今月中頃から、キューバ映画人たちと文化官僚たちとの対立が目立っています。
発端は、6月10日にキューバ国営テレビが、ドキュメンタリー映画『Fito de La Habana(仮:ハバナのフィト・パエス)』(2022年)をファン・ピン・ビラル監督の拒否を無視して放映したこと。しかも、盗まれた未完成のコピーが使われたというのです。
これに対し、映画人たちが抗議声明文を発表。
現時点で映画関係者を始め600人以上の署名が集まっています。
因みにこの作品、2カ月前の4月下旬にハバナ市内のある劇場で上映される予定だったのに、直前になって文化省が(他の2本の映画と共に)上映を認めなかった、という事件もありました。もちろん、その時も検閲された3作品の監督たちを始め、抗議の声が上がりました。
『(仮)ハバナのフィト・パエス』トレーラー
話を戻すと、10日の〈無断放映〉から5日後、映画人集会(Asamblea de Cineastas Cubanos=ACC)が以下のような抗議文を出しました。
ドキュメンタリー映画『ハバナのフィト・パエス』放映をめぐる文化機関の決定で、彼らの無責任なやり方が明らかになった。
彼らは以下のような誤りを犯した。
- 4月29日、El Ciervo Encantado劇場において3作品の上映を中止させたこと
- その決定に関する納得のいく公式情報の欠如
- 監督および制作者が承諾せず、拒絶したことを無視して、未完状態のコピーをテレビ番組で放映したこと。これは明らかに制作者の信用失墜を目的としている。
- 我が国のクリエーター達の利益を護るべき「作家芸術家協会(UNEAC)」の副総裁2名が同番組に出演したこと。
- ネット上でこの件を歪曲する声明を発信し、著作権法に関する虚偽の解釈を流したこと。
最も重大な誤りは、同じような事例が組織的に行われており、特に映画において顕著なこと。
文化当局の行いは、モラルに反しており、敬意ある建設的対話が成り立たないこと。
尚、この抗議活動には、海外在住のキューバ映画人たちも参加しています。
23日、抗議文を受けて、ICAIC、文化省、共産党は、映画人集会と話し合いをもちました。
場所は、映画人が誰でも参加できるよう要求した為、当初の提案(ICAIC7階)が変更され、シネ・チャプリンで行われました。
結果的に映画人集会が文化省の説明に納得せず、問題は持ち越されています。
が、映画人たちは、代表者を7~8名選出し、対話を継続していく意向。
また、海外のキューバ映画人もオンラインで対話に参加できるよう考えています。
スペインや米国に住むキューバ映画人の意見(時代は明らかに変わっている!)
2024年1月16日追記
本事件を機に結成された「映画人集会」制作ビデオ