先日来、経済連携との関係で日本の関税率の話をずっと書いてきていますが、このエントリー のコメントで無さんが「こちらの攻めどころ」についてのご指摘をしておられました。ルールの分野ではあれこれと思いがあるのですが、やはりここは関税の分野からスタートしてみたいと思います。ちょっと数字の列挙になるので無味乾燥っぽく見えるかもしれませんが、意外に重要なところなのでご容赦ください。
まず、既に経済連携協定があるにもかかわらず、関税撤廃の除外となっている品目がある程度残っている国があります。その中でも日本として関心の高いものを列挙してみます。ベトナムはTPP参加国、メキシコは参加に向け手を挙げている状態(日本と同様)です。これを見てもらえばわかりますが、経済連携協定があるから既に関税の問題は解決しているということにはならないのです。その理由は簡単で、日本がこれまで締結してきた経済連携協定がハイスタンダードではなかったので、どうしても取れないものが出てくるのです。
● ベトナム
乗用車:78%
バス:70%
トラック:68%
二輪車:75%(16年目に50%に引き下げ)
冷延鋼板:7%
● メキシコ
バス:20%
トラック:20%
また、既に経済連携協定があり、相手国は撤廃にもコミットしているのだけども、撤廃までの期間(ステージング)が比較的長い品目があります。TPP参加国について、主たるものを列挙してみます。これも「いずれ撤廃されるからいいじゃないか」ではなくて、他の競争相手国(韓、中等)とこれらの国との経済連携協定を見た上で、仮に他の競争相手国に対しての方が撤廃が早く行われるのであれば、日本のシェアを食い散らかされるおそれがあるので、場合によってはTPP等の場で議論をリオープンして、ステージングを短くする努力をしなくてはなりません。
● ベトナム
液晶テレビ:18%(8年で撤廃)
蓄電池:25%(10年で撤廃)
エアコン:28%(15年で撤廃)
冷蔵庫:28%(15年で撤廃)
● マレーシア
乗用車:15%(9年で撤廃)
トラック:15%(9年で撤廃)
二輪車:12%(9年で撤廃)
冷延鋼板:18.2%(10年で撤廃)
蓄電池:3.1%(7年で撤廃)
エアコン:3.8%(7年で撤廃)
冷蔵庫:3.8%(7年で撤廃)
● ペルー
乗用車:6%(9年で撤廃)
二輪車:6%(9年で撤廃)
蓄電池:6%(9年で撤廃)
冷蔵庫:11%(10年で撤廃)
● チリ
熱延鋼板:3.2%(12年で撤廃)
冷延鋼板:3.2%(12年で撤廃)
また、既存の経済連携協定がない国の中で、現在、TPPに参加している(米、豪、ニュージーランド)、あるいはTPP傘下に手を挙げている(カナダ)国々との関係で主たる関心品目について列挙してみます。
● 米国
乗用車:2.5%
トラック:25%
二輪車:2.4%
自動車部品:2.5%
液晶テレビ:5%
蓄電池:3.5%
ベアリング:9%
エアコン:2.2%
● 豪州
乗用車、バス、トラック、熱延鋼板、自動車部品、液晶テレビ、蓄電池、ベアリング:すべて5%
● ニュージーランド
トラック、自動車部品、熱延鋼板:すべて5%
● カナダ
乗用車:6.1%
バス:6.1%
トラック:6.1%
自動車部品:6%
液晶テレビ:5%
蓄電池:7%
エアコン:6%
冷蔵庫:8%
鉄鋼の町選出の議員としては、熱延鋼板、冷延鋼板と言われるとピンっと来るところがあります。勿論、自動車、機械、電機についても特別の関心があります。
これらは代表的なものばかりですが、この他にも関心品目はたくさんあります。上記にも書きましたが、既存の経済連携協定で取れてないもの、撤廃までのステージングが長いもの、これから新規に取りに行きたいもの、あれこれありますけども、何処かで意を決して新しい経済連携戦略を立てて、何を取りに行くのかを明確にした上できちんとスケジュール感を持たないといけません。