囲碁将棋の天才たちと人工知能 | 八ヶ岳ゆるふわ日記

八ヶ岳ゆるふわ日記

八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

  囲碁の井山裕太さんが名人戦で高尾紳二名人を破り生涯2度目の7冠を達成した。

 

(終局のようす)

 

 石井邦夫(井山7冠の師匠)著 「わが天才棋士 井山裕太」 (2009集英社)

 
によると、井山7冠が囲碁を始めたのは5歳、石井九段との出会いは6歳の時であった。
「囲碁を覚えて1年でアマ三段の実力になった子供がいる」というので石井九段が半信半疑で指導碁を打ったところ、井山少年の才能に驚いたそうだ。
 その後井山少年は石井九段の弟子となったが、親元を離すのは不憫に思った石井九段は毎日のようにネット碁で指導したという。
 囲碁も将棋も師匠と対局するのは弟子入りした日と棋士の道を断念した日の2局だけ、というのが慣行の中、井山少年は恵まれた環境であった。ここは将棋の藤井四段とよく似ている。
 
 この本自体は、タイトルの通り生涯でたった一人(一時的に預かった弟子をいれると二人目)の弟子
に対する愛情物語で、石井九段の親バカぶりが横溢している。囲碁論というより疑似的な親子の物語として読むのに適切です。
(ブックスタンドの役ね、はいはい。)
 
 一方の将棋であるが、1996年に羽生善治さんが26歳で7冠を達成したのち、久しくその可能性すら現れない。羽生の後継と自他ともに認める渡辺明竜王もいつの間にか33歳、さらに下の世代がぞくぞくとタイトル争いに加わってきており、これから7冠を目指すのは至難であろう。
 若手棋士は研究の際に将棋ソフトを活用することにためらいがなく、それが棋力の向上を促しているのだという。
 
 
 新聞の広告で目についた藤井四段関連の本を2冊買った。
 
 谷川 浩司 著 「中学生棋士」 (2017 角川新書)
 
 著者本人を含め、将棋界には過去5人の中学生棋士がいる。加藤一二三(ひふみん)、谷川浩司(本人)、羽生善治(元7冠王)、渡辺明(竜王「将棋の渡辺君」の主人公)、そして藤井聡太四段である。
  将棋のプロ棋士になるには名にしおう奨励会三段リーグを勝ち抜かねばならないが(その過酷さは瀬川晶次氏の将棋人生を描いたルポに詳しい 記事は→ここ )、著者によると最初の3人までは比較的容易にプロになれた時代で、厳しいハードルを乗り越えてプロになったのは渡辺竜王以降だという。
 
 また、5人に共通するのは、
・ 親は将棋を指さない、あるいはほとんど知らない
・ 親に強制されず自分で将棋に夢中になり、かつ親は干渉せず好きなだけ将棋をやらせる
・ 将棋を覚えた年齢が早い
といったところで、特に強調しているのは、
将棋の才能には遺伝子の要素はほとんどない」ということだ。
 将棋に限らず芸事には遺伝の要素はほぼ無関係で、「子供が好きになったことをとことんやらせる」ことと、5歳以前に夢中になることが才能を開花させる唯一の方法だということを近時の教育学も引き合いに出して強調している(この辺になると、ゴーストライターの存在が感じられる)。
 
 確かに言われて見ると、親子棋士というのは囲碁、将棋ともほとんどいない。調べてみると大成した親子、つまり親子でタイトルを獲得したのは後にも先にも囲碁の羽根泰正(1回)、直樹(8回)の一組のみである。
 
 もう1冊は、津江章二「藤井聡太 名人をこす少年」(日本文芸社)
これはどちらかというと、藤井四段ファンブックみたいなもので、まあ持っていても悪くない、という感じ。
 私は読んでいないが、松本博文「藤井聡太 天才はいかに生まれたか」(NHK新書)の方が著者の過去の将棋本の類推では期待できると思う。
 「じゃあ、何故そっちを買わなかったのか?」それは、いつもの衝動買いだからです(泣)。
 
(写真もかわいいから持ってればいいじゃん)
 
 AI研究企業ディープマインド社が、囲碁世界最強の中国柯潔九段を破ったAI囲碁ソフト「アルファ碁」の最新版「アルファ碁ゼロ」を開発したことを発表した。
 この最新マシンに囲碁のルールだけを教え、以後マシン同士で2900万局(!)の対戦を行わせて
自己学習させたところ既知の定石、人類が未知の定石まで独力で開発、2016年版アルファ碁には100戦100勝、2017年対柯潔九段勝利版をも上回る実力を備えたという。
 AIにとって人間の過去の知見すらもはや不要になったのだ。
 
 2017年は囲碁の世界でも、将棋の世界でも、AIが人間の知能を超えた人類史上画期的な年であった。 とはいっても囲碁将棋の魅力が減るものでもないし、人間の知能の限界を示すものでもない。
 
 AIによって、さらに楽しい世の中になりそうな予感がする。