WHY@DOLLのことやごく個人的な昔の思い出について。 | …

i am so disapointed.

先日、TS PLAYなるアプリケーションで「TS ONE UNITED~ほわどるMUSICシチュエーション」という番組をを聴きながら、ツイッターのタイムラインをスクロールしていた。番組の1曲目にはこの番組のパーソナリティーである北海道札幌出身のオーガニックガールズユニット、WHY@DOLLの「Promises, Promises」がかかっていた。

 

この曲は今年の1月21日にリリースされた最新シングル「Show Me Your Smile」のカップリング曲であり、作詞をメンバーの青木千春、浦谷はるな、作曲を吉田哲人さんが手がけている。シングル表題曲の「Show Me Your Smile」はジャズの要素を取り入れた極上のポップソングであり、歌詞の内容もキャッチーでありながら、なかなか深いものがある。この曲については好きすぎて書きはじめると長くなるし、もうすでにこのブログでも書いていたような気もする。作詞・作曲・編曲は中塚武さんであり、音楽性には定評があるこのユニットにとって新境地であると同時に、最新型の日本のポップ・ミュージックとしても、ひじょうに魅力的だと思うのである。もっと幅広い層に届いてしかるべきだと常々思っているのだが、最近はろくにファンらしい行動も取れていないのでいかんともしがたい。

 

それはそうとして、「Promises, Promises」は表題曲とはまた異なったタイプの曲で、1980年代後半に流行したユーロビートを思わせる曲調、歌詞の裏テーマはバレンタインデーであり、ときめく恋の気分がリアルかつヴィヴィッドに描写されている。この曲のパフォーマンスを私は先日、約2ヶ月ぶりに行ったライブではじめて観ることができたのだが、たまらなくキュートで最高だったのである。そしてこの日、番組で聴いて、なんだか聴く度に好きになっていくな、と改めて思ったのであった。

 

ブログでもSNSでもないウェブサービス、noteというのがあって、それでフミヤマウチさんという方が先月のはじめから「渋谷系洋盤ディスクガイド100」というのを書かれている。ピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギター、オリジナル・ラヴなどで語られがちないわゆる「渋谷系」だが、その渦中にいた音楽ファンはおそらく主に洋楽を聴いていたのではないだろうか。同じような洋楽を聴いている人が日本語でポップスをやっているから聴きはじめたという私のような者や、いわゆる「渋谷系」アーティストをまず好きになって、それから彼らが影響を受けたと思われる洋楽を探して聴いていった人たちなど、いろいろだったのではないかと思う。

 

第1回で紹介されていたのがセイント・エティエンヌ「フォックスベース・アルファ」だったこと、そして、そのコンパクトかつエッセンシャルな文章が「しけこんだ女の子の部屋にはほぼこのLPが飾られていた」で締められていた時点で、これはぜひ毎回刮目して読むに値するものに違いないと確信したのであった。以降、すべての更新を追えてはいるのだが、さすがに当事者らしい素敵なセレクションで、毎回唸らされるのであった。いわゆる歴代名盤リスト的なものからは漏れてしまうが、確かにあの時代のある層には支持されていた数々のアルバム、雑誌「remix」で取り上げられ、六本木ウェイヴの3階において手書きPOP付きで陳列されていたようなタイプのやつが次々と出てくる。私においては、かつて持っていたのだが手放してしまったものや、買わなかったがいまとなってはちゃんと聴いてみたいというものも少なくはなく、Amazonマーケットプレイスでも安価なものが多いため、いくつか注文しては次々とポストに届いていて楽しい。

 

そして、イギリスのインディー・レーベル、エルから1988年にリリースされた女性2人組、バッド・ドリーム・ファンシー・ドレスのアルバム「クワイア・ボーイズ・ガス」が取り上げられたようで、そのことがタイムラインに表示された。しかも、引用リツイートしたのは吉田哲人さんで、「最高のアルバム」というコメントが付いている。そうか、哲人さんもバッド・ドリーム・ファンシー・ドレスが好きなのかと軽く感動しながら、その後もWHY@DOLLのラジオを聴いていた。

