松本伊代にとって14枚目となるこのシングルはこの年の3月5日に発売され、最高16位を記録した。
1981年10月21日に「センチメンタル・ジャーニー」でデビューした松本伊代だが、この頃はもうすでにアイドルとして旬という感じではなかった。
松本伊代は1981年にデビューしたが、いわゆる音楽賞レースの新人賞では1982年デビューの扱いであった。中森明菜、小泉今日子、堀ちえみ、石川秀美、早見優らと同じ、いわゆる花の82年組の1人ということになる。
中森明菜と小泉今日子はヒットチャートの上ではすでにトップクラスであり、堀ちえみ、石川秀美、早見優も新曲を出せばトップ10入りという状態であった。
松本伊代はデビュー曲の「センチメンタル・ジャーニー」は9位だったが、その後、トップ10入りしたのは「抱きしめたい」と「時に愛は」のみで、1984年リリースの「流れ星が好き」「シャイネスボーイ」はトップ20入りすらも逃していた。
この頃は戸板女子短期大学に通う女子大生アイドルであり、土曜深夜にフジテレビで放送されていた「オールナイトフジ」のMCにも起用されていた。
私が1980年代で最も好きなアイドルは松本伊代なのだが、それはとことん表層的な存在だったからである。当時、私はアイドルに内面などは一切求めていなかった。もちろん物語のようなものも必要ない。むしろコレステロールであるとすら思っていた。
その点、松本伊代は素晴らしかった。とにかく表層こそがすべてという感じであった。カレーのCMで「だってラッキョウが転がるんですもの」と言って笑い転げる松本伊代の表情にはどこかサディスティックなものがあり、ガラスを引っ掻く音を聞くことがいつしか快感に転じているようなタイプの刺激を得ていたのであろう。
また、「恋のバイオリズム」の不機嫌な感じ、同時期に出演していた生理用品のCMの感じなど、私の心のとても深い部分に何らかの影響を与えたはずである。
私は松本伊代が歌った曲もかなり好きなのだが、中でもお気に入りなのが、この「あなたに帰りたい」である。おそらくあまり賛同者はいないような気がする。なぜなら、他に松本伊代が歌った曲には優れたものが多いからである。
松本伊代の代表作はと問われれば、やはり「センチメンタル・ジャーニー」や「TVの国からキラキラ」をあげるであろう。しかし、なぜ「あなたに帰りたい」なのかというと、これがとことん表層的で意味がないように思え、それゆえにとてもカッコよく感じられるからである。
当時、「Romanticが止まらない」で注目されはじめたC-C-Bがコーラスで参加している。また、シシンセドラムなどの電子楽器が効果的に使われている。私は間奏部分のシンセサイザーのメロディーが特に大好きである。
この頃、私は大学受験に失敗していたわけだが、とりあえず春から東京に行くことは決っていて、そのような状況で最後に旭川のミュージックショップ国原で買ったレコードのうちの1枚が、この「あなたに帰りたい」であった。
ミュージックショップ国原が入っていた建物はいまも旭川に残っているのだが、すでにコンビニエンスストアのローソンになっている。有名ラーメン店の梅光軒はいまも地下で営業している。
先日、ついに旭川の西武百貨店が今年の9月で閉店してしまうことを知った。かつて道北で暮らしていた者にとって、旭川は大都会であり、それを象徴するのが駅前の西武百貨店であった。
日本で初めての歩行者天国である平和通買物公園には当時、この西武百貨店の他に長崎屋、丸井今井、マルカツ、まるせんなどのデパートがあったが、少しずつ減っていった。
数年前、西武百貨店が閉店するという話があったのだが、先に丸井今井の方が閉店することになったので、そのまま残ることになった。丸井今井だった建物はフィール旭川になったが、そこは多層階のジュンク堂書店が入るなど、西武百貨店とはあまり競合しない業態のようであった。
しかし、リニューアルした旭川駅に隣接したイオンモールが開業したこともあり、いよいよ壊滅的な売上減が起ったようである。
西武百貨店にはとにかくあまりにも思い出がありすぎるため、閉店までには必ず行っておかなければならない。特に1985年の夏休みに、高校時代の同級生と食事をした2階のアメリカンBOXには、あれ以来おそらく最初で最後に行っておきたい。
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