TOKYO BLACK HOLE | …

i am so disappointed.

大森靖子のメジャー移籍後2枚目のアルバム「TOKYO BLACK HOLE」が気がつくと出ていたので、聴いてみた。傑作である。これはすごい。

モーニング娘。'16では断然、佐藤優樹推しの私だが、ここ数ヶ月は何人かのファンの方々のブログによってのみ情報を収集しているといういかんともしがたい状態である。

昨日の「ハロ!ステ」で公開された新曲で佐藤優樹がかなり目立っているという情報があったので、視聴してみた。鞘師里保が卒業してから初めて観るパフォーマンスかもしれない。いままで何だか怖くて見られなかったのだが、佐藤優樹がわりと活躍しているのならばこれはちゃんと見ておきたいと思ってたので見た。

なんか表情がキリッとしていてすごく良かった。進化している。本当に良い顔になってきた。

小田さくらと一緒にセンターポジションの場面もある。小田さくらも私がわりと好きなメンバーというか、じつはかなり好きで、まず歌っている時や話している時の声が可愛くて最高なのだ。あと、時々、思春期をこじらせたような精神性が垣間見える時があり、そこもすごく良いと思うのだ。

とはいえ、私はいまやモーニング娘。'16の情報を何人かのファンの方々のブログから収集しているだけなので、最近どういった感じなのかについては、じつはよく知らない。

それはそうとして、私が小田さくらを良いと思う理由の1つは、大森靖子のファンだという点である。

以前、ブログで新曲をリピート再生しているとか、オフの日に映画「ワンダフルワールドエンド」を観に行ったなどと書かれていて、本当に好きなのだなと思った。あと、大森靖子がホームページで公開している自己紹介のようなものにインスパイアされた文章を発表していたこともあった。

私のような思春期にサブカルチャーをこじらせて、それを引きずったまま大人になったようなおっさんが大森靖子にハマるというのはあまりにも典型的でつまらなすぎるので、あまり大っぴらには言わないようにしている。

一方、小田さくらや女優の橋本愛のような女の子が大森靖子を支持しているというのはじつに素晴らしく、価値があることである。だから私はあまり大森靖子が好きだというようなことを言わないようにしているのだが、このアルバムがあまりにも素晴らしくて、これをスルーして他のことをブログに書くことがひじょうに困難なため、次に進むためにもとりあえず少しだけ書いておきたい。

一昨年、私は日本のポップ文化にひじょうに疎かったため、一部の音楽ファンにはすでに注目されていたであろう大森靖子のこともまったく知らなかった。初めて知ったのは、道重さゆみのラジオ番組「今夜もうさちゃんピース」においてであった。

ハロー!プロジェクト関連の曲以外はほとんどかからないこの番組で、大森靖子の「ミッドナイト清純異性交遊」が流れた。道重さゆみのことをすごく好きだと言ってくれている人がいるというような紹介で、この曲が流れた。道重さゆみのことが歌われているということであった。その時は歌詞がよく聴き取れず、ボーカルもよく知らないがニコニコ動画などで人気があるようなタイプのサブカル系な感じなのだろうかとか、かなり曖昧かつ適当な感想を持ったはずである。

その後、少し気になってホームページを見たりしたのだが、すると道重さゆみに対しての熱い思いがかなりの熱量で書かれていた。また、「ミッドナイト清純異性交遊」の歌詞に「ときわ公園 空飛ぶ自転車」などというコアなフレーズがあることなどから、俄然興味が沸いたわけである。

その時点での最新アルバムであった「絶対少女」をiTunesストアで全曲プレビューしてみたとこりろ、わりと良かったのですぐにダウンロード購入した。それから散歩をしながらiPhoneで聴いたりしていたのだが、次第にこれはじつはとてつもなく素晴らしい作品なのではないだろうかと思いはじめた。

とにかく歌詞が独特であり、これはすごく新しいと思った。そして、音楽性においても、まずメロディーがとても良いことに加えて、いろいろなジャンルからの影響が見られ、とにかく気に入って聴きまくったのであった。

