現場の論理以上に、
コンプライアンスが強まりすぎた
今では、到底無理なお話です。
保険会社の内勤で勤めていた当時、
年度末のこの時期、膨大な業務量になります。
また、ならないと、予算達成はできません。
その年は、商品の特徴で、競合他社に比べ、
劣勢を強いられていたことから、
全社的には、静かな年度末でした。
東京には、支社が二つ、
チームがそれぞれ二つあり
そのうちの一つを任されていました。
夜も9時が過ぎると、
明かりは、自分たちの上だけとなり、
終わりの見えない業務量と戦いながら、
疲労、焦り、充実感、孤独感・・・、
いろいろな感覚が交じり合った時間を
過ごしていました。
この時間になっても、取引先や他の支社から
電話がかかってきていました。
「うっそ!まだ居たの!?」
電話をかけてきたくせに、出ると驚きます。
夜の9時や10時に電話をかけてくるということは、
そのほとんどが、
已むに已まれず、かけてくるものでした。
「明日の朝一番の提案の資料が足りなくて・・・。」
「お客さんの、今すぐ回答しなくてはいけないのだけれども・・・。」
「今晩中に、FAXを入れなくてはいけなくて・・・。」
こんなのもありました・・・。
「他社のことなんだけど、わかれば教えて欲しくて・・・。」
申し訳ないと思っている方に、
同じ思いで、仕事をしているということを、
伝えたかったので、誰が電話に出ても、
同じようなことを言ってました。
「うちは、さっき朝礼終わったばっかりですよー!」
この言葉を誰かが言うと、
受話器の向こう側に、賑やかさが伝わるように
わざと、皆で奇声を上げて、
盛り上がっていました。
気持ちが途切れそうになっていた方の中には、
涙が出たといってくださった方もいました。
別の支社で、
孤軍奮闘、数字を挙げていた営業マンは、
妬みなども遭って、少し気難しくなっていました。
寂しくなったら、いつでも電話していいぞー!
こちらは、みんな朝っぱらのように働いているから!
という言葉に、
氷土のように頑なに閉ざした心が、
溶けたような笑顔が、
電話口の向こうに見えた気がしたものでした。
電話口で、怒鳴り散らすような、クレームも
よくよく聞いてみると、
その先、
つまり、電話をしてきた人の、お客さんや上司が
怒っていて、電話口の人が、とても困っている
という構図が多々あります。
日本人の、本当のことを言えなかったり、
上手に、伝えられないという気質を考えると、
確かに増えたにせよ、クレーマーという言葉から
受ける印象、そのままの人というのは、
まだまだ少ないのではないでしょうか。
言葉の裏側に潜む気持ちに応えること。
相手の立場や、気持ちを汲むこと。
汲むという動作は、
受け手自らが、手を(相手の心の)泉に
入れて、受け手の思いで、その量、その場所、
その作法で、汲むものだと思います。
心の泉は、誰しも、他人に踏み荒らされたくは
ない場所です。
美しい上澄みを、水面を立てることなく静かに
気づかれないように、そっと
汲みたいものです。