「我が母」という人 13 母というヒトの『電話マナー』講座 ④ 私としては幸い | コノ国の体裁(カタチ) ~幻像『大英帝国』の住人達~

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 閃いて、まさに!という想いでつけたのですが……司馬遼太郎さま、ごめんなさい……!
 

 

 

 

  先の話で母はその人生の中で「固定電話」しか使っていない、と書いたが細かく言うと正確ではない。

 

 

 

  と言うのも、母がいわゆる「実家終い」をして、姉と同市内とは言え「高齢者用マンション」で一人暮らしを始めた時、「固定電話」と共に「携帯電話(ガラケー)」を姉に

 

  「持たされた」(注;母談)

 

  それはもちろん、建物の外には全く知り合いが居ない、と言える母が外出先で「何かあったら」ということ。

 

 

  中身は「姉の携帯(のちにスマホ)」と通っている複数の「病院」、後は2社ほどの「タクシー会社」の番号が『短縮ダイヤル』で数字を一つ押せばOK、という状態に登録されていた。

 

 

 

  しかし。

 

  母にとっては最初からほぼほぼ「面倒臭い」ものでしかなかった。

 

  先ず何と言っても母は「お喋り」(=自分が一方的に喋ること)は大好きだが、根が社交的な人間では全くない。

 

 

 

 「高齢者用マンション」に引っ越す前からであろうと好きな場所に自分から出掛けたりすることはなく、出掛けるのはほぼ病院と、某COOPの「宅配」で手に入らないものを買いに出る時のみ。

 

 

 引越後はさらに酷く、病院をタクシーで往復する以外、買い物はほぼ全て「宅配」、それ以外で必要なものがあれば週に一回「義務」の掃除に来る姉夫婦に頼んで終わり。

 

 

  一番使っていた「タクシー」ですら、病院の受付で頼めば呼んでくれるし、家からなら固定電話を使えば良いし、何よりマンションの玄関から約50歩で「タクシー乗り場」という環境だったので下手すれば

 

  「手を振れば目の前に来てくれる」

 

  ……状況だったのだから(これは私も実感した)まさに母にとっては

 

  「こんなものっ!」

 

 

 

 

  特に母の攻撃の「タネ」になったのは、姉夫婦が

 

  「自分達の為に勝手に

 

  『親子割引』で契約して、

 

   私に全員の基本料金を払わせている!」

 

 

  …ということだった。

 

 

 

  もっとも、これは母から聞いたダケの話で私は実際の明細書等を確認した訳でもない。

 

  姉は「もちろん」被害妄想だ何だと否定していたが、そも姉は「そういうこと」を全て義兄に丸投げしているヒトだし、義兄はマメではあるが姉以上に

 

 「自分又は自分達が一番トクすること」

 

 …が息をするように出来る人、なので真意の程は判らない。

 

 

 

  とにかく。

 

 

  母の抗議?に対して無視を続けていた姉。

 

  それが単に根負けしたのか、その時期自分の子供達が相次いで独立したことで根本的に契約を変えることにしたのか、ある日突然&やっと「解約」した。

 

 

 

  それが母が今の「ケアハウス」に転居する切っ掛けとなった転倒&骨折からのリハビリ入院となる日の半年程前だった。

 

 

 

  ここでも少し書いたが「ケアハウス」に入居するまでは結構バタバタしていたし、母は「そういう時」にはいつもハイになってしまうので冷静……というか「いつも通り」の判断は出来ない。

 

 

 

 

  「ケアハウス」に入居して半年近く過ぎた時だろうか。

 

 

 

 (母が)

  「アンタと話したいから電話を引いて欲しい、

 

   って言っているんだけど、

 

   ど~する~???」

 

 

 

  相変わらず「機転が利く」「行動力がある」という言葉からは一番遠い位置に住む姉から連絡が来た。

 

 もちろん?その言葉は冗談っぽく

 

  「イイ訳ないよね?」

 

  …という雰囲気があるだけマシ!と言えたかもしれないが、私が逆の立場だったら「その場」で終わらせる話でしかない。

 

 

  ホント、常に「責任を押し付けられる相手」が必要な人間に「成長」という言葉は無いんだな……とつくづく思う。

 

 

 

 

  「謹んでお断りします」

 

  …と書いた後に

 

  「ケアハウスでは個人の電話は持てません、

 

  とか何とか上手く言っておいてください」

 

  …と続けた。

 

 

 

  第三者的絶対権力=「規則」には従う母で良かった、と思う。

 

  と言うか、あのまま「携帯電話」を持っていたら、『また』料金など気にせず『毒電』を掛け巻くって来たかもしれない、と考えるとゾッとする。

 

 

 

  母というヒトの思考回路&ハイテク基準が「昭和初期」から更新されていないことに今は感謝しかない……!