WHY@DOLLの2ndアルバム「WHY@DOLL」は、ポップ音楽の楽しさやひらめきに溢れた素晴らしい作品である。様々なジャンルの影響を受けた曲はバラエティーにとんでいて粒ぞろいだが、それでいて統一感もある。
ダンス・ミュージックやシティ・ポップの影響を受けた音楽性には、前作辺りから定評はあったようだが、今作においてはさらにその幅を広げているように思える。これまでには無かったタイプの曲にもいくつかチャレンジしているが、その1つが7曲目に収録された「Dreamin' Night」であろう。
都会的で大人っぽい、夜のイメージの曲である。作詞・作曲はバンド、CICADAのキーボーディスト、及川創介である。CICADAはメンバーの若林ともが「トリップ・ホップのようにバンド・サウンドは無機質で、ヴォーカルは温かみのあるバンド」を目指して結成したのだという。
私がWHY@DOLLの音楽に持つイメージというのは、サウンドやメロディーや歌詞は都会的だが、ボーカルに人間味が感じられる、アーバン・オーガニックとでもいうようなものである。
私がWHY@DOLLのパフォーマンスをはじめて目撃したのは8月7日、ヴィレッジヴァンガード渋谷本店にて行われたリリースイベントにおいてであった。イベント開始に先立ち、リハーサルのためにWHY@DOLLの2人がステージにあらわれた。私がこのイベントに来ようと思った理由は、少し前にアルバムを聴いてかなり気に入ったのと、たまたま行ける時間と場所だったからである。
メンバーの名前も覚えてはいなかったし、アルバムは気に入ったものの、果たしてどのようなパフォーマンスをするのか、まったく予想していなかった。良くて音源の再現以上のものは期待していなかったと思う。
平日の夕方ということもあり、その時点で客はあまり集まってはいなかった。そのため、ステージからかなり近い場所で観ることができた。特に熱心なファンというわけでもない私のような者が、こんなに良い場所で観ていいものだろうか、とも思った。
曲は「Dreamin' Night」である。水色と黄色の衣装を着た2人はかなりしっかりした振り付けを踊りながら、このアイドルの曲としてはかなり都会的なメロディーを歌いこなす。これはかなりちゃんとしたエンターテインメントなのではないか、と私は思った。ますますこんなにも近くで観られていいものか、という気分になってきた。
それからもう1曲リハーサルがあって、一旦はけてから、本番では私が大好きな「菫アイオライト」からはじまり、「Dreamin' Night」を含む数曲がパフォーマンスされた。この時点で、私はWHY@DOLLのパフォーマンスにかなり魅了されていた。
その後、「Dreamin' Night」はWHY@DOLLがはじめてスタンドマイクを立ててパフォーマンスする曲なのだ、ということを知った。つまり、振り付けにかなり力が入れられている。
メンバーのはーちゃんこと浦谷はるなはアルバムの中で、この曲が最も気に入っているのだという。年下のメンバーでありながらクール・ビューティーなルックスとエモーショナルなダンスがひじょうに魅力的なはーちゃんは、この曲が持つ都会的で大人っぽいムードによく似合っている。
また、リーダーのちはるんこと青木千春のキャンディーボイスは特にポップでキャッチーな曲において、真価を発揮するようなところがあるが、このように大人っぽいサウンドとの化学反応は、またおもしろい効果をこの曲にもたらしているように思える。
WHY@DOLLは世間一般的にはアイドルデュオとして主に認知されていると思うのだが、純粋にポップアクトとしても魅力的なのではないかと思う。今後、どのような方向性で活動をしていくのかは定かではないが、メンバーの年齢相応に音楽性も変化していくのであれば、この方向性は究めていくべきであろう。
メンバーがこの路線をひじょうに気に入っているようであり、また、ファンやイベントなどで観たファン以外の方々にも、概ね好評なようである。
「WHY@DOLL」と同じT-Palette Recordsから昨年リリースされた優れたアイドルポップアルバムといえば、Negiccoの「ティー・フォー・スリー」がすぐに思い浮かぶ。
「Dreamin' Night」は好きな人のことを考えて、なかなか眠れない午前3時の部屋からはじまり、「baby おやすみ」というフレーズが印象的である。
「ティー・フォー・スリー」には、シングル「ねぇバーディア」のカップリング曲として既発であった「おやすみ」の別バージョンが収録されていて、この曲は午前2時の眠れないリビングからはじまる。
「ティー・フォー・スリー」はリリース当時、メンバーと同年代の大人の女性をターゲットとした作品だということで、ファンの間で話題になった。実際にその層に対して、十分に届いたかどうかは定かではないが、たとえばターゲットとされている層と性別も年齢も異なる私にとっても、ひじょうに優れた大人のアイドルポップアルバムとして、ひじょうに楽しめるものであった。
「Dreamin' Night」を聴いていると、WHY@DOLLもまたこういった層を狙ったタイプの曲と相性がいいような気がするし、いまのところそこはほぼ未開拓のマーケットだといってもいいのかもしれない。そういった意味で、「Dreamin' Night」はこの「WHY@DOLL」という優れたポップアルバムを構成する重要な1ピースであるだけではなく、WHY@DOLLという魅力溢れるポップアクトの未来への可能性を示唆する曲でもあるような気がする。
![]() | WHY@DOLL 2,800円 Amazon |
