学外のとあるフィールドワークで,武蔵野台地の自然史についての講義・巡検を行いました.
生物や岩石・鉱物の先生らと合同で,私は武蔵野台地の段丘地形の形成史と,立川断層について担当しました.
西恋ヶ窪緑地(通称エックス山)の雑木林.雑木林は,人間が定期的に手入れをすることによって,むしろ林床まで光が届き生物多様性が保持されます.ここではおもにエゴノキ,クヌギとコナラ,キンラン(花は終わり),サイハイランなどを観察しました(そのほかにも多数あり).ウルシらしきものもありました.
一方,国分寺崖線に位置する西国分寺の黒鐘公園の近くには,極相林となった林を見ることができます.林床まで光が届かないので,「天然の林」ではあるが,むしろ生物多様性が限定的になります.
国分寺崖線から地形を確認します.これより上部の西国分寺駅が載る地形面が「武蔵野面」(7~8万年前に離水),府中駅などが載る下部の地形面が「立川面」(3万年前頃に離水)です.段丘崖はその傾斜のため,比較的森林が残されています.また段丘崖からは,不透水層と透水層の境目からの湧水があり,やがて野川となって流れます.都会のオアシスですが,その水質は必ずしもきれいではありません.
玉川上水でも貴重な,水面に降りられる地点です.ちなみにこのすぐ上流側の「小平監視所」まで流れてきた水は,暗渠となって浄水場に送られます.この下流の水は,高度浄水処理された下水を流しています.よく言えば,看板のとおり「甦る水」,言い方を変えれば「にせもの」とも言えます.
ここでは武蔵野面のローム層の上位も見れます.ただぱっと見,ATなどの時間指標テフラは見つけられません.
玉川上水が屈曲する地点(武蔵砂川近く).東上がりの変位をする立川断層の累積変位のため,下流側が高い坂になっています.ここを導水するため,流れを屈曲させています.
通常,平野や盆地の境には活断層があって,山をより高く,低地をより低くさせるセンスを持っていますが,現在の立川断層は,それとは異なり,やや平野部にあり,かつ東に行くほど高度が下がるはずの武蔵野台地の扇状地面を,東上がりに持ち上げています.
有名な,旧日産村山工場跡地南側です.立川断層の撓曲(とうきょく)により西側に向かって下る坂道になっています.なお道路の拡幅工事を行っているようですが,断層露頭は現れていませんでした.
箱根ヶ崎の狭山が池です.上でも書いたとおり,立川断層がこの東側の地面を持ち上げたため,この辺いったいは数万年前も湖があったようだと,地質から推定されています.現在の狭山が池よりも広かったようです.ここから流れる残堀川は,立川断層の撓曲に沿って南東,すなわち旧日産村山工場の方に流れていきます.
このように見ると,自分がどの地形面にいるかを知ることで,その地面の形成史を理解し,自然災害のリスクについて考えることができます.そのヒントは,意外と街中の景色に現れているのです.