「トレインスポッティング」の続編が制作されているという話はかなり以前から知っていたのだが、公開されたとしてもおそらく劇場に観に行ったりはしないのだろうな、という気はなんとなくしていた。そして、やはりいつの間にか公開され、いつの間にか終わっていた。
年末にNMEが年間ベスト・アルバムやベスト・トラックと同じように、ベスト・フィルムズも発表していた。「トレインスポッティング」の続編こと「T2 トレインスポッティング」は9位に選ばれていた。「ワンダー・ウーマン」と「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」との間である。
そのうち観てみようとは思っていたのだが、すでにDVDやブルーレイも発売され、Amazonビデオでレンタル視聴もできるようになっていた。年末年始はなかなか忙しく、その時間も取れなかったのだが、予告編を観ようとしたら誤ってレンタル購入してしまったようで、それならば仕方がないので観てみることにした。
「トレインスポッティング」が公開されたのは、いまから20年以上も前の1996年のことである。当時、イギリスのインディー系ギター・バンドがヒット・チャートの上位に入りまくるような状況があり、それは日本の音楽ファンの一部にも影響をあたえていた。そのムーヴメントはブリットポップなどと呼ばれ、それはポピュラー音楽のみならず、イギリス発のあらゆるポップ文化を総称するようなものになっていた。
スコットランドの若者の生活を描いた「トレインスポッティング」も、やはりその流れにのって大ヒットしたようなところがある。サウンドトラックには、ブラー、パルプ、プライマル・スクリーム、エラスティカといった、ブリットポップのバンドによる曲も収録されていた。
そこで描かれているのは、クスリ漬けのどうしようもない若者の生活なわけだが、当時、それがたまらなくクールに思えたのだった。
当時、私はイギリスの雑誌を何冊も定期購読していたので、当然、この「トレインスポッティング」のことは知っていて、日本で公開される前からサウンドトラックのCDを買ったり、パルコクアトロで買ったTシャツを着たりしていた。
お笑いコンビのくりぃむしちゅーが当時は海砂利水魚という名前で活動していたが、深夜のテレビ番組でサンプラーを用いた新鮮な漫才を披露していて、その時にメンバーのどちらかが「トレインスポッティング」のTシャツを着ていたのを覚えている。
夏にはサウンドトラックに収録されていたアンダーワールド「ボーン・スリッピー」が全英シングル・チャート最高2位の大ヒットを記録し、フジテレビで週末の深夜に放送されていた「BEAT UK」でもよく流れていた。
日本の劇場で公開されたのは11月30日で、その日は初回に並んで観たことを覚えている。渋谷のミニ・シアターで、調べてみたところ、シネマライズだったようだ。「トレインスポッティング」はある時期まで、同館の動員最高記録を保持していたらしいのだが、2001年公開の「アメリ」がそれを破ったということである。私はおそらくこの劇場で「アメリ」も観ているのだが、平日にもかかわらず満員で、次の回で観ることにしたはずである。
シネマライズは2010年に閉館したということなのだが、跡地はWWWというライブハウスになっているらしい。昨年末、WHY@DOLLのクリスマスライブを観るために渋谷CYCLONというライブハウスに行ったのだが、場所がよく分からず、このWWWの前まで来てしまったのだが、どうやらあそこがかつてのシネマライズだったということか。
「T2 トレインスポッティング」を観た感想だが、前作を観た同世代の観客たちが続編に求めるものをひじょうに高いレベルで叶えていたような気がする。
主人公たちを当時の役者たちが演じているのだが、生き様がまったくもってブレていないというか、筋が通っている。ゆえに、世間一般的な価値基準からすると、いまも昔もろくなものではないのである。この辺りにひじょうに共感を覚えた。そして、自分自身のスタイルに対する確信というよりは、そのようにしか生きられない諦念のようなものにも見えるのだが、じつは敢えて選んでそれをやっているというような清々しさ、そのようなものを感じた。
主人公たちも私も、確実に当時よりも死に近づいているわけだが、であればなおさらいつ死んでも悔いのないような生き様を選ぶわけであり、真に生きるとはすなわちそのようなことなのではないか、と思うのである。
おそらく前作を観ていないような人はまったくターゲットとしていないのではないかというような清々しさが感じられ、ゆえに前作との二重映し的な箇所があったり、前作のオープニング、イギー・ポップ「ラスト・フォー・ライフ」が流れる中で、ユアン・マクレガー演じるマーク・レントンが逃げながら発する「人生を選べ」云々の台詞がひじょうに印象深いのだが、そのアップデート版のようなものが意外にも思いがけず出てきたり、ひじょうに感慨深いものがある。
もちろん選びに選んだきっかけがこれであり、当然、悔いがないとしても、現実的にひじょうにクソであることには違いがない。
だからといって死にたいかといえばまったくそんなことはなく、寧ろ、思う存分生きてやろうとか思うばかりである。
この生命力はどこから来るのか。七面倒くさいことを考える以前に、シンプルに生きることへの執着、それが支えているのであろう。
生についての肯定感があるということだ。
「人生を選べ」とは、極限状態であった場合においては、「生きる」ことを選ぶという程度のことに他ならず、じつはそれはわれわれが思う以上に、とても重要なことではないかと思うのである。
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