(アルプスハイランド分譲別荘地入り口に立つ柱)
高校時代の級友A君が所有する土地が八ヶ岳南麓にあるというので、よくよく聞いてみると
私の散歩圏にある「アルプスハイランド」内とのこと。本人は数十年前にお父上が亡くなられた時に件の土地を相続したのだが、以来一度も足を運んだことがないという。
さっそく好奇心半分興味半分で現地を見に行くことにした。土地の区画番号「へー9314」だけが唯一の手がかかりである。
アルプスハイランドはバブル前期の1970年代から分譲が始まった大型別荘地で、高根、清里、野辺山、白州にまたがり全部で1300戸が販売されたという。
それからかれこれ50年。分譲地内が相当荒廃しているであろうことは入り口の小汚い(失礼)柱を見ても明らかだ。
柱の向こう側には入ったことがないのでクルマで行ってみたがなんのことはない、柱のすぐ脇に管理事務所があった。
(中は思いの外きれい)
居合わせたスタッフの方にかくかくしかじか用件を告げた。
「屁の、失礼「へ」の9314番ですね。あ、ここですね」
「今から現地に行っても構いませんか」
「構いません。地図をお渡しするか、私が先導させていただくか」
「どっちも、でもいいですか」
「いいさよ~(←ホントはこうは言ってない)」
親切なスタッフの方の先導で広大な別荘地内を進む。
荒れ果てた空き地と廃屋ばかりと想像していたのだが、意外なほどきれいな家が多い。定住の方も思いの外多いようだ。
(一番左が県道28号 そこから東へ東へと入っていく)
(ひときわ威容を誇る大邸宅 カラマツの太さが時の経過を感じさせる)
やがてたどり着いたA君の土地は南道路のほぼ正方形の土地で、南北と西側は空き地(雑木林)になっていた。
(木漏れ日が心地よい)
物件情報を検索するとアルプスハイランドは元々100坪前後の土地を分譲していたようで、売り物件も殆どがそのサイズで200坪近いものがほんの少し混じる程度(これはおそらく2区画まとめて購入されたのであろう)。
住んでみて分かることだが、家庭菜園やらガーデニングによほど凝らない限り土地は100坪もあれば十分。草むしりの労力を考えれば(まあ最近してないけど)狭い方がむしろ暮らしやすいかもしれない。
難をあげれば徒歩圏には飲食店などはなく(おそらく「くのパン」と「ハム日和」が一番近い店と思われる)、クルマがなければ生活が成り立たたない場所だがそれを除けば中々いい場所だ。
土地価格はおおむね坪2万円前後とこの界隈でも割安である。
管理別荘地ゆえ年間5万円程度の水道代など管理料がかかるが、ゴミ出し(というかゴミ遠征だなあれは)は不要だし雪かきやら道路整備やらも不要である。
(90坪45万円(坪単価5000円)なんて土地も 大泉高原土地様のHPより)
周辺をウロウロしていると、庭の手入れをされているマダムがいらっしゃった。
最近コツをつかんだのだが、どんなに離れていても「あれ?」と見咎められた瞬間から会釈を繰り返しながら近づくと空き巣狙いや悪徳業者の下見とは思われないですむ。もちろん表情が読み取れようが読み取れまいが、満面の笑顔を必死こいてこさえるのは絶対条件である。
マダムは彼の地に住み始めて20年。
シカの害を除けば大層暮らしやすいとのこと。
「ウチは蓄熱暖房だから冬も暖かくて」
「ちょっと前に流行りましたね。私も検討しましたがオール電化が不安で止めました」
「今はなくなったらしいわよ。深夜料金がなくなっちゃったから」
「じゃあ電気代がかかって大変ですね」
「大丈夫。私が生きているうちは深夜料金が適用されるのよ」
そうだったのか。
アルプスハイランドは住むにはよさそうだ。
A君が老後をここで過ごしてくれたらなあ、そんな思いにかられながら別荘地を後にした。