 

番組が終ってから、最近すごく気に入って毎日聴いているくるりの新曲「この線は水平線」を、また聴いた。「脳みそは関係ない 当たり前の愛を貫けよ」という部分がとても好きなのだが、この日に聴いていて、「君の前では笑顔でいたいの」という歌詞があることにハッとした。もちろん音楽性や視点はまったく異なるのだが、これはWHY@DOLL「Show Me Your Smile」における「どこにいても見せてくれる 魔法の笑顔」とも共通するテーマなのではないかと思ったのである。

 

「Show Me Your Smile」は一般的なラブソングとしても解釈が可能なのだが、いつかのインタビューでメンバーのはーちゃんこと浦谷はるなさんも言っていたように、アイドルとファンとの関係性について歌われているとも取ることができる。そして、浦谷はるなさんは私が昨年行った渋谷Gladでのライブの握手会において、私にも「これは本当にみんなのことだと思う」というようなことを言っていたのである。

 

そして、ファンがアイドルに対して思う気持ち、これこそが「脳みそは関係ない 当たり前の愛を貫けよ」に近いものなのかもしれない。おそらく、くるりのこの曲はそのような関係性を想定してはいないとは思うのだが、優れた作品とは作者の意図をも超えたところで意味や価値を持つものなのであろう。

 

そのようなことを曖昧にツイートしたところ、あるフォロワーさんから反応があった。彼女とはじつは私がツイッターにアカウントを開設する以前からの付き合いであり、元々は私がかつてSo-netブログでやっていた、主にイギリスのインディー音楽について書いていたブログにコメントをくださっていたのである。アークティック・モンキーズがデビュー・アルバムを出した頃だから、もう12年以上も前のことになる。それから、いろいろな話題についてやり取りをしたり、実際にお会いしたりもしていたのだが、ある時期から私がアイドルポップスのようなものにも執心しはじめた件については、暖かく見守っていただきながらも、興味は示していないようであった。

 

しかし、この時に反応があったので、とりあえずくるり「この線は水平線」とWHY@DOLL「Show Me Your Smile」のYouTubeへのリンクを返信した。すると、意外な反応が返ってきたのである。

 

「アイドルのコの曲ヤバいw なんか渋谷系みたい(かなり大雑把)で懐かしい感じがする... 声も歌い方もCuteだし 気になる...←今更」

 

私などは最近はろくにライブやイベントにすら行けていないのだが、もちろんWHY@DOLLのことが好きすぎて、それゆえに客観的な判断ができなくなっているのかもしれないな、とは少なからず思っていたのだが、それでもその音楽性はもっと高く評価されて然るべきだとは思っているのである。そのような状況で、WHY@DOLLについてほぼ基礎知識のない彼女からのこの反応は、ひじょうにうれしいものであった。

 

その夜、「渋谷系洋盤ディスクガイド100」でバッド・ドリーム・ファンシー・ドレスのアルバムが取り上げられ、それをWHY@DOLLの曲を書いている吉田哲人さんが「最高のアルバム」とコメントしていたこともあり、そもそも大好きだったエル・レーベルの音楽を聴きまくるプチ祭りが勃発した。

 

エル・レーベルは1980年代にマイク・オールウェイによって設立されたレコード・レーベルであり、一部の音楽ファンから絶大な支持を受けた。しかし、その一部というのが本当に一部であったため、本国のイギリスにおいてさえ大きなヒットにはなっていない。日本の英国インディー好きの音楽ファンからは支持を得ていて、その代表格のようなフリッパーズ・ギターが後に「渋谷系」と呼ばれるムーブメントになる程の存在になり、そのセンスを好ましく感じた当時の女子中高生たちがこぞって渋谷のゼストなどで、このレーベルからリリースされたレコードやCDを買ったのであろう。当時、そのうちの何名かのことは個人的に知ってはいたので、何となくリアリティーはあるのだ。

