最近ふと思い出した人が居ます。
彼は元我が社の社員です。
随分前に記事にした事のある「プリさん」「ジチョー君」と同級生で、その関係で人手の足りない時に誘われて、そのままわが社に居つきました。
40年程前の話です。
名をS君と言います。
この三人は皆同じ高校の出身で、当然レベル的には推して知るべしです。
10年程一緒に仕事をしていましたが、とにかくS君のアタマの悪さに閉口する事しきりでした。
一応先輩ですのでたててはいますが、一緒に仕事をするのが苦痛の日々でした。
後で色々と話を聞くことがありましたが、実はこの彼「てんかん」の持病を持っていました。
私が入社する前に色々と問題を起こしていて、医者には行くものの真面目に薬を飲まないので、時々発作を起こして周囲の人に迷惑を掛けます。
その様な事が多々あり、実際にトラックの出先で発作を起こした事があるので、S君はトラック禁止になっていました。
会社の行き帰りに、まったく面識のないよそのお宅に入りこんだ事もあるそうです。
私が入社したころは真面目に薬を飲んでいるようで、知りうる限り発作を起こしたのを見たたことはありません。
S君はプリさんと同級生で、高校卒業後同じ会社へ就職して働いていました。
そこに悪い先輩が居て、キャバレーへ連れて行ってくれたそうですが、S君はそれにどっぷりはまってしまい、毎日退社後お店へ通い続けていたそうです。
当時のキャバレーは、お客さんにホステスさんが付いて、何くれとなくサービスしてくれて、定期的に舞台でショー(歌や踊り、漫才や手品等)を見せてくれます。
今のキャバクラと似ていますが、キャバクラでは舞台のショーはありません。
大体のお店に〇〇タイムというのがあり、お店の電気が一気に暗くなり暗闇に乗じて、隣にいるホステスさんが性的サービスをしてくれる、という事がありました。
二十歳そこそこのS君はこれにはまってしまったようです。
当然毎日のようにお店に通っていたら、頂いた給料ではひと月持ちませんで、後は借金に謝金を重ねて遊び続け、その額1千万程になり、にっちもさっちもいかなくなったので、父親が退職金の前借をして清算したそうです。
結婚をしますが、万年金欠ピーピーですので、S君の実家で同居となります。
私が入社した当時は、結婚をしていて子供もいるせいか、毎日飲み屋三昧ではありませんでしたが、代わりにパチンコに入り浸っていました。
当時、月末になると「〇万円貸してくれ」と良く頼まれました。
給料が出ると直ぐに返してくれるので、一応お付き合いとしてお金を貸していましたが、パチンコを止めないまでも制限すればこういう事は無いのになぁ・・・と思っていました。
後にこれは金融機関への返済である事が分かりました。
S君は多くの金融機関からお金を借りていて、まずA社に1万円返し、すぐにA社から1万円借りてB社へ返し、B社から1万円借りて・・・という自転車操業を行っていたようです。
それにも関わらず車好きなせいか、セドリックや当時流行っていたエスティマ等の高級車にちょくちょく乗り換えていました。
結局S君は、己を律することの出来ない弱い人だったのでしょう。
当時聞いた話では、S君の母親が買い物依存症で、ちょくちょく買い物をカードでしていて、S家のカードを使われるので隠していると、S家の保険証を持ち出してローンを組むという事を聞きました。
この親にしてこの子あり、の典型かもしれませんね。
ある時、会社での作業中に事故が起きて救急車騒ぎになり、S君とジチョー君が病院へ運ばれる事となりました。
事故内容は、密閉の場所に溶剤蒸気が充満しているところへ入り込んで(あえてこれをする意味が分からない)急性の溶剤中毒で意識障害を起こして倒れてしまっていました。
状況に気が付いた私は全員集合を呼びかけ、数名の協力のもとタンク内の二人を引っ張り出して、息をしていないジチョー君の人工呼吸をしながら「救急車を呼べ!」と叫びました。
救急隊員が来るまで何とかジチョー君の命を繋いでいましたが、5~6名の人が居ながら皆何も出来ずにウロウロしているばかりで、「やっぱり駄目な奴はイザという時も何もできないんだな」と感じていました。
その時に、S君が急に病院へ行くことになったので、専務に乞われてS君の身分証明を探すために、S君のロッカーを開けて中を色々と点検しました。
車のカギがあったので、S君の車を開けて中にあった財布を開きました。
目的は免許証や保険証を探すためです。
折り畳みの長財布に10数枚のカード類が入っていました。
全部見てはいませんが、どうやらクレジットカードやサラ金のカードのようで、専務と「これは見なかったことにしよう」と話し合いました。
二人の入院は2~3日で済み、直に会社へ戻ってきました。
零細企業ですので、もし死者が出たら会社が終わりですから、私は大いに安堵しました。
その他には、日々の業務で溶剤を扱っていますので、わざと溶剤のにおいをかいで、シンナー遊びの様にヘロヘロになる事を良くやっていました。
幾度注意されても止める事が無かったので、社内で要注意人物扱いでした。
そしてある時から会社に「Sさんは居ますか?」という問い合わせの電話がちょくちょく来るようになり、いたたまれなくなったのかS君は会社を辞めてしまいました。20数年前の事です。
それでもちょくちょく「Sさんは居ますか?」という問い合わせが来て、「もう辞めたから居ない」「何処に居るか知りませんか?」「知らないよ(S君は地元の人ですので、本当は知っているけど)」というやり取りが2~3年続きました。
以後、時々噂話程度にS君の話を聞きますが、どうやら会社を辞めた後に車を処分したらしく、自転車でどこかの工場へ通っていたそうです。
その頃にS君は奥さんの実家に迷惑が掛かっていたので、建前上離婚をしていました。
籍は抜きましたが、奥さんと子供はS君の実家で一緒に暮らしていたそうです。
それほど、かなりの額の借金があったようです。
その後、脳溢血か何かで倒れて入院したそうで、一応友人であるプリさんがお見舞いに行ったそうですが、体が不自由で言葉を話す事も出来ない(アウアウ程度の声は出る)状態であったそうで、しばらくして亡くなりました。
結局S君は自ら身を滅ぼしてしまいましたが、世の中にはこういう人が本当に居るんだな、と感じました。