木村林太郎ブログ~リンタウロスの森 -4ページ目

FOREST BABY 秋の北海道ツアー

FOREST BABY「ケルト歌めぐ2023秋~北海道編」

10/6(金)江別・大麻
えぞりす亭
江別市大麻東町13−36
18:30open/19:00start
2500円(1ドリンク込み)
出演
寺田侑加(アコーディオン、歌)
鳥井麗香(歌)
木村林太郎(ケルティックハープ、歌)

10/9(月・祝)富良野
野良窯カフェ・ノラ
富良野市下五区
19:00start
入場無料/任意の投げ銭制
出演
寺田侑加(アコーディオン、歌)
岡本千佳(バウロン、笛、歌)
権藤英美里(フィドル、歌)
鳥井麗香(歌)
木村林太郎(ケルティックハープ、歌)

10/10(火)札幌
のや2nd
札幌市東区北12条東5丁目1−17
18:30open/19:00start
2500円(1ドリンク別)
出演
寺田侑加(アコーディオン、歌)
権藤英美里(フィドル、歌)
鳥井麗香(歌)
木村林太郎(ケルティックハープ、歌)
ゲスト 小松崎健(ハンマーダルシマー)
※この日「のや2nd」でお食事の提供はありません。

ご予約:rintauros@gmail.com


夏の終わりに西日本ツアー

【演奏情報】
8/31(木)岡山県・白石島
9/1(金)島根県・松江WATER WORKS
(以上ufull & DoooRinn)

9/2(土)京都・ウッドノート
9/3(日)大阪・time blue 
(以上FORESTBABY)

美しい旋律と言葉を運びます。ぜひお付き合い下さい!


アヌーナとイタリアへの旅2023

8月4日から6日までの三日間、イタリアは北部アペニン山脈の中腹の小さな町Pavulloで行われたAnúnaのサマースクールに参加しました。この町に来るのは2019年、2022年に続いて三回目です。今年は自分にとって航空券の高さも円安も物価高も目を覆うほどひどいもので、ギリギリまで参加を躊躇していました。しかしこれに行かなければ一生後悔するに違いないという変な確信があり、最後の最後に飛び乗りました

