Larga Distancia(仮題:遠い日の約束) | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

Larga Distancia(仮題:遠い日の約束)MARYSOL のキューバ映画修行-Larga distancia

キューバ/HD/フィクション/90分/2010年
監督:エステバン・インサウスティ
脚本:エステバン・インサウスティ
撮影:アレハンドロ・ペレス
編集:アンヘリカ・サルバドール
音楽:Xアルフォンソ
美術:アライン・オルティス
出演:スレーマ・クラレス、アレクシス・ディアス・デ・ビジェーガス、トマス・アレハンドロ・カオ、リン・クルス、コラリア・ベロス、ベロニカ・リン

 

ストーリー
アナ、バルバラ、カルロス、リカルドの4人は小学生のとき“いつまでも友達でいよう”と約束した。しかし非常時の90年代を経て、35歳の誕生日を前にしたとき、アナは共に祝って欲しい友人が誰もそばにいないことに気づく。そこで、日記を頼りに、彼らと過ごす誕生日パーディーを思い描く。そこには、アナが知り得ない彼らの過去とその後の人生も交差し…

 

 

 

Marysolから
昨年12月のハバナ映画祭で見たキューバ映画のなかで“イチバン好き”と思った作品。
“好き”の背景には、“スペイン語を含め自分にとって理解可能”という事情もあるのですが、①映像がスタイリッシュでティストに合っていること、②(虚構を前提としているのに)登場人物の状況がそれぞれ“リアル”で、いかにも現実のキューバにありそう!と思わせる説得力あるエピソードの数々。この2つのおかげで、複雑な構成でありながら、集中力が途切れることなく、最後まで映画とともに疾走しました!

 

 

ここでリアルの一例として、リカルドの人物像を紹介しましょう。
MARYSOL のキューバ映画修行-Ricardo かつて結婚していた女性との間に娘が一人いる、エネルギッシュで魅力的なムラート(演じるのはトマス・Aカオ。写真右。瞳の吸引力がスゴイ!)。今は老父と暮らしている。母は彼が幼い頃、国際的使命(ゲリラ兵士となること?)を果たすべく国を出て亡くなった。以来、父は酒に溺れ、リカルドと向き合わない
離婚後も妻の家を訪ね、一人娘と過ごす一時を何よりも楽しみにしているリカルドに、最愛の娘との別れの日が迫っていた。元妻(アニア・ブ・マウレ)が外国人と再婚することになり、娘を連れて国を出るからだ。せめてもの思い出にと、リカルドは娘が欲しがっている大きな熊のぬいぐるみを贈ろうとするが―
 
このリカルドをめぐるエピソードだけでも、複数の歴史的事実や現実がシンボリックに詰め込まれています。なので、やはりキューバの現代史を知らない(かつ問題意識がない)と、シチュエーションや台詞が内包する衝撃が伝わらないかも。

 


MARYSOL のキューバ映画修行-Esteban Insausti ただ、映画祭で「この映画がイチバン好き!」と言ったとき、あるキューバ人から「もうテーマが古い」と言われてしまいました。
確かに、インサウスティ監督が構想を得たのは97年末のことだそうで、10年以上前。
当時、監督はまだISA(高等芸術学院)視聴覚映像学科の学生でした。

 

テーマは「たいせつな人の不在がもたらす孤独」。

 

背景には、90年代にキューバを襲った“平和時の非常事態”と呼ばれる、極度に困窮した時代があります。多くの人が経済的理由から移民となり、家族や友人が散り散りになりました(この現象は今も続いています)。その結果、アナのように国を出た人も、残りの3人のようにキューバに残った人も、どちらも「大切な人(家族や友人)の不在」がもたらす「孤独感」に蝕まれていることを、この映画はシャープな映像で浮き彫りにします。

 

「祖国とは友のことでもある」(インサウスティ監督=主人公たちと同世代)。

 

★追記(2020年6月7日)

本編をネットで鑑賞し直せたので、改めて紹介し直しました。

https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-12602501003.html


MARYSOL のキューバ映画修行-Ana アナ

 

 

 

 

 

 

 

 

MARYSOL のキューバ映画修行-Barbara バルバラ

 

 

 

 

 

 

 

 

MARYSOL のキューバ映画修行-Carlos                                    カルロス