事務所から朝帰りすると新潟まで往復する新幹線のチケットと現地での宿泊券が届いていて、いよいよ本当に行ってしまうのだなという気分になっているのだが、実際のところいまだに実感がわいていない。それはそうとして、注文していた雑誌「昭和40年男」の2018年8月号とiPhoneケースも届いていたので、雑誌は読むことにしてiPhoneケースは本体に装着した。
今回、この雑誌を久しぶりに買おうと思ったのはライターの初見健一さんが1980年代のローリング・ストーンズなどについて書いていることと、巻頭特集が「昭和洋楽」で表紙がノーランズであることにより、興味をひかれたからである。結論からいうと、いつもの速読法を駆使したとはいえ、全ページをほぼ一気に読み終えるほど、なかなか面白かった。
今回の特集では昭和50年代あたりから終わりまでの洋楽のことを「昭和洋楽」と定義づけているようで、この雑誌がターゲットとしている年齢とはドンピシャではないものの、かなり近い私には結構楽しめた。音楽マニアとして趣味として真剣に洋楽を聴いていた人たちにとっては、おそらく内容が浅すぎて物足りないと感じたり、まったく読む価値がなかったと取られる可能性もあると思うのだが、私が当時、洋楽をはじめとするポップ・ミュージックを聴いていた理由はモテたいということ以外には1ミリもなかったため、かなりちょうどいいということがいえる。
もちろんインターネットなどはない時代なので、アメリカやイギリスなどと日本との現地の音楽についての情報格差は現在よりもずっと大きく、それだけに日本独自の洋楽ヒットなどが生まれやすい状況もあったように思える。表紙にノーランズが起用されているのは象徴的であり、当時、この姉妹グループは本国よりも日本での方がずっと売れていた。シングル「ダンシング・シスター」はイギリスで最高3位だったが、日本では1位になっている。それも、その以前からアラベスクなどの女性グループが日本で独自に売れていたことから、キャンディー・ポップなる新たなサブジャンルをつくり出し、その頂点としてこのグループを売り出そうという周到な計画があったらしい。
クイーンやチープ・トリックなどが日本から火がついたというのもよく聞く話だが、その辺りの事情についても言及されている。「ミュージック・ライフ」という雑誌を私は一度も買ったことがなかったのだが、この雑誌と東郷かおる子編集長が日本における洋楽の普及に大きな影響をあたえたことはなんとなく知っていた。今回、インタビューを読んでかなり面白かったのと、永遠のアイドルがダリル・ホールとロバート・パーマーというのが意外でもあり、ひじょうに好ましくも思えた。「ミュージック・ライフ」の雑誌は一度も買ったことがなかったが、1981年のダイアリー的なものは買っていて、はじめのうちはぎっしりと日記的なものを書いていたことを思い出した。
1980年代の洋楽を振り返った書籍や雑誌の特集などはいろいろあると思うのだが、この特集ではそれらでは無視されがちな当時、リアルタイムであったからこそ覚えているのだが、わりとくだらないと見なされがちなことについていろいろとふれられているのが良かった。しかし、先ほどもなんとなく書いたように、これは当時、流行風俗の1つとして流通していた洋楽についての特集でであり、音楽的にマニアックなことなどはほとんど書かれていない。そういうのは、音楽専門誌がやっておけばいいのである。
個人的にはオリヴィア・ニュートン・ジョン「フィジカル」の衝撃、日本でしか有名ではなかった「サイキック・マジック」のG.I.オレンジ、江口寿史、CM、プロレス入場曲、LPレコードの帯、日本独自のシングル盤ジャケット、デートアイテムとしての洋楽、大貫憲章、産業ロックなどについての記事が特に面白かった。
江口寿史が当時からテクノ・ポップやニュー・ウェイヴのバンドのことを漫画の中で書いていて、岡村靖幸だとか「渋谷系」だとかを経て、現在はlyrical schoolのアルバムジャケットだとかNegiccoのTシャツのイラストを描いているというのが実に感慨深い。
一発屋について取り上げた記事については、これは全然一発屋ではないだろうと思われるアーティストも多数取り上げられていたのだが、あくまで日本における流行風俗としての洋楽として見るならばそうなのかな、という広い心で見ることにした。
そして、今回、この号を買う大きな動機の1つでもあった初見健一さんによるローリング・ストーンズについての記事である。私は初めて買ったローリング・ストーンズのアルバムが「刺青の男」で、最初はピンとこなかったのだが段々好きになって、それから1960年代や1970年代のベスト・アルバムを買い、めちゃくちゃ良いじゃないかとどんどん夢中になっていったタイプである。初見健一さんもほぼ同世代なので、概ねそんな感じなのではないかと思うのだが、過去のローリング・ストーンズを好きになりすぎたあまり、リアルタイムにおけるバンドの現状を苦々しく思うという、そのような感じになっていたようなのだ。
タイトルを見て、なんとなく否定的なことを書かれているのだろうなとは思っていたのだが、その内容は想像していた以上のものであった。1983年にリリースされたシングル「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」はヒップホップの要素を大胆に取り入れた新機軸ともいえる作品で、これを聴いて私はめちゃくちゃカッコいいじゃないかと旭川でかなり盛り上がっていたし、その感想はいまも変わらない。というか、むしろいまの方が好きになっているぐらいである。ところが、同時期に恵比寿でこの曲を聴いていた初見健一さんはひじょうに暗澹たる気分になっていたのだという。これは過去のロックンロール・バンドとしてのローリング・ストーンズへの思い入れの差だとは思うのだが、とても面白い。
あと、エア・サプライのアルバム・ジャケットが日本ではことごとく爽やかなイメージのものに差し替えられていたことや、シンディ・ローパーの「ハイスクールはダンステリア」という邦題がいつの間にかなくなっていたのは、じつはアーティスト本人の希望によるものだった、という件なども楽しく読むことができた。
この特集以外にも面白い記事が多く、中学生テクノバンドとして話題を呼んでいたコスミック・インベンション、ウルトラマンタロウ、仙台~苫小牧フェリーの旅、ビックリマンシール(この記事も初見健一さんが書かれている)、ロッキー、カラオケ、アメリカ横断ウルトラクイズ、テリー・ファンク、トミカワールドシリーズ、大石大二郎、ピーター・バラカンなどについての記事が、個人的には特に面白かった。
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