「北杜市」というネーミングに関する一考察 | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

(何の脈絡もないが今年はヘビイチゴの当たり年だ)

 

 北杜市役所から県民税・市民税(均等割)の納付通知が来た。

 日頃ゴミ出し、温泉等の公共施設料金、固定資産税の減免手続きで別荘族を散々差別しながら、こういうところだけは平等なのでちょっと腹立たしい。

 

 

(「払えし」 払ってやらざあ)

 

 それはともかく、「北杜市」というネーミング自体はとてもよいと思う。

 北杜市は「平成の大合併」のさなか、2004年に大泉村をはじめとする旧7町村が合併して誕生した(翌年小淵沢町も加入)。

 

 相前後して県内には「南アルプス市(2003)」、「甲斐市(2004)」、「甲州市(2005)」、「中央市(2006)」

が誕生した。ネーミングを見る限りこの人たちは本当は「山梨市」を名乗りたかったところだろうが、どっこい山梨市は1954年に誕生済である。

 蛇足だがこの山梨市というのはかなりユニークな存在で、今日に至るまで県名と同一の市で県庁所在地でないのは山梨市、栃木市、沖縄市(旧コザ)の3市のみである。

 もうひとつついでにウンチクを垂れると、過去から現在に至るまで県名と同一名の市町村が存在しなかったのは兵庫県のみである(神奈川、群馬、愛知、三重なども現在は同一名の市町村が存在しないが、かつては同名の村が存在していた)。

 

 これらの新市名のうち一番オーソドックスなのは「甲斐市」で、旧国名を市名に用いた例は越前市(福井県)、土佐市(高知県)など全国に23存在している。

 珍しいのは「南アルプス市」で、カタカナ入りの市名は全国ここだけだ。

 また、「上州の空っ風」、「遠州森の石松」など「〇〇州」というかつての通称を用いた例は「甲州市」の他はわずかに「奥州市(岩手県)」のみ。

 気宇壮大な「中央市」は、「日本の真ん中、山梨県の真ん中」というのが由来だそうだが、「四国中央市(愛媛県)」発足時には、

「イケ図々しい」、

「何サマだ」、

と批判が出たそうだから却って「山梨中央市」などと下手に出なくてよかったのかもしれない。

 

 これらの新たな市の名前は都道府県知事が認可することになっているが、調べてみるといくつかのルールがあるようだ。

 

① 既存の市の名称と同一、あるいは類似してはいけない(1970年自治省通知)

  静岡県には「伊豆市」と「伊豆の国市」があるが、この程度では「類似」には該当しないようである。

  想像だが元々旧韮山町と伊豆長岡町は合併にあたって「伊豆市」を名乗るはずだったのが、前年
 によその自治体に「伊豆市」を取られてしまったものだから万止むを得ず「伊豆の国」にしたのだろう。

  外野から見るとこんな変テコな名前(「〇〇の国」という市名は全国ここだけ)にするくらいなら由緒あ
 る「韮山市」にすればよいと思うのだが、それでは合併話が白紙に戻りかねなかったのであろう。

 

② 同一表記は読み方が違ってもダメ、逆に表記が違えば読み方は同じでもよい(2001年自治省見解)

  このルールにより、わが北杜市は「北斗市(北海道)」に気兼ねすることなく新市名を名乗れたわけ
 である。

 

③ カタカナ標記はOK、アルファベット、数字はダメ(同上)

  「南アルプス市」、「アルプスの少女ハイジ市」は構わないが、「HKT48市(ホクト48市)」なんていう
 のは認められません。

 

④ 通常と違う読み方もOK(同上)

  そのうち「桃花(ぴんく)市」だとか、「鹿角(おたから)市」だとかの「キラキラ市名」も出てくるかもしれ
  ない。

 

 センスの光る「北杜市」だが、合併協議の当初段階では、

 「『八ヶ岳市』がいいさよ~(大泉、高根など)」

 「長野県のシがおちんぶりかいちもうよ(訳注:長野県の人たちが怒ってしまうよ)。それより『甲斐駒ヶ岳市』にしちゃ~。甲斐駒はぜ~んぶ山梨県じゃんね(白州、武川)」

 「チョビチョビしたこといっちょ。それなら『金峰山市』の方がいいら(須玉)」

 「あの、域内で唯一特急が停まる『小淵沢市』がいいのでは」

 「新入りは黙ってろし!(全員)」

と相当揉めたらしい。

 

 公募(応募数トップは八ヶ岳市)、住民投票の結果、北杜市」という抽象的で品格も感じられる名前に落ち着いたのは僥倖だったのである(1位北杜市、2位北巨摩市、3位峡北市 なお理由は不明だが「八ヶ岳市」は住民投票の対象から外された)。

 

 てっ、だっちもねえこんじゃんね。