私は、分娩室に2時間ほど待機させられていた。
「お部屋が空いていないので、少し待っていてください」
という説明だった。
その間に夫を呼んで、子どもの病状説明をするため
には、2時間という時間が必要だったからだ。
私は、何の疑いもなく待っていた。
そして、その間、少し眠っていた。
「お部屋の準備ができましたから」という看護師さんの
声で目を覚まし、ストレッチャーで大部屋に移送された。
廊下で夫が待っていた。
「男の子だったよ」と言って、子どもの足型のついた
用紙を見せると、「あ々」と頷いただけですぐに目を
そらし、「よう頑張ったな」と言って私の頭を撫でた。
心なしか顔色が悪い。
初めてのお産で、緊張しているのだと思った。
この時夫は、医師から子どもの病状説明を受けた
後だった。
後についた病名は、両とう骨欠損(両手第1指欠損)
・内反手・両手指関節拘縮症で、左手第1指が
わずかに動く程度で、その他の指と、前腕の機能は
全廃していた。
子どもに面会したときの夫の衝撃は、
どれくらいであったろうと思う。
目の前が真っ暗になり、医師の説明が終わって
廊下に出たときは、足元がふらついて
歩けなかったと言う。
しかし、私は何も知らずに分娩室から出て来るのだ。
すぐに平静を装わなければいけない。
何事もなかったように振る舞わなければ
いけなかったのだ。
「貴大はどうしてた?どっちに似てた?」
「保育器の中に入っとったけん、顔はよう見えんやった」
「いつ逢えると?明日くらいかなあ」
一人ではしゃいでいた私の言葉を、夫はどんな想いで
聞いていたのだろう。その時のことを考えると、
申し訳ない気持ちで一杯になる。
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