2022年製作/128分/G/日本
配給:東映
出演:吉岡里帆 中村倫也
工藤阿須加 小野花梨 高野麻里佳 六角精児 柄本 佑 尾野真千子
原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
監督:吉野耕平
脚本:政池洋佑
主題歌:ジェニーハイ 「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
予告編はこんな感じ
あらすじ
地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ新人監督・斎藤瞳は、デビュー作で憧れの天才監督・王子千晴と業界の覇権をかけて争うことに。王子は過去にメガヒット作品を生み出したものの、その過剰なほどのこだわりとわがままぶりが災いして降板が続いていた。プロデューサーの有科香屋子は、そんな王子を8年ぶりに監督復帰させるため大勝負に出る。一方、瞳はクセ者プロデューサーの行城理や個性的な仲間たちとともに、アニメ界の頂点を目指して奮闘するが……。
近況報告
引っ越しもひと段落しまして、やっとこさ周りの探検ができるようになってきました。
会社に行くのも近いし、いい銭湯もあるしでよい街に住めたなと思っています。
さて、昨日は久しぶりに映画館に行きましてね、観たいものが結構たまってきたので新宿バルト9でぶっつづけで「ハケンアニメ!」「トップガンマーヴェリック」「犬王」を観てきました。
めちゃくちゃ詰め込んだスケジュールが組めました。さすがバルト9!
ハケンアニメ!は正直舐めてたし予告とかで観てる時は観る気がさっぱりなかったのですが、ジェニーハイのテーマ曲が好み過ぎたのと、よく観てるyoutuberの「おませちゃんブラザーズ」のラジオ(複雑)でかなりアツく紹介されていたのがきっかけですね。
なんか映画の紹介する人の声を聴いていると、ときどきどんだけボンヤリ聴いてても「これはやばそうだぞ・・・観なきゃ!」って声から感じるトーンとか熱みたいなものがありますよね。ブログじゃなくて声で伝えたほうがよいのでは、なんて今書いていて思う今日この頃です。まぁ一記事書くのに一時間半くらいかかってる僕にはできないことですけども。
さっきのyoutuberおませちゃんブラザーズは後ほど動画でも紹介していました。
こちらは事前に見てても全然大丈夫な内容な上に、観る前の補助線にもなるのでぜひ
感想
100点!
やったぜ!こういうノーマークだった最高なものに年一本でも出会えるのは本当に幸せですね。
ていうか、これはもう今年ベストといってもよいくらい感動しましたよ!!
以前、「見えない目撃者」でも舐めてたところをぶっ飛ばされたのにまた舐めてました。
吉岡里帆さん本当にごめんなさい!
僕のぶっ飛ばされっぷりはこちらのブログに書いています↓
何から書けばよいやら、という感じですが
この作品、新人VSレジェンドの対決構造がメインかと思わせておいて、もはやそんなものはどうでもよくて、とにかく「集団制作するものづくりのアツさ」が打ち出された映画でしたね。そしてそれに思いっきり、ヘッショで撃ち抜かれた。
アニメはとにかく手間がかかるためそこに関わる人々もたくさんいるわけで、その中で当然考え方とか役割意識が異なる中で本当にいろいろな摩擦a.k.aドラマを巻き起こしながらも「監督の考えるものを実体化して人に届ける」ということに向けて全員のオモイが集束していくというのがね、とにかくかっこいいし、アツい!
このいろいろあってのヒーローウォーキングのシーン、かっこよすぎましたね。
でも、そんなカッコいいものづくりの作業というは本当のところは恐ろしいほど地味で苦しい作業でしか進み得ないというのもまた良い表現でしてね。作中での天才監督、王子も外面にはその天才性から自然と生み出されたものであるかのように見せているけれど実際にはめちゃくちゃ地道にものづくりをしていたというのが逆にアツい。
そうしてズタボロになりながら作ったものを現代の超娯楽に溢れた世の中に出すときの残酷さというか「100伝えて1伝わればいいほう」という劇中のセリフの通り、瓶詰めの手紙を海に流すような寄る辺なさがあるんだけども、それでも「刺され、誰かの胸に」と祈りを込めてそれを送り出す気持ちが美しかった...!
そして瞳が近くの子供達がサバクごっこしてるのを見届けるのがラストシーンだったんですが、この「届いた!」っていうのがクリエイター冥利につきる幸せが溢れるいい終わり方でした。
また、画一的じゃない性質をもったキャラクターが多いというのも大変に好みでした!
瞳の作品を宣伝するためにある種冷徹な印象を与える行城が「実は」いい作品を届けることに対してアツいものを持っていたとか、天才タイプで苦労知らずな感じの王子監督が「実は」作品を作ることのプレッシャーに負けそうでギリギリだった。とかこの人はこういう人物というものだと思っていたところに違う面を見せられるというところになんとなくポール・ヴァーホーヴェンの最&高映画、「ブラックブック」で描かれる紳士的なナチスとかを思い出したり。
ちなみに本作で一番アツい「実は」キャラは高野麻里佳演じる実力不足のアイドル声優の葵が「実は」自分の不名誉なポジションは理解しきった上でその役割を全力でやっていたということがわかるというところですね。アツすぎるぜ・・・
あとはですね、瞳と王子が作ったという設定の実際のアニメがめちゃくちゃガチ!
「天才アニメ監督と才能豊かな新人監督が魂を削った作品」を作れという、無茶ぶりに応えきるのがすごいですわ。この映画のクライマックスと二つのアニメの最終話を順繰りに見せられる場面は3つの作品分の熱量をぶつけられる感じで結構ボロボロ泣かされてしまいました。
これは野暮な話だけどサバクとリデルが全話観られるなら、観ちゃうかもしれないと思うほどに面白かった。
その他、役所職員を通してリアル社会との距離感を対決構造ではなくて共存であると表現してくれるところとかもいい表現だった・・・・
そして最後に流れるジェニーハイの「エクレール」も最高。もともといい曲だと思っていたけど映画の要素をすごい拾っていてもう一度感動しました。
川谷と小藪と二人も嫌いな奴がいるバンドなのに、曲の魅力に逆らえない・・・
大変に悔しいけれど川谷江音は天才だと思わざるを得ないのが現状!
ブラックブック
名匠ポール・ヴァーホーヴェン監督のある組織に所属している人が悪人とは限らないし、なんならめちゃくちゃ悪人として扱われる人でも素敵な一面はあるけど、自分が正義の側にいると思った人はどこまでも邪悪な存在になってしまうよ、というお話。サイコー。