佐々木住職と京都民報社に感謝申し上げます。( ↓ 記事の写真と、本文の転記)
書評 『盲教育史の手ざわり 「人間の尊厳」を求めて』著・岸博実 【京都民報社発行『京都民報』第2971号 2021年2月28日付 掲載】
2018年に、京都盲唖院関係資料が大学以外の学校関係では初めて、国の重要文化財に指定されたのは記憶に新しいところです。
著者の岸博実氏は、1974年から京都府立盲学校に勤務され、現在も引き続き講師として在籍しながら、この盲学校資料室の資料の研究に携わってこられました。
その研究は、日本における盲教育の歴史全般に広がっています。本書は2011年から2019年まで「点字毎日」に連載された文章に加筆・修正されて出版されました。全体は、「凸字から点字へ」、「盲教育の開拓者たち」など10章からなり、それぞれに10数編のエピソードが描かれます。
主には、明治以来の先人たちが苦労して作り上げた盲教育の歴史や、全国各地の視覚障害者の権利保障の運動に尽くした人々の話などが中心ですが、決して堅苦しい内容ではなく、著者の実体験や感想も含めた親しみやすい文章となっています。出てくる固有名詞は、人名だけでも400名近くにのぼりますが、両面見開きに一つのエピソードという形式で図版も配され、大変読みやすくなっています。
個人的には、評者も在職した京都府立盲学校関係の開校当初のエピソードや、「スクール人力車」、「盲人野球」の項にも興味を覚えました。著者自身が13年に国際パリセミナーで発表された「近代日本では当初から、盲学校を福祉政策ではなく教育機関として位置付けて発展させてきた」ことに、海外から驚きの声が聞こえたことなども新鮮に読ませていただきました。
最後の「いのちと安全」の章にある「単に年代やできごとを覚えるだけでは歴史を学んだことになりません。かけがえのない命を守り、輝かせるために史実から何を学ぶかが大切です。」という言葉に、著者の歴史を研究する姿勢、そして本の副題『「人間の尊厳」を求めて』につながる視点が集約されているように思いました。盲教育に限らず、障害者運動関係者必読の書です。
(佐々木正祥・社会福祉法人アイアイハウス理事長、大善院住職)
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