(「三方ヶ原戦役画像」徳川美術館蔵
この絵には三方ヶ原の戦いで武田信玄に惨敗した徳川家康公が自戒を込めて敗軍の姿を描かせた、との伝承がある。この時家康公は恐怖のあまり脱糞していたそうだが近習に「うぷぷ。殿、クソを漏らしておわしますぞ」と指摘されると、「たわけ!これは焼き味噌じゃ」と言い訳して近習の頭を張り飛ばしたという)
「命長ければ恥多し」という。
実際62年も生きていると、恥ずかしいこと、それも思い出しただけで転げまわりたいほど恥ずかしいことが澱のように体内に沈殿していて、それはもはや一個の人格を形成しているかのようだ。
ここでそのいくつかを紹介したいのは山々だが、一瞬のウケ狙いでブログの品格を貶めるわけにもいかないのであえて自重することにした。
Tripナントカ社から「是非ライターに」とのメッセージをもらった翌日のこと(その記事は → ここ )。
ブログ友のMさんからLINEが入ってきた。なんとMさんにも全く同一のお誘いメッセージが来たというのだ。
「ゴキブリ理論(=1匹見たら30匹はいる、というやつ)」によれば敵は少なくとも60通以上のメッセージを出していることになる。その中で名刺まで作ろう、などと舞い上がっているのはおそらく私だけだ。
「社長!カモが1匹ひっかかりました!」
「ほら言ったとおりだろ。『内容に富んだ』が殺し文句なわけよ」
「豚もおだてりゃ・・・」
「『木に登る』ってか。よし、トンカツでも食いに行くか」
ああ、恥ずかしい私。
仮にこれが詐欺でないとしても、私が木に登った事実はいささかも揺らぐものではない。せめてもの救いは名刺の印刷に着手していなかったことである。
あわてて恥ずかしいブログ記事を削除しようかと思ったところで、家康公の故事を思い出した。
自戒を込めてこれはそのまま残しておくことにした。まして私は一瞬とはいえライターになろうかと考えた男、プライドなど捨ててかからねば大成は出来まい(ホントか)。
これからの余生も谷あり、崖あり。同じようなことは起きるだろう。そんなわけでブログテーマに「ああ、恥ずかしい」を新設することにした。
それにしても恥ずかしい。
かつて英国の哲学者が、
「太った豚よりもやせたソクラテスになりたい」
と言ったという。
今の私は、「木に登る豚よりも平凡な、太った豚になりたい」という心境である。
(久しぶりの八ヶ岳はちっぽけな人の営みを哄笑するかのように泰然と構えている)