ウクライナ戦争の影響で依然としてヨーロッパへ飛ぶのにはかなりの遠回りを余儀なくされますし、体力的にも金銭的にも例年以上に困難が重なる中、なぜそれを乗り越えてまでこのスクールに参加したかったか。理由は一つではありませんが、とにかくそこにとても会いたい人々がいるから、というのが最も大きいです。2019年3月に初めてこの町で行われたAnúnaのマスタークラスに参加した時、自分はそこにあった濃厚で思いやりに溢れた人と人とのつながりにとても感動し、心揺さぶられました。Pavulloはたとえば「ニューシネマパラダイス」の舞台シチリアからはだいぶ遠いですが、いくつかのイタリアの名画を観て長年憧れていた、個としての美しい人間性、そして相手を深く思いやる関係性がそこに溢れていました。もちろん日本にもそれは多々あります。しかし、ゆとり、ユーモア、会話(やスキンシップ)を大切にする彼らのコミュニケーションは、自分にとっては日本では滅多に感じられない、成熟した、とても心地良いものです。これはアイルランドも似ていると思います。
そんなコミュニティの一員に加えてもらい、大好きなAnúnaの音楽を追求し、歌う。これが自分にとってどれだけのことなのかは、とても言い表せません。一年のうち数日でもこんな時間を過ごせるなら、それだけでもう幸せな人生です。
自宅から30時間に及ぶ長旅の末、Pavulloへと登ってゆくバスがModenaのバスステーションを出発する時、自分の心は大きく弾みます。今年のPavulloは概ね最高気温23℃、最低12℃というとても爽やかな陽気でした。サマースクールの本拠地であるアカデミアへと緑に包まれた坂を登り、扉を抜けて、大好きな人々に再会する瞬間の至福。そして新しい出会い。
とても誠実なLucyの挨拶と説明、Michaelのさりげない登場。次第に熱していく空気。耳慣れたAnúnaの曲も、イタリア人主体で歌われると響きや色がずいぶん変わります。Michaelの美しさに笑い、時々毒も入り混じった魔法のディレクションで、音に、言葉にどんどん生命が吹き込まれます。何度体感しても(八度目…)新鮮で刺激的で最高に楽しい時間。
今回はアヌーナ曲に加えて二つのイタリアの曲もリストにありました。特にはるばるこの国までやって来た自分にとっては、その地の音楽を歌えるのは意義深いもの。同じバッソ(ベース)で素晴らしい経験と歌声を持つLauroとLucioの発音に耳を澄ませながら、響きを楽しみました。
リハーサルの休憩中は、坂の下の水汲み場まで行って、ボトルを新鮮で美味しいPavulloの湧水で満たしました。この町ではミネラルウォーターを買う必要はありません(スーパーやタバッキにはたくさんのペットボトルが並んでいますが)。ロングブレイクには、その都度誰かについてレストランや惣菜のテイクアウト店に行き、エネルギーを補充しました。アカデミアの居心地の良い中庭で、心地良い風に吹かれ、向こうの丘を眺めながらリハーサルの再開を待つのも、贅沢なひとときでした。つまりすべての時間が至福だったという訳です。
大好きな人々と、音楽と、陽気で美しいイタリア語の響きに包まれた三日間。最終日の夜のコンサートで我々は7つの曲を歌いました。One last songは混声バージョンだとベースの声域もテナーに近く、男声で歌った時と感覚や感触がまるで違います。約80年前に灼熱のグァムの戦場で、遥か東京に残してきた家族を強く想いながら死んで行ったであろう我が祖父の最期が、せめてこんな穏やかな響きに包まれたものであったなら。
Siúil a Ruinは、VoxtoneのCDでも繰り返し聴いてきたSylviaの美しい歌声に声を重ねることができて夢のようでした。そしてThe Raid。あまりにもかっこいいFlavioとMaximilianoのツインギター。Massimoのソロ、みんなの情熱。この曲の数分間のためだけにでも、はるばる10,000kmの彼方までやって来た甲斐がありました。
コンサートには我々の他にMassimo率いる地元のフォークバンドVoxtone、そしてLucio率いるEnsemble Augustaも出演し、教会に集まった人々を魅了しました。あまりにも素敵な時間、しかしコンサートの終わりはこのかけがえのない一期一会のコミュニティの離散の時。記念撮影で年甲斐もなく涙腺が緩みそうになりましたが、そこは何とか笑顔で。折に触れて、この写真に収まっているみんなの顔を見返すことになると思います。
まあ、すべてがとにかく高かったんだ、という言い訳を添えつつ、日本にいる大切な家族や友人たちに、まともな土産も買えていません。せっかくイタリアまで来ながら…しかし、どんな高価なアクセサリーや香水よりもずっとずっと美しい、イタリアの、そしてAnúnaコミュニティの人々の思いやりやユーモアを、自分は今、確かに身にまとっています。これらは、ドイツ人ながら長くローマで活動していたミヒャエル・エンデが大切にしていたものに近いかもしれません。そして、MichaelやLucy、Massimo、共演のみんなが与えてくれた新しい響き。我ながら底の抜けたボトルのようなものだと自覚しているので、それらはどんどんこぼれていってしまうかもしれませんが(おい)、せめてそういったものを少しでも日本に持ち運ぼうと思いながら、ミラノから帰りの飛行機に乗り込みました。
去年に続いてこんなに素晴らしいコミュニティを作り出してくれたIvanaとMassimo、MichaelとLucy、共に過ごしてくれたすべてのみんなに心からの感謝を捧げます。特に、ギリギリまで参加を躊躇していた自分を引きずり出してくれたReikaにも。みんなに、そして今回は会えなかった大切な友人たちにもまたいつか会えるように、これからコツコツ頑張ります。Ciao.