SMAPの草彅剛さんの件で、世間が盛り上がっていますね。その関連で鳩山総務大臣の「最低の・・・」という発言が反発を招いています。そのことについては、あえてコメントしませんが、まあ、鳩山大臣はこれまでもその直截的な発言が色々な意味で反響を巻き起こす方です。「なるほど」と思えるものもあれば、「ちょっと如何なものか」と思えるものがあります。
その中でも有名なものに「友達の友達がアルカーイダ」というのがあります。法相在任時に講演で行った発言だったと記憶しています。バリ島爆弾テロ事件について「私の友達の友達がアルカーイダで、バリ島の中心部は危ないから近づくべからずと言われた。」という趣旨でした。これが非常に批判をされたということでしたね。
まあ、たしかに法相がそういう発言をすることは変な誤解を招くし、そもそもテロ事件を事前に分かっていたのなら防止のための措置を取るべきであったでしょうし、その友達の友達が入国していた事実を知っていたのなら法相として措置を取るべきであったでしょう。そういう点で不注意だし、問題発言だとは思いました。ただ、当時、疑問に思ったのが「友達の友達がアルカーイダである事実」自体を批判する論調が散見されたことです。さすがに新聞ではそういう記事は殆どなかったような気がしますが、テレビでは識者めいた人のコメントとして「そんな危ない人間が友達の友達だなんてケシカラン」的なことが結構あったのを覚えています。
ピンと来にくいと思いますが、「友達の友達がアルカーイダ」というのは、少し中東、南アジア、東南アジアと馴染んでくれば、あり得ないことではないというのが私の見解です。卑近な例になりますが、mixiというソーシャルネットワークでは「友人の友人」みたいなカテゴリーがあります。私の友人(マイミクシィ)に当たる方が210名以上おられますが、その先にどういう人が「友人の友人」なのか、私には把握しかねるところがあり、もしかしたら私の目で見て反社会的な方もいるかもしれません。仮に私の友人が反社会的な友人を持っていることを知っていたとしても、その友人との関係を切るわけでもありません。それは私のコントロールできる範囲を超える世界です。
今、私が「自分の友人にはアルカーイダ関係者がいる」という方と知り合ったとしましょう。私はその事実を持って、その方との人間関係を結ばないという選択はしないと思います。むしろ、情報源として接近することすら考えます(勿論、裏を取った上でですが)。その結果、「友達の友達がアルカーイダ」となったとしても、自分としては何らお天道様に恥じるところはありません。ただ、そのことを周囲にペラペラと吹聴することはしないだけです。
ましてや、例えばアフガニスタンなんかに人脈ができれば、すぐに「自分の友人にはタリバーンがいる」みたいな人に出くわすでしょう(タリバーンとアルカーイダを同一視しているわけではありません)。中東の幾つかの国でディープな人間関係ができれば、「実は俺の友人は今、アルカーイダだ」という人に出会うことはあるでしょう。パキスタンでは、「自分の友人が今、ラシュカル・エ・タイバ(カシミール分離独立を主導するイスラム主義団体。アメリカはテロ組織と認定。)で頑張っている」と誇らしげに語る人に出会うのは想像するほど難しくはないかもしれません。もっと言えば、かつて書いたように(ココ )「アルカーイダ」と言っても有象無象であって、まあ何処までその「自称アルカーイダ」が意味あるものなのかも分かりません。
ということで、あの有名な「友達の友達がアルカ-イダ」発言ですが、あれの何が悪いのかということはよく考えておく必要があります。
・ 面白おかしく話したことによって、法相発言としては誤解を惹起しやすかった。
・ 法相として防止するための措置を講ずるべきだった(これは難しかったでしょうが)。
・ そのアルカーイダ関係者が日本に入国していたのであれば、そこに法相として拘束等の措置を講ずるべきだった(ただし、これは間に入っている「友達」に危害が及びかねないので高度な政治判断になります)。
上記にも書いたとおり、この3つについてはたしかに鳩山発言は批判の対象になります。ただ、「友達の友達がアルカーイダである事実」自体を批判されちゃたまらんなぁ、ということです。政治家にそこまでを求めるナイーブな国は世界にないと思いますね。あの当時の世論を見ながら、「これで日本の政治家が、アルカーイダに友達を持つ友達を作ることを忌避し始めたら、そっちの方が問題なんじゃないか。」と感じたものです。
別に鳩山大臣を擁護する意図はありません。今回の結論は「外に口を開く時は気をつけるべし。事実としては問題がなくても、口にしてはならんことはたくさんある。」というのと、「物事を悪いと批判する際は、何が悪いのかを明らかにすべし。」ということです。本当にただ、それだけです。意外に陳腐でしたね。