「おめでとう」と言われなかった -⑧
1週間経って、子どものいない母親だけの退院となった。
退院したらすぐにでも貴大に逢いに行きたかったのだが、
母は、床上げまでは動かないようにと言うし、
夫は面会謝絶で子どもには逢えないのだと言う。
身体が自由にならない私の代わりに、逢えなくても
いいからどういう状態なのか聞いてきて欲しいと
再三頼むのだが、夫は、のらりくらりと話をそらし
病状に触れたがらなかった。
さすがにおかしいと思い始めていた頃に、
保健所から電話があった。
「お子さんの食道閉鎖の手術はいつされるのですか」
というのだ。「うちの子、肺炎ですけど」 と言うと、
「えっ?」 と黙ってしまい、その後「ああ、そうでしたね」と
いかにも取って付けたような、それでいて “しまった” と
いうような慌てぶりなのだ。
「うちの子、食道閉鎖なんですか」 と言うと、
「何も聞かれてないんですか」 と聞き返され
、「後日、又、かけ直します」 と言って電話は切れた。
やはり、肺炎ではなかったんだ。おかしいと思った。
夫の冴えない表情も、私が席を立つと夫と母が何やら
小声で話しをしていた事もようやく納得できた。
何故、貴大がそんな病気を……。いても立っても
いられず、医学書を引っ張り出して読みふけった。
他にも何かあるのではないだろうかと思い、
食道閉鎖に関連のある病気も調べてみたが、
途中で動悸がして気分が悪くなり、
布団に倒れ込んでしまった。
仕事から帰った夫を待ち構えるようにして問い詰めた。
他に病気はないのか、私に隠している事があるの
ではないかと。
夫は食道閉鎖だけだと言った。他には何もないと。
病院に電話をして聞けばわかることだったが、
事実を聞いて平静でいられる自信がなかった。
それに、病院の方には、私にはまだ本当の事を教え
ないで欲しいと頼んであったから、電話をしても無駄
だったのだが。