たぶん…瞳孔開いたんじゃないかと思う。
この衝撃は人生で初めて。
どんな衝撃か例えで言うと…
車で轢かれそうになって身の危険を感じるのと似てるかもしれない。
自分の命というのは頭で考えてる以上に可愛がってるものだと思う。
本能は自分の命を大切にしている。
そこを踏まえて考えると、妹の死は自分の命と対等のものだった。
だから、小窓をちゃんと覗けなかった。
妹の顔を半分だけしか見ていない。
全部見てしまうと…たぶん脚立から落ちていた。
たった…一瞬しか見ていないのに
見開いた目が、妹の死顔を記憶に刻んだ。
全く血の気がない顔色
赤紫色した唇
目の下に薄く紫掛かったクマ
何より印象に残ったのは、くっきりした輪郭
首吊って死後四日ほど経つと、こんなにも輪郭が出るのか…。
まるでリカちゃん人形みたい。
頭と胴が首からはっきり分かれてる。
寒い冬なのに手が湿る。
脚立から降り、妹である事を確認し終えた。
刑事さんがこれからの流れを説明しているが、
私の耳にその言葉たちは入って来ない。
何も考えてはない。
ただ、ずっと妹の死顔が頭の中でリピートし続ける。
叔母が見終えた所で妹の残像が消えた。
叔母を見ると、兎のように目が充血してボロボロ涙を流している。
それを見兼ねた私は、普段持ち歩かないタオル地のハンカチを叔母に差し出した。
もし、泣き崩れたら使おうと思って持ってきたが、目の前で泣かれると出る涙も引っ込んだ。
叔母のお陰で緊張の糸が切れる事はなかった。