函館ワンニャン物語 ⑨ | 南北海道動物愛護ネットワーク みらい

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主に函館市近郊で、捨てられた犬や猫の保護、里親探しを目的に活動している動物保護団体です。
毎週日曜日、美原のパチンコ富士3階にて譲渡会を開催しております、譲渡は、もちろん見学もどうぞ。

『函館ワンニャン物語』 ⑨ ~譲渡会 1~


◆館岡家宅居間(夜)

  
洋一と聖子は、テレビを見ながら居間でくつろいで
  いる。
  その時電話が鳴り
、聖子が電話を取る。
  
電話の相手は、アニマルレスキューの代表である。

子「あなた、代表さんから電話。」

  聖
子から電話を受け取る洋一。

洋一「はい。どうしましたか。」

代表「お願いがありました。私のたっての希望なんです
   が、譲渡会を何とか、野犬抑留
所で行いたいんで
   す。」

洋一「譲渡会を抑留所でですか。」

代表「はい、そうです。何年も前から保健所の担当には
   話をしてきたんですが、どうも
首を縦に振らない
   んです。抑留所ですから
当然、処分を待つ犬・猫
   がいるということ
で及び腰なんですよね。私は逆
   にその状況
を、一人でも多くの人に知ってもらい
   たい
んです。そこで、先生のお力をお借りした
   と思い電話をかけさせてもらいました。」

洋一「分かりました。保健所の担当の人と話をしてみま
   す。」

代表「先生、よろしくお願いします。」

洋一「はい、それでは失礼します。」

  
洋一は電話を置く。

子「代表さん、どんな用事?」

洋一「譲渡会を抑留所でやりたいんだって」

子「抑留所?あんな山奥で?」

洋一「抑留所の実態を一人でも多くの人に見てもらいた
   いらしい。」

子「でも、あんな場所にみんな来るかなあ。あんな山
   奥に、車でもないと来れないん
じゃない。」

洋一「今回は、人が集まる、集まらないよりも、一人で
   も多くの人に抑留所を知っても
らうことが目的だ
   と思うよ。」

子「それで、あなたにどんなお願いをしたの。」

洋一「保健所との交渉係りかな。明日にでも、保健所に
   行って、話しをしてみるよ。」


◆保健所

  洋一と担当者が話をしている。
  洋一は道徳の授業以来、保健所の担当者とは学校教
  育という立場でつながりを持っていた。
  そのつながりを頼りに代表は電話をよこしたのであ
  る。
  抑留所開催に弱腰の担当者に対して、洋一は抑留所
  で譲渡会を開催する意義を説明し始める。


洋一「先日の道徳の公開授業の際には、いろいろな資料
   を用意していただき、本当にあ
りがとうございま
   した。」

担当「どうでしたか。あのパンフレットは役に立ちまし
   たか。」

洋一「もちろん役に立ちました。本当にありがとうござ
   いました。パンフレットもそ
うなんですが、抑留
   所のビデオは子供たち、
保護者にとって、かなり
   のインパクトがあ
ったようです。」

担当「と、いいますと?」

洋一「抑留所の檻の前に立つ映像で、授業を終えたんで
   す。そして、子供たちに投げか
けました。あなた
   ならどうするかというこ
とを」

担当「子供たちからは、どんな答えがでてきたんです
   か。」

洋一「その場での答えは、敢えて発表させませんでし
   た。自分の心に問いかけ、真剣に
考え、答えを
   出してほしかったのです。」

  
洋一は、担当者の顔を覗き込み、話を続ける。

洋一「その後、子供たちや親からの反響がすごかったで
   すよ。中には、抑留所に実際に
行ってみたい、と
   いう声もありました。」

担当「抑留所にですか。かなり山奥ですよ。子供たちだ
   けでは、無理でしょう。」

洋一「そうです。無理です。」

  
その答えを待っていた洋一は、すかさず話し出す。

洋一「そこで、今回の譲渡会を抑留所で開催したいんで
   す。そうすれば、子供たちは親と一緒に来ること
   ができます。また、多くの人に抑留所を知っても
   らうことにより、捨て犬、捨て猫の数、処分され
   る数も減っていくことにつながると思うんです。
   ですから、是非お力をお貸しください。お願いし
   ます。」

  
担当者はしばらく黙っていたが、やがて意を決して
  話す。

担当「分かりました。上司に相談してみましょう。」

洋一「どうかよろしくお願いします。それでは、これで
   失礼します。」

  
洋一は頭を深々と下げ、保健所を後にする。


(「函館ワンニャン物語 ⑩」へ続く・・・)