The ピーズ「グレイテスト・ヒッツVol.1」「「グレイテスト・ヒッツVol.2」 | …

i am so disappointed.

少し前にApple MusicでThe ピーズの「グレイテスト・ヒッツVol.1」「グレイテスト・ヒッツVol.2」が聴けるようになっていたので、すぐにライブラリに追加していた。しかし、じっくり聴いてみるまでには少し時間がかかった。

 

The ピーズは1987年に結成された日本のロック・バンドで、一時期、活動を休止していたが、その後に再会し、今年で結成30週間を迎えた。

 

商業的には一度も大きくブレイクしたことは無いのだが、その与えた影響は大きく、ウルフルズのトータス松本、銀杏BOYZの峯田和伸、サンボマスターの山口隆らの他、お笑いコンビ、ピースのメンバーであり芥川賞作家でもある又吉直樹も、「生き方指南された」と公言している。

 

「グレイテスト・ヒッツVol.1」「グレイテスト・ヒッツVol.2」は1989年11月21日にリリースされた、The ピーズのデビュー・アルバムである。

 

初めてのアルバムなのにベスト・アルバムのようなタイトル、しかも2枚同時発売ということで、当時、少し話題になっていた。「ロッキング・オンJAPAN」で渋谷陽一が大絶賛していた記憶があり、オリコンではそれぞれ28位、30位とそこそこ売れたが、バンド・ブームの最中、お茶の間レベルにまで浸透したというほどではなかった。

 

当時、私はリアルタイムで同時代のポピュラー音楽を楽しんではいたが、ヒップホップや岡村靖幸など、サウンド的にも新しさを感じる音楽を好んで聴いていて、The ピーズのことは気にはなっていたものの、おそらく実際に聴いてはいなかったと思う。

 

前年にパブリック・エナミーの2枚目のアルバムがリリースされ、この年にはデ・ラ・ソウルの「3フィート・アンド・ライジング」、日本ではいとうせいこう「MESS/AGE」といったヒップホップの名盤が生まれ、7月13日に、私はおそらく渋谷ロフトのウェイヴで岡村靖幸「靖幸」のCDを買い、山口県宇部市では道重さゆみが誕生していた。

 

音楽の素晴らしだとサウンドの新しさとは必ずしも関係がないと私が認識するのは、それから2年後ぐらいのことであった。

 

The ピーズの音楽をおそらく私は当時、聴いたことはなかったのだが、「ロッキング・オンJAPAN」や「宝島」の記事の印象から、パンク・ロックに影響を受けたタイプのサウンドであると解釈していた。そして、それに間違いはなかった。

 

The ピーズの音楽性は、デビュー以降、どんどん内省的なものになっていき、そこが評価されているのだという。いま、The ピーズの音楽の多くはApple Musicで聴けるようになっているので、順番に聴いていこうと思う。

 

数年前に思うところがあって、The ピーズの「プッチーメリー 1989-1997 SELECTION SIDE A」というベスト・アルバムをTSUTAYAでレンタルして聴いたことがあった。とある事情でひじょうに精神的にやさぐれていた為、それによく似合う音楽を聴こうとしていたところ、じつはろくにちゃんと聴いたこともないくせに、The ピーズをセレクトしていたのである。

 

「日本酒を飲んでいる」という曲を、文字通り日本酒を飲みながら聴いていた。

 

「カラッポはラクだぜ ひとりっきりでもりあげて 酔っぱらってねる」

 

このどうしようもない状況について、ちゃんと歌詞にして歌われてレコーディングされているという事実には意味があると強く思い、軽く感謝すらしていた。というか、告白してしまうならば、号泣していたのである。

 

「グレイテスト・ヒッツVol.1」「グレイテスト・ヒッツVol.2」に収録された計32曲は、それに比べるともっと軽い。しかし、当時の日本の若者にとってとても切実な問題、将来への不安や性生活についてが、ポップでキャッチーで正統的ともいえるパンク・ロック・サウンドにのせて歌われている。もはや、普遍的な価値を持っているといってもいいのではないだろうか。

 

「あの娘に言わせりゃオイラはバイブレーター ほしー時そばでこいつが立てばオーライ」と歌われる「バイブレーター」において、コーラス部分で歌われる「Hey バイブレーター」には、性的実存の切なさや情けなさや尊さが凝縮されているようである。

 

つまり、少なくとも私が思う人間にとって最も重要な問題がゴキゲンなパンク・ロックにのせて、シリアスに歌われているということになるのである。

 

メンバーがほぼ私と同世代であるこのバンドが、現在、現役でバリバリやっているということは、大きな希望だといえる。