「我が母」という人 77 一日三回「本性」が判るという話 だから「実家」だなんて言いたくない 8 | コノ国の体裁(カタチ) ~幻像『大英帝国』の住人達~

コノ国の体裁(カタチ) ~幻像『大英帝国』の住人達~

 閃いて、まさに!という想いでつけたのですが……司馬遼太郎さま、ごめんなさい……!
 

 

 

 

  住人でごった返す玄関ホール。

 

 

  特に両壁際に「椅子」があるので人が集中しているのだが、もちろんそれだけでは足りずに沢山の人が立ったままお喋りをしている。

 

 

 

  その「スキマ」を通って玄関に行く訳だが、エレベーターを降りた母は……!

 

  母はムッとした顔のまま、最初に笑顔を向けてくれた女性の真反対に顔を向けて一目散に歩き出した。

 

 

  いや、真反対どころかわざわざ顎を上げ露骨に頭を斜め上に上げたままの、妙に不自然な状態で私の前を足早に歩き出したのだ。

  (因みに今いる「ケアハウス」でも似たような態度らしい…姉談)

 

 

 

  いつも思うのだが「そういう時」……母の足取りは妙に軽く、素早くなる。

 

 

  普段は

 

  「歩くのも、息をするのも苦しいんだっ!」

 

  …というほどの人「らしい」のに。

 

 

 

  誰にも挨拶する気配もなく速足で外に出て行ってしまった母を追い駆け、私も結局誰にも話し掛けることもなくホールを通り過ぎた。

 

 

 

  いや、それまでの経験から「そういうこと」を平気で出来る人だ、というのは判っていたが、特に久し振りの「一対一」で、これがそれまで散々

 

  「愛想が無い!」

 

  …と私を怒鳴りつけたヒトの態度か?……と改めて呆れた訳だが、もっと呆れたのは外に出てからだった。

 

 

 

  先に外に出ていた母は私が近づくと第一声でこう叫んだのだ。

 

 

 

  「何さアンタッ!

 

 

 何でチャンと挨拶しないのさっ!!

 

 

 愛想悪いねっ!!!」

 

 

 

  …まさに「どの口が言う?」だが、伊達にそれに生まれた時から付き合っている訳でもない。

 

 

 

 

  私は「妙に落ち着いた」低い声でゆっくりと

 

 

 

  「アナタが、

 

  しなかったから、

 

  ですけど?」

 

 

 

   …そう、母の基本は

 

 

  「自分の思い通りにしろ!」

 

  =「自分のする通りにしろ!」

 

 

   …なのだから、文句の言いようもない。

 

 

 

 

  そう考えての一言だったのだが、案の定その時の「母の返事」

 

 

「…ゴニョゴニョゴニョゴニョ……」

 

 

  …で終わってしまった。

 

 

 

  やれやれ……と思いつつタクシーに乗ると、母は早速運転手さんを相手にお喋りを始めた。

 

 

 

  そう

 

 『私の為に』わざわざエゲレスから来てくれた娘

 

  …に関する『おとぎ話』である。

 

 

  

  それで直ぐ機嫌良くなった母であったが、何と目的だった地元チェーンの回転寿司店は『お盆休み』だった。

 

 

 

  私はああ「そういう時期」だったな~と思うダケだったが、もちろん直ぐ「次」に行けるほど土地勘がある場所ではない。

 

  普段「ほぼ引き籠り」の母も似たようなものである。

 

 

 

  すると運転手さんが

 

  「あそこなら開いているかもしれない」

 

  …と言ってくれたので急遽全く情報が無い回転寿司店に行くことになった。

 

 

  幸いそこは開いていた……のだけれども……!