あまりきっちろ行くよりはアバウトでも結果出してます。 | 園原健弘 アドベンチアーズ!
柳沢哲氏(山梨学院大コーチ:シドニー五輪20Km競歩代表)がスポーツ振興くじ(toto)助成による「若手スポーツ指導者長期在外研修事業で1年間オーストラリアに研修に行っているのですが、その模様をFacebookで関係者に毎日報告してくれてます。

それが、いろいろ面白くて大変勉強になります。競歩関係者や科学委員会関係者限定ですのでみなさまには見て頂くことできませんが、差支えにない範囲でみなさんにも何か参考になる部分をピックアップしていきます。

オーストラリアは競歩種目のレベルが高く、世界選手権やオリンピックで何名ものメダリストを輩出しています。

そんな中でも柳沢君の印象では

「練習を繰り返して行くなかで一番難しいのは疲労との付き合い方だと思います。
練習の副産物として必ず疲労が生まれます。
その辺の科学的アプローチが無いなぁと言うのがオーストラリアの印象です。」
ということです。

強化に対しては科学的アプローチをしているが、コンディショニングに対してはほとんど科学的なアプローチがされていない。というところですね。それでもメダリストが多数排出されるので、個人の管理能力が高いという感じですかね。

イメージでは、レースが近づくと上手く手抜きをしている選手の方がいい成績を出している感じがあります。メキシコ人なんかは特にそうでした。


その、個人の管理能力を上手く引き出す方法として、柳沢君の報告の中で面白かったのは

1)練習メニューの与え方
 こちらでは今日の練習メニューは何?っと聞くと
  20kから25kぐらい
  6~8本×2km
  という返事が帰って来ます。
  つまり、きっちりとした距離を決めてません。
  調子が良ければ、多い距離になるというトレーニングです。
  
こんな感じだと、メニューを消化することのみが目的でなくなり、体調とうまく向き合って、パフォーマンスを上向かせて行こうという意識が働くと思います。また、体調が悪かったり、故障気味の時は無理せず、安心して練習を止めるということが出来ると思います。

日本では、まだスポーツに精神的鍛練の要素を求めている方が多いので、練習を途中でやめることは、人格否定くらいの発言をするテレビ解説者もいますからね。もちろん甘えとの境界線を自分で管理できるという大人としての最低条件がありますが。

それでもやりすぎて故障というのが最近のマラソントップ選手のパターンですから。


2)アバウトな感覚

「日本ではロングは通常30kとか35kとか5k単位ぐらいで距離を歩きますが、こっちは31kmとか22kmとか19kmとか、コースによって距離が決まる感じです。
1kのポイントもいい加減でだいたいこの辺という感じで歩きます。もしくは大抵選手がGPSをつけているのでそれをもとにラップを刻みます。もちろん誤差はありますが、気にしません。
それぐらいの気持ちの方が精神的なゆとりを持って練習が出来る気がします。
とかく日本人は、決まりごとの中で練習をしているので、そこから外れた時に弱さが出てしまう。そういう意味でも日本人にも良いトレーニングになるのでは。」


GPSなんかもおおよそで私もいいと思ってます。また、コーチの仕事がラップタイムをしっかり記録する事なんてことになってる場合もありますね。選手の動き見ないで、ストップウォッチと記録用紙とにらめっこなんて。


コンディションぐについては、市民ランナーになんか科学的数値で簡単に示せるものがあるといいですね。(ありますけど。:またそのうち)


柳澤君のこの非公開のグループには、高地トレーニングで有名な杉田先生や我らが法元君もいろいろコメントしています。もちろんそれぞれの個人の企業秘密という部分もありますが、柳澤君は公的な形での研修なので、自分だけのノウハウを貯め込むいいチャンスなのに、敢えてこうして貴重な情報を公開してくれることに、敬意を表します。

あまり日本のためとか思わないで、自分のキャリアを積むためにしっかり貴重な経験をしてきてほしいと思います。