 

フリッパーズ・ギターのことは1980年代の終わりぐらいに、大学で音楽好きの友人が話題にしてはいた。日本のバンドだが英語でイギリスのインディー・ポップのようなものをやっているということだったが、それならば本国のものを聴いていればいいだろうと、私はあまり関心を示してはいなかった。というか、当時、すでにギター・ポップのようなものはあまり聴いていなくて、ヒップホップやアシッドハウスのレコードばかり買っていたような気がする。つまり、当時からミーハーだったわけだ。

 

1990年にチューイングガムか何かのCMにフリッパーズ・ギターの「フレンズ・アゲイン」が使われ、この曲も英語詞ではあったのだが、何だか新しいポップスを感じたので、シングルCDを買った。それから、フリッパーズ・ギターにとって初の日本語詞によるシングル「恋とマシンガン」がリリースされた。これもほぼオートマチックに購入したのだが、その内容に度肝を抜かれた。当時、私はイギリスのインディー・ポップが最も好きだと思っていて、それはイギリスだからこそ成立しうるアートフォームであり、しかも1987年のザ・スミス解散以降は特に時代の主流ではないし、今後もなる可能性は無いなと思っていた。ところが、フリッパーズ・ギターはほぼそれに近い音楽性、というかより親近感を感じられるようなアプローチで、しかもそれを日本語詞においてやり遂げてしまった。しかも、メンバーの年齢が私よりも年下だというのがさらに衝撃的であった。

 

このシングルだけならば偶然だったかもしれないのだが、この年の6月にリリースされたアルバム「カメラ・トーク」がさらに素晴らしく、これはいまだに私の人生における心の歴代ベスト・アルバム第2位である(1位は岡村靖幸「靖幸」)。

 

フリッパーズ・ギターは1980年のイギリスのインディー・ポップ、特にネオ・アコースティックと呼ばれたアズテック・カメラやオレンジ・ジュースから強い影響を受けているといわれていた。アズテック・カメラのでビュー・アルバム「ハイ・ランド、ハード・レイン」は、私が旭川の公立高校生だった頃からよく聴いていたのだが、オレンジ・ジュースについては正直、あまり強い印象は持っていなかった。しかし、これを機に改めて聴いてみて、最高だと思ったのであった。

 

とはいえ、エヴリシング・バット・ザ・ガール「エデン」だとか、そのメンバーであるトレイシー・ソーン「遠い渚」、ベン・ワット「ノース・マリン・ドライブ」などは高校生の頃にリアルタイムで聴いていたため、当時、雑誌「Olive」を読んでアニエスベーのベレー帽やボーダーのシャツを着用し、ゼストの紫色のレコード袋を小脇に抱えているタイプのプロト「渋谷系」女子に対してはわりと親和性が高く、なかなか楽しい毎日ではあった。

 

1990年代のはじめに六本木のCDショップで契約社員として雇用していただいたのだが、短期のアルバイトとしてフリッパーズ・ギターだとかピチカート・ファイヴだとかを聴いているタイプの20歳の女子大生が入ってきた。彼女はとにかく遅刻が多く、仕事中に気になったCDの試聴ばかりしていたため、先輩の特に女性スタッフや社員からは目をつけられ、間もなくほぼ解雇に近い退職となった。しかし、当時の私は彼女に対し、かなり好印象を抱いていたというか、正直に告白してしまうならば、一時的な強迫観念の対象になっていたといっても過言ではない。

 

ただ単に自分の欲望に忠実で、好奇心が強いだけの彼女を私はかなり好ましく思っていたのだが、職場においてはあからさまに疎まれているような雰囲気があった。私はそれを彼女の魅力に対する嫉妬以外の何物でもないと思い、世界と彼女との戦いになった時には必ず彼女の味方になろうと固く心に決めていた。まだ20代の若気の至りだったので、これについては本当に許していただきたい。そんな訳で、休憩時間に職場の裏にあった喫茶店に誘った。カフェではなく喫茶店であり、ここはわりと重要である。知らんがな。

