対話集会:映画人集会と文化官僚の対立 | MARYSOL のキューバ映画修行

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【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
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先日の投稿↓の23日の対話集会の様子が、もうビデオ作品になりました。

ドキュメンタリー映画『ハバナのフィト・パエス』が生んだ論争 | MARYSOL のキューバ映画修行 (ameblo.jp)

対話集会の出席者

文化官僚(壇上)
アルピディオ・アロンソ文化大臣、フェルナンド・ロハス文化副大臣、ラモン・サマーダ・スアレスICAIC長官、ロヘリオ・ポランコ・フエンテス共産党理論家、
イネス・マリア・チャップマン副首相

キューバ映画人集会(Acc):約50名

オンライン参加:約30名

 

エピソード5:集会での対立(撮影・編集:ミゲル・コユーラ監督)

概要

まず、集会の始めに、サマーダICAIC長官は出席者に撮影をしないよう依頼。

その後、対話集会が開かれるきっかけになった事件=『(仮)フィト・パエスのハバナ』の無断放映のいきさつという本題に入る。

 

同作品の監督、ファン・ピン・ビラルは「放映の許可については、プロデューサーと配給元に相談せねばならないと文化副大臣とICAIC長官に説明した。彼らのせいでプロデューサーの出資は危機に瀕し、フィトは侮辱された」「使われた映像は盗まれたもので、違法な放映だった」と主張。

そして、その発言の前に「私は、若者たちが(この集会を)撮影することを期待する。なぜならキューバ文化のアーカイブのために非常に良いことを、多様な視点ですることになるからだ」と言った。

一方、サマーダ長官は、撮影を続けるミゲル・コユーラ監督を咎める。

それに対しコユーラは「私はICAICに雇用されているのではない」と反論。

ファン・ピン監督も同調する。
「なぜ録画してはいけないのか? なぜ貴方がたは、自分たちの意見が表沙汰になるのを怖れるのか? 社会には知る権利がある。私は録画されても構わない」

反論は続く―
グスタボ・アルコス(映画批評家・美術史家)
「集会の撮影を禁じることには賛成できない。禁じる理由は何か?貴方たちは撮影しているではないか」

ルイス・アルベルト・ガルシア(俳優)

「『(フィデル・カストロの《知識人への言葉》を引用して)革命の内にあればすべて認められ、外れれば一切認められない』。では、『革命の内か外か』を決めるのは誰か? 革命に反するとは何のことか? 『サンタとアンドレス』を例にとろう。映画人と役人が集まって同作を観て「何の問題も見当たらない」と我々は言った。上映すべきだった。ああ、そう、貴方たちや誰かさんの役に立たなければ上映されないのだ。意見の異なる者を排除するのは止めるべきだ。検閲を止めるべきだ。毎年映画祭の度に同じことが繰り返され、チェックが入る。『ビセンタB』はどうなった? 何の問題もないのに。監督のカルロス・レチューガを罰せねばならないって訳か」

フェルナンド・ペレス
「様々な映画やイベントが理解されず、消えていった。若手映画上映会もそのひとつ。この話は世代を超えて皆が知っている。論拠はいつも(壇上を指して)あちら側から来る。歴史的状況ゆえとか、あれやこれや…。だが、そういう事情を抜きにしても、依然として検閲はある」

 

女性A

「今マドリッドでは、キューバのインディペンデント映画上映会が開催されている。
私はミゲル・コユーラ監督の『ブルー・ハート』は観ていないが、『(邦題)セルヒオの手記~ユートピアからの亡命~』は観た。

 

*ここでサマーダ長官が女性の発言を遮る。

 

コユーラ:「我々はインディペンデントの映画人だ。撮影が許されないなら、逮捕される覚悟だ。なぜなら我々の仕事は撮影することだからだ」

サマーダ:「ここでは個人的な挑発や侮辱は許されない」
コユーラ:「貴方は我々が仕事をする可能性を検閲している!」
サマーダ:「撮影しないよう言っているのだ」

コユーラ:「私は貴方やICAICのために仕事をしているのではない。貴方は私の雇い主ではない」

サマーダ:「私は肖像権のことを言っているのだ」

リン・クルス:「貴方のことは撮っていないし、撮影禁止に賛成じゃない人はたくさんいる。この集会は私たちの映画の歴史。(歴史から)取り除かれてしまうわ。省略こそが明白な政治姿勢ね」

 

女性A:「私はまさにミゲル・コユーラ監督の話をしていました。『セルヒオの手記』は素晴らしい映画でした(注:キューバでは映画祭で1~2回上映されたのみ)

 

女性B:「私は楽観主義。すべての問題は解決するでしょう。人々は苛立っている。突破口が開かれるでしょう」

 

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後日談1:文化省がネット上で発信した声明

「芸術家たちの問題提議は、関係機関の指導部にとって最大の関心事に値する」
「芸術家たちは文化官僚たちの主張に耳を傾け、自由に意見を表明した。集会は、率直かつ建設的で敬意をもって行われた。革命の文化政策の特長どおりに」。

一方、キューバ映画人集会(ACC)側の評価は「建設的雰囲気」とは異なっていた。

ファン・ピン・ビラル監督はSNSで「文化省が出した見解は、実際に集会で起きた事とは似ても似つかない。録音を公開せよ」と発信した。

 

後日談2

本投稿で紹介したショートフィルムに対する罰でしょうか?

ミゲル・コユーラが情熱を注いで修復し、開催してきた《日本アニメ映画の上映会》が中止になりました。😢

参照記事:El ICAIC prohíbe la exhibición de filmes de animación restaurados por Miguel Coyula | DIARIO DE CUBA

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報告:日本のアニメ映画、デジタルリマスター版上映会 | MARYSOL のキューバ映画修行 (ameblo.jp)