八ヶ岳ライフの強い味方フォレスター そこから垣間見えるアメリカ社会 | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

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 この日の八ヶ岳南麓大泉はぐっと冷え込んで朝の気温はマイナス8℃。愛車のスバルフォレスターにもうっすらと雪が積もっていた。人外魔境にお住まいの囲碁トモAさんから送られてきた写真を見ると、魔境では数センチの積雪があったようだ。

 すわ陸の孤島で孤独死か、鳩居堂のお線香を少し残しておいてよかったよ、と心配したが、本人は

「スバルだからね、大丈夫、大丈夫」と至って鷹揚、スバルへの信頼はもはや信仰レベルである。

 

(人外魔境にひっそりと佇むスバルXV)

 

 大泉では実に多くのスバル車を見かける。Aさんのほか囲碁トモのBさんもXVだし、カラオケ友のCさんは昨年レヴォーグからフォレスターに乗り換えたばかり。

 北杜市内でのスバル販売台数は不明だが、ひまわり市場やオギノの駐車場を見る限りでは市内登録普通車12736台(2020年3月現在 これとは別に軽自動車が約2万台登録されている)のうち10台に

1台ほど、つまりおよそ1000台位がスバル車ではないだろうか。中でもXVとフォレスターが人気を二分しているようだ。

 

 このフォレスターだが、100%日本国内生産にもかかわらず米国での人気が高い。いや、むしろ米国内で作られていないので余計人気があるのかもしれない。

 故障の少なさに定評のある日本車だが、その中でも米国人労働者が生産にタッチしていないメイド・イン・ジャパンは特に信頼度が高いという。

 彼の地の日本車愛好家の間では、「日本国内で生産されたクルマの見分け方」がしばしば議論になるようだ。ディーラーに「日本からの輸入車なら買う」と条件をつけても誤魔化されることが多いらしい。その点フォレスターなら安心だ。

 

 2020年におけるスバル生産数、販売数

(SUBARU公表値より)

 

 そんな我がフォレスターの兄弟たちのうち約9割は米国で活躍中だから、仕様は当然のことながら

米国人向けである。

 

 フォレスターに乗って最初に驚いたのが給油口が右側にあること。

 日産車の一部を除いて給油口が右にある国産車はスバルだけである。ちなみに外国車は米国、ドイツとも殆どが右のようだ。これは、

・ 排気ガスが人に与える影響を抑えるためマフラーは歩道と逆側にあった方がよい(=日本車は右、外
 国車は左)

・ 引火リスク回避のため給油口はマフラーから遠い所にある方がよい(=日本車は左、外国車は右)

という自動車が誕生して間もない頃からの伝統的な考えによるものらしい。スバルもおそらく米国市場を意識して給油口を右にしているのだろう。

 

(フォレスターは何故かマフラーも給油口も右だ)

 

 もうひとつ驚いたのがエアバッグの無骨なステッカーである。何故英語で、しかもここまでデカいものを悪目立ちする所に貼り付ける必要があるのか。

 

(サンバイザーにデカデカと貼られているステッカー

「シートに逆に座ると危ないよ」というようなバカらしいことを図解している)

 

 背景にあるのは米国のPL法(Product Liability 製造物責任)である。

 元々名うての訴訟社会であった米国だが、1980年代の一連のタバコ訴訟を通じて加害者(メーカー)に厳しい賠償責任法理が確立された。

 代表的なもののひとつが、製品そのものの瑕疵だけでなく使用にあたっての注意事項などの表示方法の不備も賠償責任を問われることである。

 

 そんなわけだから企業も愚にもつかないエクスキューズに血道を挙げざるを得ない。例えば、

 「赤ちゃんを乗せたまま畳まないでください」(ベビーカートメーカー)

 「この製品では飛べません」(マントメーカー)

 「衣服を着たままであてないでください」(アイロンメーカー)

など。フォレスターのバカげた注意書きも米国では必要な企業防衛手段なのだ。

 「だったら米国向けのクルマだけ米国陸揚げ時に貼ればいいのでは」と思うのはシロウトの浅はかさ。

 「ズンタ、ズンタ、メンド臭いので貼らなかったよ~ん。だって今日は金曜日、金曜日だぜ、ベイビー」、なんて言いぐさがヒップホップのリズムに乗って聞こえてきそうではないか。

 

 もうひとつが「懲罰的損害賠償」である。

 我が国では損害賠償は相当因果関係のある範囲に限定されているが、彼の地では「神に代わって邪悪な企業を懲らしめる」という意識が強い。製品に危険があると知りつつそれを公示しないとそれこそ何千億円という制裁的な賠償が課されるのである。2014年に起きたエアバッグメーカーのタカタの事例がまさしくこれだ。

 懲罰的損害賠償は保守的な思考が強い地域ほどその傾向が強く、全米で最も適用率が高いのが

アラバマ、その次がネブラスカ、サウスカロライナと言われている。フォレスターが売れるのは大都会よりもこれらの僻地の方が多いはずだから、SUBARUとしてもさらに慎重な対応を迫られることになる。

 

(「コットンステイト」と呼ばれるアラバマは全米で最も貧しい州 共和党の牙城でもある)

 

(トウモロコシ畑以外には何もないネブラスカ 日本人だけでなく米国人にも中々思い出せない州だろう

 お隣は「フィールド・オブ・ドリームス」や「ギルバート・グレイプ」の舞台となった僻地中の僻地アイオワ おそらく写真のトウモロコシ畑はアイオワまでず~っと続いているはず

 ここも伝統的に共和党の牙城 大統領選は比例代表を採用する2州のひとつで先の大統領選ではトランプ3:バイデン2と分け合った)

  

 ステッカーだけでなく、フォレスターでいつも気になるのはウインカーの戻りが鈍いこと。これも、

 「ウインカーがすぐ消えたせいで事故を起こした。ど~してくれるんだ」との訴訟対策であろう。

 シートベルト未着用の警告音がやたらうるさいのも同じである。なにせ、

 「ちゃんと警告しないオマエのせいでオレは肥満になった。ど~してくれるんだ」とマクドナルドを訴えるお国柄なのである(さすがにこれは無罪になったらしい)。

 

 とはいえそんなおバカ仕様も所詮は些事、フォレスターの快適さはそんなことでは微塵も揺らがない。

 八ヶ岳南麓暮らしのパートナーとしてフォレスターはこれからも最高の存在であり続けるだろう。