この期に及んで日本の新しいアーティストに興奮できるという事実が単純に嬉しかったのだが、たとえば私がこれまでに聴いてきたアルバムの中でも時に大好きな岡村靖幸「靖幸」やフリパーズ・ギター「カメラ・トーク」に匹敵するぐらいに好きだと思えたのである。

それからメジャーデビューが決り、2014年12月3日には移籍してから初のアルバム「洗脳」がリリースされた。「絶対少女」が好きすぎただけに、やや意図的にポップになりすぎたかなというような印象もあったのだが、「イミテーションガール」や「ノスタルジックJ-pop」などは大好きであり、また、そのオリジナリティーはやはり唯一無比のものであった。

その後に出たシングルも聴いてはいたのだが、正直、以前ほど熱心には聴き込んでいなかった。今回のアルバムもとりあえずチェックしておこうぐらいの軽い気持ちで聴いたのだが、これがすごく良かったのである。

とにかくやはり歌詞とメロディーが抜群に良い。ポピュラー音楽なのでもちろんそこは大事なのだが、イメージや話題性ばかりが先行しているケースというのも少なくはないので、ここはしっかりと強調しておきたい。

大森靖子の場合、特にそのキャラクターだとか発言だとか、最近であれば出産といった話題もあり、ポップアイコン的に消費されがちなのだが、まず純粋にポピュラー音楽家としてとても優れていると思うのである。

それでいて、とてつもない情報量である。その中には、いわゆるJ-POPというフォーマットにおいては無視されがちで、しかし間違いなく現在という時代には存在する感情や事象がしっかりと掬い上げられて、しかもそれがポップでチャーミングでキャッチーに表現されているという、奇跡的なアルバムだと思うのだ。

先程も書いたように、私のような思春期にサブカルチャーをこじらせたまま大人になったようなおっさんがいまどき大森靖子にハマるのはいかにもといった感じであり、ひじょうにつまらないのではないかという気がする。表面的に新しそうなものに飛びつくことによって、何かを証明しようとしているような、醜くも軽薄な必死さとも取られかねない。

大森靖子が題材にしている内容の大部分は私とはあまり関係のないことのようであり、ゆえにそれほど切実なリアリティーを感じるわけでもない。それは私が苦みばしったナイスでメロウないい大人である以上、仕方がないことであり、寧ろかなり共感したとするならば、それはそれでかなり気持ちが悪いのではないだろうかという気がする。

だとしても、この表現が現在のこの国に存在するある面をとてもオリジナルな方法でリアルでヴィヴィッドに切り取った切実なものであることは何となく分かり、その強烈なエネルギーと卓越したクオリティーに圧倒されることならば可能である。

だから、いまの大森靖子の表現を同時代性も含めて受け止めることができる小田さくらなどに、ひじょうに嫉妬するわけである。

想像するしかないのだが、私が21歳の頃に岡村靖幸を聴いて感じたレベルの圧倒的なリアリティーが、そこにはあるのではないかと思えるのだ。

アルバム1曲目にしてタイトルトラックの「TOKYO BLACK HOLE」で歌われる「今すぐに消えちゃう全てを歌っていくのさ」という部分に、表現者としての真摯さを感じる。

私がこの曲の中で最も好きな歌詞は「街灯 はたらくおっさんで ぼくの世界がキラキラ 人が生きてるって ほら ちゃんと綺麗だったよね」という部分だが、これは聴く人それぞれによって、かなり異なるのではないだろうか。

たとえば「痛みがわかるよだなんて 弱い正義で今宵射精」などという歌詞をこんなにポップに歌えてしまうアーティストは、おそらく他にはいないであろう。

道重さゆみが私の人生にあたえてくれたものの偉大さははかり知れないが、この大森靖子との出会いも、間違いなくそのうちの大きな1つであろう。



TOKYO BLACK HOLE/大森靖子

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