答弁書が11本返ってきました。非常に興味深かったです。衆議院のサイトにアップされるのは、もう少し後なのですが、大まかなところを解説します。また、衆議院サイトにアップされたら個別解説をします。

 まず、「検討したことがないので答えられない」というのがありました。

議員等の世襲
憲法解釈の変更

 過去の答弁でそういう言い回しがあったのかなと思って調べたところ、私が見た限りでは、1つしかありませんでした。検討したことがなければ、合憲性について答えないというのも変な話ですが、それくらい嫌な質問だったということでしょう。特に「憲法解釈の変更」は、単に論理的な帰結を聞いただけなのに逃げるというのはおかしな感じがします。

 同じく答えるのが嫌だったんだろうな、と思わせるものがありました。

日本国との平和条約
 一と二については「はい、そうです。」でした。東京裁判の「裁判」の定義を引っ繰り返そうという意図はないということは確保できています。ただ、三と四についてはほぼゼロ回答でした。
 特に三については答えたくないんだろうなということを窺わせます。「裁判」の定義については明らかにしておきながら、受諾した裁判はその定義どおりですよね、と聞いたら、そこは答えないというギリギリの逃げ方です。

請求権
 国家間の請求権とはどういうものかということについて、一概にお答えできないという答弁でした。ただ、請求権放棄とあれだけ言っているのに、その射程とするところを答えないというのは変ですね。答えたくないんだろうという意図を窺わせました。
 ただ、三については、個人請求権裁判に条約締約国が関わることはダメだという答弁でした。

法令等の解釈
 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではない、ということでした。結構、明らかだと思うんですけどね。これも、個別法令の運用で、例外を拡大解釈しているところがあるので、答えたくないのだと思います。

 そもそも、ポイントが完全に外れているものがありました。

輸出補助金
 質問のどこにも「WTO協定」なんて言葉が出てこないのに、答弁はWTO農業協定の解説だけでした。国際貿易論ではスタンダードな理論なのに、それすら裏付けしようとしないのは、TPP交渉への影響を恐れているのだと思います。

 それなりに答えてくれていたものも勿論あります。

ILO第88条条約の解釈
 基本的には「政府としての具体的方針は決まっていない」と答えてくれていないのです。単に条約とハローワークの地方移転との関係を聞いているだけでして、私は政府の方針など聞いていないのです。ただ、「direction」という単語に「指揮監督」という表現を充てているケースは極めて僅少であることを窺わせる答弁でした。
 私の問題意識は「directionという言葉に『指揮監督』という言葉を充てたが故に、その結果として『指揮監督』という日本語が拡大解釈されて、『ハローワークは国管理でなくてはならない』という結論が導き出されている。それは変だ。」ということです。

国家貿易
 答えは「はい、そうです」でした。日本は条約を遵守していますよね、という質問ですから、当たり前といえば当たり前です。ただ、ここからの広がりは相当なものがあります。

外国人技能実習生制度
 当たり前といえば当たり前ですが、「技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力すること」と目的とする制度、という答弁でした。
 ただ、現場を見ていて、「本当にそうかな」と思う事例が散見しているのは、多くの方が知っていることです。

臨時財政対策債償還
 すべて真正面から答えてくれています。地方交付税で「臨時財政対策債償還」として割り当てられている額より、実際に償還(減債基金)に割り当てている額が少ない自治体がこんなにも多いのかと驚いてしまいました。福岡県は395億4757万2千円で全都道府県の中でトップでした(涙)。ただ、北九州市はありませんでした。
 しかも、「臨時財政対策債の満期時においてその元金償還のために減債基金以外の財源が必要となることもあり得る。したがって(略)、減債基金への計画的な積み立てを行うことが財政運営上適切である。」と指摘しています。他目的使用はしないでね、と政府からのお達しが出たものと受け止めています。

 私の問いが悪かったものもありました。

一般法人
 大半が「●●の意味するところが明らかでない」という答弁でした。これはたしかに私の不手際です。もう少し練って考えます。

 概ねこんな感じでした。政権側の苦悩と苦労が見え隠れするものが多かったです。逃げられた質問が多かったですが、「何故逃げるのか」という意図を窺わせるものが大半でした。

 勿論、これらは主意書答弁で終わりではなく、むしろ今後の委員会質問等での基礎情報です。良い下調べになりました。