函館ワンニャン物語 ⑤ | 南北海道動物愛護ネットワーク みらい

南北海道動物愛護ネットワーク みらい

主に函館市近郊で、捨てられた犬や猫の保護、里親探しを目的に活動している動物保護団体です。
毎週日曜日、美原のパチンコ富士3階にて譲渡会を開催しております、譲渡は、もちろん見学もどうぞ。

函館ワンニャン物語 ⑤ ~ムック~


◆湯の川温泉街

  
6月の下旬、晴れ渡った空のもと、聖子がラブを連
  れて散歩をしている。
  
ふと見ると向かいから、むく犬が一匹で歩いて来る

聖子「ラブ、だめ!おいで!」

  
聖子はリードを強く引き、ラブを小路に連れて身を
  隠す。
  好奇心旺盛なラブ
は、むく犬の方に行こうとするが
  
聖子が強く抑える。
  
やがて、むく犬は行ってしまう。


◆大森町慰霊堂付近(十日後)

  
仕事に向かう途中、聖子は野良犬を見かける。
  よく見ると十日前に散歩で出
会ったあのむく犬であ
  る。

聖子「あっ、あの犬・・・」

  
車を停め、むく犬が慰霊堂の方に歩いて行くのを確
  認する。


◆館岡家宅(夕食時)

  聖
子が、気になっているむく犬の話を始める。

聖子「十日前にね。湯の川の黒松林のところで、むく犬
   に出会ったのよ。」

洋一「今時、むく犬って珍しいんじゃない。」

聖子「それが、離れていたの。私、ラブの散歩中だった
   から、ケンカすると困ると思っ
てラブを引っ張っ
   て隠れたんだけど・・」

洋一「それは賢い。ケンカして怪我でもしたら、大変だ
   からな・・・。」

子「そのむく犬、そのまま居なくなったんだけど、実
   はね、そのむく犬に今日また
会ったのよ。」

洋一「へえー、どこでさ。」

子「慰霊堂のところ、慰霊堂の近くの川の土手あたり
   を歩いてた。もちろん一匹で。
近くに人は確かい
   なかったと思う。」

洋一「それで、どうしたいの。」

  聖
子の顔をのぞきこむ。

子「何か、すごく気になって。明日、休みでしょう。
   慰霊堂に行ってみない?」

洋一「聖子がそこまで言うなら、しかたない、行ってみ
   るか。」


慰霊堂付近

  
慰霊堂付近を捜索。
  やがて、自転車に
乗っている人を吠えながら追いか
  けて
いるむく犬を見つける。
  
自転車がある場所から一定の距離離れると、追いか
  けるのを止め、自分の縄
張りに戻っていく。
  縄張り内に自転車
が来ると吠えて追い出しているら
  しい。
  
よく見ると、むく犬の近くにもう一匹柴犬がいる。
  柴犬を守っているつもり
なのか。
  その後、二頭で車庫の床下に
入って行った。

子「いた。あの犬、あれがそう。」

洋一「ずいぶん、吠えまくってたけど。もう一匹柴犬も
   いたな。」

  
しばらく様子を見る。
  自転車が通りか
かる度に、床下からむく犬が出て来
  て
は吠えている。

洋一「さあ、どうする?」

子「近所の人に聞いてくるわ。」

  
むく犬と柴犬が隠れている車庫の隣の家を聖子が訪
  ねる。
  
洋一は、むく犬と柴犬の様子を見守っている。
  
間もなく聖子が洋一のところに戻る。
  
柴犬は、ひと月前くらいからこの辺に住みついてい
  たこと、そこに一週間前
からむく犬が来て住みつい
  たこと、ま
た近所からは、保健所に連絡を入れ捕獲
  してもらおうという声もあがって
いて、柴犬は自分
  で飼おうと思ってい
るが、むく犬までは飼えないと
  いうこ
とを伝える。


◆館岡家(居間)

  
洋一と聖子の周りには、ラブ、クロ、ウル、ゴン太
  の4頭の犬がいる。
  猫も
数匹その傍らで寝ている。

子「どうしよう」

洋一「どうしようって、どうする?」

  
洋一が、お茶を飲みながら聞き返す。

子「経済的にはもうかなり苦しくて、お金の余裕なん
   てもちろん無いんだけど、この
ままだとあのむく
   犬、保健所に連れて行か
れてしまうと思うと・・
   ・。」

  
洋一は黙ってラブとクロがじゃれている様子を見て
  いる。
  聖
子が、ゴン太の頭をなでながら、自分に言い聞か
  せるように話し出す。

子「ここにいる犬たち、みんなそうなんだけど、私た
   ちと運命的な出会いがあって、
ここにいると思う
   の。もし私たちと出会
っていなければ、4頭とも
   おそらく今は・
・・」

洋一「おそらく・・・、ではなく、間違いなく処分され
   ていたと思うよ。それは、間違いなくね。」

子「あのむく犬との二度の出会いは、運命を感じるっ
   て言うよりも、もう奇跡的出会いだと思うの。」

洋一「だから? だから助けるって言うんだろう。家で
   飼いたいって言うんだろう。」

子「そう。だめかなあ。」

洋一「だめかなあって、もう飼うしかないだろう家で・
   ・・、そうと決まったら早速動くか。」

  
その日から毎日、むく犬に餌をやりに慰霊堂まで出
  かけた。
  一ヶ月後、何と
か洋一と聖子に慣れてきたむく犬は
  『ムック』と名付けられ、飼われることとなった。
  その日は、ちょうど函館
港祭り、花火大会の夜であ
  った。

(「函館ワンニャン物語 ⑥」へ続く・・・)