先に「国としての人口の社会増」について書いたら、「人口が減って、日本にとって適正な規模の人口になる事は良いのではないか。」という趣旨のご指摘を複数頂きました。

 

 私の結論は「私の世代(団塊ジュニア)がこの世の中から居なくなる頃にはそれなりにフラットな社会になっていると思う。そこまではとても、とても苦しい。」というものです。国の借金が膨大であり、人口ピラミッドが歪な構図の内は人口減少が塗炭の苦しみとなってきます(というか、人口ピラミッドが歪だから人口減少するのです。)。

 

 国の借金が膨大で、かつ増加傾向なのに、人口が減るという事は、国民一人当たりの将来負担が上がるという事になります。

 

 そして、先日、NHKスペシャルで「縮小ニッポンの衝撃」という番組をやっていました。とても良い番組でした。その中で2050年頃には日本の人口ピラミッドが「棺桶型(shape of coffin)」になると表現されていました。どういう形かは上記のリンクを見ていただければと思いますが、正に棺桶の形になります。そして、70代後半から80代くらいの一番膨らんでいる部分は、正に私の世代、第二次ベビーブーム世代です。今よりも更に高齢者の比率が高い世の中だという事は分かっていただけるでしょう。

 

 これらをすべて合わせると棺桶型の人口ピラミッドの社会は、とても負担の重い社会です。そして、そこに向かって今度日本は進んでいくわけです。

 

 そもそも、日本社会はこれまで人口ボーナスを享受してきました。労働力増加率が人口増加率より高い事で経済成長が促進され、かつ高齢者の社会保障等に向けるお金が少なくて済むという事です。とてもゲスな例を挙げると、年金福祉事業団が全国に作って大失敗した「グリーンピア」、あれは人口ボーナスがあってお金が余ったから可能だった事です。その他、社会の隅々で日本社会は人口ボーナスをかなり享受しました。つまり、これからはその逆である人口オーナス(負担、重荷、つまりマイナスのボーナス)の世界に入ってきます。

 

 今でも人口ボーナスが享受できる前提で様々な制度が組まれているため、人口減少社会になると、若い世代に強烈なしわ寄せがいくようになります。「世代間格差」です。これについては、私がその見識を評価して止まない法政大学の小黒一正教授のインタビュー記事が示唆的です。私より若い方に是非、是非見てほしい記事です。「受益マイナス負担(つまりどれだけ得するか)」が今後、マイナスになっていくという事です。

 

 人口減少そのもの+人口構造の更なる高齢化で負担が増えるのみならず、制度が人口減少に追いついていない事も相俟って、若い世代にはダブルパンチ状態です。

 

 政治の役割はこれを是正する事です。2016年に年金制度改革法案が国会で審議されました。当時の民進党は「年金カット法案」と呼んでいましたが、私は絶対にその呼び名を使いませんでしたし、批判する事も厳に避けていました。上記のような世代間格差を是正するためには、ある程度の是正策は必要だと思ったからです。当時の塩崎厚生労働相の法案説明はあまり上手くはなかったし、将来ビジョンを上手く語れていたとも思えません。若干の法案微修正はあり得たと思っていますが、世代間格差を是正する必要性は絶対に否定できないと痛感しました。

 

 この世代間格差の是正は、高齢者の方に嫌われる政策です。そして、残念ながら広く若者の方に火を点けるにも至りません。なので、選挙の観点からすると言えば言う程マイナスです。しかし、そういう政治家の姿勢が日本の将来像を誤らせてきたのだと思います。

 

 ちょっと脱線気味でしたが、私の趣旨は、人口減少(+人口構造の高齢化)は今後ずっしりと社会全体に負担増という形で乗ってくる、世代間格差の是正に踏み込まなければ更に将来世代は苦しくなる、これらが一息つけるようになるのは「私(の世代)が死んだ後」という事です。