異空間のうどん屋「千座(ちくら)」(高根町箕輪) | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

 

 愛犬の体調がやや回復したので八ヶ岳南麓に単身ショートステイすることにした。

 最近の八ヶ岳南麓行では中央高速を須玉ICで降り、まずは無口なオーナーの珈琲店「スコヤコーヒー」に立ち寄るのをルーティンにしている。

 

(買うのはいつも同じ「スコヤブレンド」と「インドネシアマンデリン」どちらも100gずつ挽いてもらっている)

 

 次の目的地は「肉のわたなべ」。連休に入ると芋を洗う騒ぎになるから今日中に「わたなべ」で肉(いつも同じ和牛モモ100g)を買わねばならない。

 

 ここで大きな問題が生じた。

 昼メシはここんとこチャンスがなかった「まつ浅」の半カツ丼と冷たい蕎麦のセットを食いたいのだが、「肉のわたなべ」に寄っていると店が閉まってしまう。

 といってまず「まつ浅」に向かうのでは、高度を400m上げてまた「わたなべ」まで400m下り、さらに我が家まで再び400m上がるという不合理なルートになってしまう。

 

(スコヤから「わたなべ」に向かうのがどう見ても正しい)

 

 さあどうしたものかと悩んでいると、スコヤコーヒーの近くにうどん屋の看板があったことを思い出した。経験則上うどん屋にはカツ丼はないが、まあ止むをえまい。

 

 建部神社の社域といえそうな場所にひっそりと佇むうどん屋は「千座(ちくら)」。見た目はとてつもなくショボい。

 

 

(古民家風というより民家風)

 

 中に入ってオッたまげた。

 広い土間にテーブルがいくつかと小上がりがあるのだが、店というより親戚のおばちゃんちの茶の間という雰囲気だ。

 

(生活グッズや野菜類が雑然と居並んでいる これは演出ではなさそう)

 

(古民家風演出の典型例 須玉町「草至庵」)

 

「ご注文は」

 鄙には稀、というのだろうか。奥から現れた女将はどこそこ現身のものではないような妖しさが漂っている。

 

 メニューを見ると「うむどん」(ここではうどんでなく「うむどん」と称している)のセットがある。

 「うむどんセット大」はうむどん(ざるまたは釜揚げ)、煮物、まぜご飯(大)、おしんこで1200円、「小」だとまぜご飯が小になって1000円。

 カツ丼がないのはハナから覚悟していたし、ご飯ものがあるだけでも有難い。

 

「あの、私の体格だとやはり大がいいでしょうね」

「それは分かりません。うむどんを大盛りにすることもできますけど」

「じゃそれでお願いします」

 

 待つこと10分、うむどん大盛りセットがやってきた。

 

(煮物の中の青物は名前が思い出せないが昔祖母が庭で育てていた懐かしい菜っ葉だ)

 

 さっそくうむどんをツルツル。

 水沢うどんの伝統を受け継いでいるといううむどんは「吉田のうどん」がデフォルトの私にとっては少々柔らかすぎる。

 

 

(胡麻とクルミのつけ汁 私は醤油味が好みなんだが)

 

「開業してどのくらい経つんですか」

「32年です」

「じゃあ清里ブームが終わりかけたころですね」

「そうです」

「・・・」

 茶の間コーナー(というのだろうか)に陣取った女将さんはなにやら作業に没頭してあまりカマってくれない。他にお客さんもいなくて、なんだか一夜の宿を求めて安達ケ原の茅屋を訪ねた旅人のような気分だ。

 店名の由来は、そして「うむどん」とは何か。聞きたいことはいろいろあったが聞きそびれてしまった。この店は建部神社を中心とする結界の中にあって、その中では時空が微妙に歪んでいるのだろうか。

 

「ごちそうさまでした」

「1300円です」

 う~む。

 これは「セット大」にうむどん大盛りで+100円になったのだろうか。それとも「小」+大盛り300円なのだろうか。

 謎に包まれながら結界を抜けて「肉のわたなべ」へ向かった。

 

 異空間にある「千座」のうむどん、うどん好きの方はスコヤコーヒー、たかねの湯、建部神社参拝などのついでに一度お試しください。