいつものスタイルのネタを披露し、おそらくかなりの爪跡を残したのではないかと思われる。
この時点で、残されていたのは霜降り明星と和牛だけで、先に霜降り明星が選ばれ、高評価でいきなり1位、最終決戦進出を決めた。言うなれば霜降り明星については、粗品が20歳で童貞のピン芸人として笑い飯のラジオに出演したり、「オールザッツ漫才」で優勝していた頃に天才が現れたと思い、おそらく何年後かにはブレイクするのだろうと思っていたところ、漫才コンビを結成し、しばらくはピンの方がおもしろいというようなことを言われていたような気がする。その後、相方のせいやがどんどんおもしろくなって、昨年の「オールザッツ漫才」では最も印象に残っている。私も大笑いしたし、なぜかその後に妻もハマり、「スプーンに映った小栗旬」というフレーズに納得しながらおもしろがったりもしていた。スター性もあり、吉本興業としても本格的に売り出したいところであろう。
ネタ中のカメラワークにどこか恣意的なものを感じたりもしたのだが、おそらくまったくの気のせいだ。過去の「M-1グランプリ」において、よく吉本興業に所属する芸人以外のファンが陰謀論的なことを言っていたろしても、私はまったく理解も共感もできなかったのだが、おそらくこういうことだったのか、となんとなく思ったりもした。そして、ジャルジャルを超える高得点で、一気に1位になり、最終決戦進出である。これはおそらく新感覚のお笑いであり、準決勝でもものすごくウケていたというし、決勝大会でも審査員がこれほどまでの高得点を付けているのだから、おそらく間違いないのだろう。私は霜降り明星を好きではあるのだが、この漫才のネタにはショートコントを継ぎ接ぎしたような印象を受け、確かにおもしろいし好きなのだが、漫才の大会において、たとえばジャルジャルとかかまいたちとかスーパーマラドーナとかよりも評価されるということがまったく理解できず、しかし、これはおそらく私にその素養が欠如しているだけであり、それはとても残念なことである。
和牛のネタはどこかダークな印象で、いまひとつ好きではないかもしれないと思ったのだが、その構成には驚かされ、最終的にはとても楽しむことができた。それで、個人的にもジャルジャル、かまいたちに続く高得点となったのだが、この時点でミキや霜降り明星の評価が審査員とかけ離れすぎていて、もう私は「M-1グランプリ」を楽しむにはおそらく感覚が古くなってしまったのだ、その事実を受け入れなければいけない、などと思いつつも、やはり純粋にネタ番組として楽しもうとも思っていたのであった。
最終決戦は霜降り明星、和牛、ジャルジャルで、3組のネタを観た時点で、和牛のネタはすごくおもしろくて好きだったし、一番というか、現在の「M-1グランプリ」を楽しむにはおそらく感覚が古すぎるであろう私が唯一、漫才の大会でのチャンピオンに相応しいと思えるもので、さすがにこれは和牛しかありえないだろうと思っていたのだが、松本人志、上沼恵美子、富澤たけし以外の審査員が全員、霜降り明星に入れ、結果的にチャンピオンとなった。昨年がラストイヤーで苦労の末にグランプリを勝ち取ったとろサーモンで、今年がニュースターのオーラを感じさせる霜降り明星というのは、バランス的にもなんとなく良いような気がした。
オーソドックスな漫才よりも新しいお笑いを評価するタイプの審査員が評価していたならばまだ分かるのだが、オール巨人や中川礼二も霜降り明星に入れていたので、おそらく間違いないのだろう。
私は「M-1グランプリ2015」でブラックマヨネーズに敗退したことによって、笑い飯のことがもっと好きになったのだが、なんとなく和牛の好感度が上がったような気がする。もちろんお笑い界に新たなスターが生まれることは喜ばしいことであり、そもそも私は霜降り明星も好きなので、これはとてもお目出たいことである。そして、今後は和牛の優勝を楽しみにする方向にシフトしそうな気配を感じる。
結果はともあれ、これだけ集中的に漫才を楽しませてくれるコンテンツもなかなか無いので、これからも「M-1グランプリ」は大好きだし、来年も楽しみにしていくのだが、どうも個人的な好みとはズレてきているような気配も感じる。実は2015年にも同じようなことを感じてはいたのだが。