Aさんご一行が八ヶ岳南麓にいらっしゃるのは夕方。翌日の午後にはお帰りになるので晩メシと昼メシをそれぞれ一回ずつ食う(敬語はメンドウなので以下略)ことになる。
酒に関してはすこぶる卑しいAさんが喜ぶレストランはどこだろう。ペンションブロッサムの送迎圏内にある候補を考えてみた。
中華レストラン「安妟」 中華は東京でもよく食うからちょっとアレかも
韓国レストラン「どんぐり」 しょっちゅう食ってるので私的には今回はパス
「プロシュッテリアモリモト」 Aさんは焼酎・日本酒派
「魚Zenzow」 東京にも似たような店はたくさんあるからローカリティに欠ける
「あめみや」 同上
和食レストラン「岳」 同上(ブロッサム送迎圏外と思われる)
ひとつひとつ当たっていくと意外と帯に短し襷に長しで容易に決まらない。
そうだ、牡蠣食わしたら面白いかもとひらめいて「コジシタ八ヶ岳」を予約することにした。本当は内緒にしておいて二人を驚かせてやりたいところだが、牡蠣が苦手だったりすると目もあてられない。
「もしもし、晩メシは生ガキとかいかがですか」
「二人とも大好物です。それより店には歩いて行けるんですか」
「行けなくはありませんが、宿のクルマで私たちも含め全員送っていただきます」
「おお」
Aさんは大いに安心した様子。なんせ無類の酒好きだから私がクルマを運転して酒を我慢する羽目に陥ることが他人事とは思えないのである。
(牡蠣が好きなら喜んでくれるはず)
これにて一件落着。あとは翌日の昼メシだ。
八ヶ岳南麓はボチボチ新そばの時期だが、
「蕎麦なんて、あんな法外に高いものをありがたがって食うのは気がしれない」と日頃広言しているAさん。短い時間で急速に親しくなった二人はどこそこ似たものどうしである。
そうだ、鰻を食わせよう。それも関東風のヤツ。
ということで「Blowin'in the wind(長いな~)」を予約した。
(これだけの上玉は東京でも滅多に食えません)
「もしもし、鰻はお好きですか」
「大大大好物です」
「ではかくかくしかじかで」
「そこにも宿のクルマで?」
「いえ、私のクルマで」
「・・・。歩いて行けないんですか」
「行けなくはないと思いますけどおそらく3時間か4時間かかると思います」
「3時間か4時間・・・。タクシーだと」
「1万円じゃきかないでしょうね~」
「・・・」
Aさんのお宅に招待されたのはこれまでに4回。
そのうち2回は昼12時集合の飲み会だったのだが、初回の飲みの時Aさんがわざわざ我が家までいらして、
「まあ積もる話もありますから(初対面だけど)、我々は11時集合ということにして二人でシッポリやりましょう」
というのでつきあったことがあった。
以来「集合時間1時間前から飲み」というのが二人のルールとなったわけだが、どうやらAさんのおツムには「ゆるふわ=昼飲み大好きの無法者」、と刷り込まれてしまったらしい。
そんなことなら鰻は次回にして昼は近場のラーメン屋かなんかでいい、飲んだ後はタクシーで駅に行くとむずかるAさんをなだめスカしてどうにか鰻屋で納得させた。
「念のために申し上げますがくれぐれも変な気を遣わないでください。飲み食いのカネは完全割り勘ですから(きっぱり)」
う~む。
日頃のご招待のお礼をするつもりだったのに機先を制されてしまった。
そういうことなら夜「どんぐり」、昼「一休」の線で再考する方がよいかもしれない。