(脂がのってふわふわの鰻「blowin' in the wind」)
いよいよ鰻のシーズン到来である。
「鰻の旬って土用の7月じゃないの」と思ったら大間違い。あれは鰻が売れなくなる梅雨時の拡販策として我が国最初のコピーライター平賀源内が知り合いの鰻屋に頼まれて考案したものだと言われている。
(平賀源内(1728~1780)蘭学者・コピーライター・起業家・作家
高松藩下級武士の家に生まれた源内は1769年に歯磨き粉のCMソングをこさえたことから「本邦コピーライターの祖」といわれる 喧嘩による殺傷事件で投獄され破傷風で獄死 享年52 友人の杉田玄白は「変わり者が死に方まで変わり者で終えた」と弔辞を贈った)
ウナギだって魚だから冬になると脂が乗って旨くなるのは同じこと。まして連中は冬眠するからその前の11月前後にはたっぷり食べて太るのである。
市場シェアのほぼ100%を占める養殖ウナギが天然モノのように冬眠するかは定かでないが、何億年もの間彼らの遺伝子に刷り込まれた生活習慣がここ100年程度で変わることはないだろう。
ちなみに親戚筋のアナゴの旬は7~8月と言われているが、これはこの時期のアナゴが脂が落ちてクドさがなくなることに由来していて、脂の乗ったヤツが食いたければやはり今時分がいいらしい。
そんなわけでゴルフ友のAさんと清里の名店「blowin' in the wind」へ。
大の鰻好きのAさんだが、奥様はきっと子供の頃になにかトラウマがあるのだろう、ニョロニョロしたものは一切受け付けないそうで、鰻も食べず嫌いの由。今回単身赴任のAさんは誰に気兼ねすることもない千載一遇のチャンスを得た次第である。
初見のAさんが迷ってはナンだと思い、家を早めに出たら予約の30分前に着いてしまった。
(クリスタルライン沿いに看板があるがこれじゃ初めての人には分からないだろう)
どうせ一本道だからここで待つより名勝「大滝」まで戻ってみることに。
この「大滝」と「吐竜の滝」、「中止の滝」を称して「八ヶ岳南麓三大がっかり滝」というらしい(ホントか)。
滝には全く興味はないがせっかくだから滝つぼまで行ってみようと杣道をちょっと歩くと、なんとシマヘビが通せんぼしていた。
(ひょっとすると天然ウナギか)
う~む、気色悪い。
Aさんの奥様が鰻嫌いになるのもむべなるかなである。
これを奇貨としてとんぼ返り、店に戻るとちょうどAさんもやってきた。
(上からちょっと見れば十分)
予約より早いが三上さんは笑顔で招じ入れてくれた。
ああでもないこうでもないとしゃべり散らかしながら待つこと20分、宮崎産鰻がおごそかに登場した。
(もうゲージツだよ、これ)
旨い。
「実はこれ大滝のシマヘビなんです」と言われたとしても、「それがどうした」というかんじ。
Aさんもすっかりお気に召した様子。
お連れした方が喜んでくれると旨さもひとしおである。
かくして「10月のうれしかったこと」と「10月の旨かったもの」、この鰻がダブル受賞とあいなった。