永遠みたいに不確かな言葉 今、信じたい。 | …

i am so disappointed.

真夜中にWHY@DOLL「Dreamin’ Night」のDanceMovieが公開された。翌朝、わりと早い時刻に起床する必要があった私は、すでに毛布に潜り込んでいた。iPhoneに表示されたツイッターの通知をタップすると、YouTubeの静止画像を見ることができた。背景となっているのはガラス越しの夜景、WHY@DOLLのはーちゃん、ちはるんはそれぞれ白と水色の衣装を着ている。曲のイメージにぴったりな都会の夜を感じさせてくれるロケーションだが、WHY@DOLLのたたずまいにはどこか透明感がある。

 
もちろんすぐにタップし、YouTubeで動画を視聴した。
 
コンテンポラリーなR&Bに影響を受けたようなトラックは、アイドルポップスとしてはかなり大人っぽい雰囲気を持っているのだが、WHY@DOLL自身がこのタイプの曲を好んでいるということもあり、なかなかのハマりようである。かと言って大人っぽくなりすぎてはいないというか、本来の持ち味であるピュアな存在感が揺るぎないため、結果的に絶妙にちょうどいい塩梅になっているような気がする。
 
「WHY@DOLL」は様々なジャンルのポップスから影響を受け、それを現在のアイドルポップスとして昇華した素晴らしい作品だと思うのだが、懐かしさと新しさとのバランスも絶妙だという気がする。特にCICADAの及川創介が作詞作曲編曲した「Dreamin' Night」「マホウノカガミ」には新しさを感じる。
 
CICADAは若林ともがトリップホップのような無機質なサウンドでありながら、ボーカルには温かみがあるようなバンドを意図して結成されたようだ。マッシヴ・アタックなどに影響を受けているようである。
 
及川創介はCICADAにおいてキーボードを担当し、楽曲の制作も行っている。「WHY@DOLL」リリース時にネットムーバーというウェブメディアでWHY@DOLLと対談を行っていて、そこではドラマー出身なので曲はドラムのパートからつくっていくという話もしている。「Dreamin' Night」や「マホウノカガミ」のユニークさというのは、そういうところからも来ているのかもしれない。
 
また、アイドル事情にはあまり詳しくないということだが、今回、WHY@DOLLにはじめて楽曲を提供するにあたり、アイドルの曲が持つ役目については意識していたようである。それは、次のような発言にあらわれているように思える。
 
「ほわどるの場合は会場で自分に歌ってもらってるような一体感がクールに出せるほうがいいな、と。コール&レスポンス的なものを作るのはあまり得意じゃないので、言葉でクールに距離が詰まるものにしたいと思って書きましたね」
 
「Dreamin' Night」はそれまでのWHY@DOLLには無かったタイプのであり、また、ライブパフォーマンスにおいてはじめてマイクスタンドを用いたということでも、きわめてユニークな位置づけの曲のようである。そんなことも知らなかった私がはじめてWHY@DOLLをライブで観たのが、この曲であった。ヴィレッジヴァンガード渋谷本店で行われたリリースイベントのリハーサルでのことである。
 
今回のDanceMovieを観ていると、その時の気分がよみがえってくるようである。音源は確かに気に入っていたのだが、パフォーマンスにそれほど期待はしていなかった。しかし、リハーサルの「Dreamin' Night」からその美しさは感じられたし、その印象はその後、より多くのパフォーマンスを観ていく中で、明確かつ強固なものになっていった。
 
当初、私はこの曲を都市生活の孤独を歌ったようなものだと誤読していたのだが、実際には恋人と楽しい時間を過ごし、1人になった夜にまだ眠りたくはなく、しあわせな気分に浸っているというようなものであろう。
 
はーちゃんは「Dreamin' Night」のことを、「WHY@DOLL」における推し曲であると公言している。そもそも以前から「夜っぽい曲」が好きだとは言っていたようで、「Dreamin' Night」はそれにぴったりハマったということであろう。ライブ後の特典会の終わりに言う「いい夢見ろよ」とも、ゆるく繋がっているような気がする。
 
とはいえ、このようなしあわせな時間というのは当たり前のようにあるものではなく、永遠に続くようなものでもないという認識が、この曲に深みと切なさをあたえている。
 
「朝焼けが今日も 世界を彩る奇跡 永遠みたいに不確かな言葉 今 信じたい・・・」
 
2016年1月21日、ちはるんは生誕公演において、自らが作詞をしたソロ曲を初披露した。「ずっと片思いしてた人と少しずつ距離が深まり、冬のある日に恋が実って一緒に春を迎えるという季節の情景と共に描かれている恋愛ソング」で、そのタイトルは「Forever」である。
 
少女コミックのようなシチュエーション、ストーリーはちはるんのパブリックイメージを裏切ることがなく、じつに素晴らしい。
 
青春を謳歌する若者は美しく、切ない。私が大人だからそう思うのだろう。その時間はやがて終わるのだが、彼らにはその認識がない。頭では理解しているのであろうが、いまは楽しむことに忙しすぎる。そして、その時間がまるで永遠に続くのではないかというような気がしている。しかし、間違いなくそれは終わる。悲しいが、それが真実である。
 
アイドルに求められるものとは、そのような青春の象徴だろうか。だとすれば、やっと実った片思いの恋に永遠を夢見る「Forever」は、アイドルポップスとしてきわめて正しいといえるのかもしれない。
 
この曲はいまも音源化されていなく、ライブやそれを収録したDVDでしか聴くことができない。それでも、ファンの間ではすこぶる人気が高いのである。
 
9月12日のレギュラー公演で発表されたリクエストアワードにおいては、「WHY@DOLL」収録の新曲が多数ある中、5位という高順位にランクインしていた。
 
一方、ライブやイベントでもセットリストに選ばれる頻度が高く、メンバーが推し曲であることを公言していたにもかかわらず、「Dreamin' Night」はトップ10圏外という結果であった。
 
「永遠」は「不確かな言葉」ではあるが、「今、信じたい」と歌われる「Dreamin' Night」は、こういった意味でもやはりとても新しいのである。
 
過去のインタビューを読んでいると、WHY@DOLLはそれ自体がジャンルといわれるようになりたいなどという、本当の意味での破天荒な発言を目にしたりするのだが、「ティー・フォー・スリー」におけるNegiccoと同様に、アイドルなのかアーティストなのかよく分からないというような意見もあるのだろうが、これはおそらくポップスとして新しく正しいのではないかという気がしている。
 
今後、WHY@DOLLがどのような音楽性でこの先のキャリアを重ねていくのかは未知数であるが、いずれにせよ、「Dreamin' Night」はその上でひじょうに重要な曲になるのではないかという気がしてならない。
 
そして、従来のファンのみならず、より広くこの曲が聴かれるためにも、この動画が撮影、公開された意義はひじょうに大きいように思える。
 

 

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