 

そこでおそらくいろいろな話をしたのだが、まったく何も覚えていない。なぜなら、当時の私にとって彼女はフリッパーズ・ギターの曲の歌詞に出てくるような、まったくもって幻想の女の子が具現化したような存在であったからである。

 

数日後、彼女は私に1本のカセットテープをくれた。ケースには黄色い紙に手書きの曲目表も入っていたのだが、それによるとタイトルは「Coffeeのお礼」らしい。もちろん、あの日のカフェならぬ喫茶店では私が全額を支払ったのだが、もちろん見返りを期待したわけではない。

 

そして、その選曲が最高だったのである。

 

フリッパーズ・ギターが影響を受けたであろうアズテック・カメラやスタイル・カウンシルを私が偶然にリアルタイムで聴いていたとしても、ただそれだけのことであり、よりディープでコアな音楽を、彼女は掘り下げて聴いていたようである。当時、京王線の仙川にあったゴスペルというハコでギター・ポップや映画サントラのDJもやっていたはずである。

 

私は好きなものに対してはひじょうに気持ち悪いほどの執着を持っているわけであり、そのカセットテープに入っていた手書きのメモを、あれから26年経ったいまも、大切にとってある。当時、WHY@DOLLのメンバーは、2人共まだ生れていないのである。

 

トラックリストは以下のとおりである。

 

{BFCE5274-21EF-49A6-A8C6-15DEA7631C0C}
追記)画像では切れているA面10曲目は「Friends/I'll Never See You」
 
というか、そのものズバリの画像なわけだが、修正液を使っているあたりとか、じつに微笑ましい。完全な余談だが、この画像から切れているというか敢えて切っている部分には、「飲む機会があったらぜひ誘ってください。よろしく!」というメッセージと共に彼女の電話番号が書かれている訳だが、もちろん電話してみたところ、適当な理由をつけて断られるという残念な結果があったことも記録しておきたい。
 
誰が興味あんねん。
 
因みに、※印が付いている曲には「チープでスカスカ でもpretty♥」というコメントが付けられている。いまどこでどうしているのだろうか。絶対にしあわせになっていてほしい。
 
A面7曲目に収録されているウッド・ビー・グッズの「カメラ・ラヴズ・ミー」という曲などは最高で、キュートな女の子ボーカルが「カメラは私を愛している」と歌うのだが、そのカメラの裏側には「あなた」がいるということなのである。
 
私はアイドルの現場とかにはほとんど行かないのだが、昨年の夏以降にはWHY@DOLLが好きになりすぎたので、私にしては結構な頻度で行ったりもした。CDやグッズを買うと一緒にチェキが撮れたりもするのだが、自分自身は入らずにメンバーだけを撮影することもできる。私などはただのミーハーなのでメンバーと一緒に撮ってもらうのだが、メンバーだけのことを写真に撮り、それをツイッターなどに上げてユニットの広報活動に使おうという方々も少なからずいらっしゃり、本当に頭が下がる思いである。
 
このようなファンの存在というのは本当に素晴らしくも美しいと思うわけであり、ぜひともいずれ「ほわどるの『カメラ・ラヴズ・ミー』」とでもいえる作品ができたとするならば、それは素敵なことではないかと思うのだ。知らんがな。
 
WHY@DOLLの音楽性はディスコやファンク、シティ・ポップなどの影響を受けたものでああるが、最近ではそこからまた幅を広げているようでもある。しかし、おそらくインディー・ポップとは親和性が低いと思われる。
 
しかし、私が考えるインディー・ポップの良さとは、脆弱性やしなやかさの肯定であり、これはおそらくたとえばWHY@DOLLの存在感とも合っているのではないかという気がした。
 
翌朝、ツイッターの通知をチェックすると、吉田哲人さんから「僕がほわどるに対してなんとなく持ってる印象がBad Dream Fancy DressやWould-Be Goods」という内容のリプライが届いていて、やたらとうれしくなってしまった。
 

 

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